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しおりを挟む「お前には関係ない」
「俺とへズの仲だろ?なんだ?誰に言い寄られた?」
「僕に言い寄る女の子なんていないって分かってんだろ」
ガディウスを鋭く睨みつける。
僕が今まで恋をした回数は三回。同じ孤児院で育ったユエニ、街のパン屋を営むクレアちゃん、薬師試験で出会ったカトリン。全員失恋した。それもそのはず、僕がアプローチをする前に全員ガディウスと付き合ったのだ。
僕に魅力が無いのは分かってる。地味で平凡で取り柄のない男。一方、ガディウスは筋骨隆々、男らしい低い声に比べて甘いフェイス。加えて男爵家の後継者で「猛火の獅子」なんて呼ばれるくらい騎士としても名を馳せている。
とはいえ、だ。僕の好きな女の子全員が惚れるなんておかしくないか?絶対ガディウスも色目を使っているに違いない。
目の前のガディウスは長い赤髪をゴムで括りながら、僕から目を逸らす。
「まあまあ僻むなって」
「誰のせいだと思って」
「じゃあ結局結婚なんてなんで言い出したんだ?」
コイツ、しつこいな。僕は渋々口を開いた。
「アルドバルト殿下から聞いた?同性婚の法案」
「ああ、言ってたな。施行日ももう少しだろ」
「うん。それで前例が無いと中々広まらないだろ?殿下が悩んでることを聞いて、思い付いたんだ。僕が男と結婚したらいいんじゃないかって」
沈黙が落ちる。自分で言って恥ずかしくなって顔が熱くなってきた。よくよく考えれば僕みたいな男と結婚したいなんていう人いないだろう。女の子ですら一度も交際した経験がないのに。
一人になりたくなり、ガディウスを部屋から押し出そうとした。だが、彼は逆に僕の手を取り、女の子が今にも惚れちゃいそうなくらい甘い笑みを浮かべた。
「じゃあ俺はどう?」
「……え?」
「俺がへズと結婚したらいいじゃん」
ガディウスと、ケッコン……?
全く想像がつかない。しかし条件としてはかなり良い。平民の僕でも気さくに話せるけど、貴族であり、騎士として実力もある。平民から貴族まで知っている存在だ。
「た、確かに」
「よし、そんじゃあ婚姻届書くか!親父に話しとくわ。あとへズも職場に早めに言っとけよ。結婚式はどこにする?隣国のさ、海の近くの教会でやりてえんだ。めっちゃ海が綺麗でさ夜は花火がでかいの上がるんだ。もちろんへズの候補があったら聞くぜ。あと同棲だな。俺ん家にへズがそんまま来てもいーけど折角だし二人の」
「待て待て待て」
急な人生設計に思わずストップをかけると、ガディウスはこちらをきょとんとした目で見つめる。僕は彼に真剣な表情で詰め寄った。
「あのな、よく考えろ。お前は僕でいいのか」
「んぁ?」
「お前は男爵家の後継者だろ。もうすぐで騎士団長の座も夢じゃないって前話してたよな?」
「まあな」
「それに、僕はお前の顔はまあまあいいと思ってるしモテるって知ってる」
「きゃー、早速惚気?ガディウスちゃん照れちゃうわ」
黙れ。思わず殴りそうになったが堪えた。今はそれよりも話し合いが先である。
「僕は、相手が僕でいいのかって聞きたいんだ」
「うん」
「お前な、考えてないんだろうけど周りがなんて言うか分かってるのか。平民の僕が相手だったら不釣り合いだって言われるに違いない」
容易く想像できる。ガディウスと結婚を発表し、周囲の女性陣に石を投げられる僕の情けない姿。涙を流しながら許しを乞い、瞬く間に婚姻届を破り捨てる未来を。
「親御さんだって、せっかく引き取った子供が立派に育ったのに、平民のよく分からない男連れてこられたら嫌だろ?しかもお前が後継者なのに僕が相手だったら子供が出来ないじゃないか」
だからもう一度深く考えろと説得すると、ガディウスは口を真一文字に結ぶ。
そして顎に手を置き、少し間を置いて呟いた。
「……まあへズの言い分も一理ある。だけどよ、んなこと言ってたらそれこそ同性婚する奴いなくね?」
「ぐっ、まあそうだけど」
「親父のことは心配すんな。元々俺だって孤児院から引き取ってもらっただけで実の息子じゃねえし、子供なんて頼まねえから安心しろ。他にも、へズが周りから言われないように俺も守るし。な?」
僕の肩に手を置いて優しい声色で話す。そんなことあるかと疑いたくなるが、何故かガディウスの声を聞けば安心してしまう。
大きく息を吐く。やむを得ず僕が頷くと、ガディウスは破顔させた。その顔を見て僕も思わず笑みが移る。
「全く、なんで僕のためにそんなにするんだ?何か狙ってるの?」
「ん?んー、まあ俺も周りから結婚結婚うるさかったからな」
「ガディウスなら別に他にも可愛い女の子いるだろうに」
「可愛い女の子が多すぎて一人に決められないんだよ。俺ってば罪なヤツ」
ガディウスは片目を閉じて星が舞うような笑みを浮かべた。僕はそれを白い目で見た。
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もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
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