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しおりを挟むその後ガディウスの思惑通り、職場や孤児院、その他にも街の人々から「大変だったね」「結ばれてよかった」「ぼくたちもへズエル兄ちゃんおうえんする!」などよく分からない激励を送られて苦笑いで返している。
事情があるにしてもガディウスの話は大袈裟すぎる。孤児院の子供達なんて涙を流している子もいた。その姿を見て心が痛くて苦しかった。
「うう、僕は正しい事をしてるのか悪い事をしてるのかよく分からない……」
「へズは真面目だなぁ。でもアルドバルト殿下も喜んでたぜ?俺らの結婚」
「ほんと!?寄付金増やしてくれるかな」
「そうじゃね?俺からも出すぜ」
「ガディウスからは充分貰ってる。貰い過ぎなくらいだ」
僕は結婚してからガディウスが用意した家で予算管理を行う事になった。これからの為に今までの帳簿も確認したが目を丸くした。
ちゃらんぽらんなガディウスの事だから散財してるだろうと考えていた。ところが、全くそんなことは無かった。大きな出費は孤児院へ寄付くらいだった。
男爵家へ引き取られ、騎士となってからガディウスはかなりの額を寄付してくれるようになった。それは騎士が単に稼げる仕事という訳ではなく、それだけのお金をガディウスが孤児院へ割いてくれていたということだ。その事実を知り僕は心を打たれた。
「別に遠慮すんなよ。へズだって飯作ってくれるしそのお詫び的な?」
「僕が作るのは大したことない。食材だって殆どガディウスの方で払って貰ってるし、僕なんて庶民っぽい素朴なものしか作れないのに良いのか?」
「へズの飯は全部美味い。特に昔作ってくれたルクンパン、美味かったなぁ。今度作ってくれよ」
「マジで言ってんの?」
平然とした表情のガディウスに比べ、面食らった僕は思わずフォークを落としそうになった。折角マナーを習い始めたのに早速行儀の悪い事をしてしまうところだった。
ガディウスの言う「ルクンパン」とは相当昔、全く孤児院にお金が無く、硬く黒いパンしか貰えなかった時期に作ったものだ。
ゴミ捨て場にたまにあるルクンという魔獣の乳を沢山の水に混ぜてパンを浸す。それを焼いて食べるとほんのり甘みがあり内側が柔らかくて食べやすいのだ。
硬いものが食べられない子供達によく作っていて好評だったが、今の生活からしたら餌のような食べ物だ。魔獣の乳を食べる風習はこの国には無く、禁忌に近い。普通に暮らしている町民や貴族に知られたら「魔獣の乳を飲むなんて貴方は魔獣の子供か」と馬鹿にされるだろう。それに柔らかいと言ってもほぼ水に浸したパンは多少ふやけていても微妙に固く味もほとんどしない。
そんな物、使用人達の前に見せるのも恥ずかしい。きっとここで働いている執事やメイドですら引くと思う。
だが、ガディウスは毅然として作って欲しいと頼む。別に難しくないし材料も無料だ。二人の時なら良いと伝えると、ガディウスは目を細めた。
「楽しみだ」
「あんなの誰だって作れる」
「へズじゃなきゃ意味ねえよ」
よく分からない男だ。不思議に思いながらも職場へ向かった。
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