勘違いラブレター

ぽぽ

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 朝。癖毛を整え制服に着替える。
 昨日は災難だった。まさか先輩が俺を好きだとは思わなかったし、家へ帰っても心ここに在らずといった感じで過ごしていた。その様子を見て妹は何故か何も悪くないのに謝ってきた。余程俺が妹の恋に傷付いたと思ったのだろう。まあそれも一理あるが妹が心配する必要は全く無い。これは全て俺の問題である。

 そして昨夜、俺は決意した。
 勇気を出して妹と真野先輩を引き合わせよう。嫌だけど。凄く嫌だけど、これが一番妹の幸せなんだ。ベッドは涙に濡れたが俺の心は少しだけ晴れていた。
 
 思い切り泣いたお陰か何だかスッキリした。いつもより凛々しい顔で家を出たつもりだったが、直ぐにその顔は崩れた。

「おはよう、創」

 な、何故ここに……?
 真野先輩は早朝にも関わらずテレビのニュースキャスター並の爽やかな笑顔をしている。いつもよりも爽やか度が五倍増しに見えるのは寝惚けてるからだろう。

「せ、先輩。俺の家なんで知って」
「そんなおばけを見たような顔しなくても。前に寺田がここ通った時に話してたんだよ」

 友よ、勝手に俺の家を人にバラすな。俺の家には可愛い可愛い姫がいるんだ。下手な輩を近付けない為にも無闇に知られてはいけない……ってそういえば下手な輩所か目の前の男は姫の王子でしたね。ハハ、ハ、はぁ……。妹と先輩が結ばれる想像をして血を吐きそうになったが必死に堪えた。うぅ、耐えなければ、耐えなければ……。
 一人で葛藤していると、突如頭に何かが触れた。
  
「寝癖、付いてるぞ」
「あ、本当ですか?おおかしいなぁ。朝ちゃんと直したつもりだったんですけどね」
「直すから少し待ってくれ」

 緊張により声が裏返る。俺の髪を触り始めた真野先輩の距離が近くて、恋人だと意識すると変に緊張してしまう。こんな事で動揺して俺は中学生か。相手は真野先輩なのに。恥ずかしさで寝癖なんかどうでも良いから逃げたいと思っていた時、額からリップ音のような滅多に聞かない音が聞こえた。その何かが触れた部分を両手で覆い見上げると、確信犯である笑みを浮かべた真野先輩の姿があった。

「ふはっ、冗談だよ。キスしたい口実」

 人差し指を俺の唇に立てる。彼の瞳にきょとんとした俺の顔が映った。
……え、何この人。ナチュラルに少女漫画みたいなことしてきたんですけど。いやこれ少女漫画でもしないよね!?こんな恥ずかしいこと現実でする?イケメンだから許されることだぞこれ。
 平然を装って俺はいつものように文句を言った。

「本当に寝癖が付いていたのかと思ったじゃないですか」
「悪い悪い。いやぁ、分かりやすく緊張してる創が可愛くてな」

 こんな野郎のどこが可愛いのやら。頬が熱く感じるのは気の所為だ。絶対に。
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