魔女と魔法使いの少女たち

ノムラユーリ

文字の大きさ
63 / 70
終章 魔法使いのその後語り

第3回

しおりを挟む
   3

 寒さ深まりゆく十二月――年末に向けて十一月よりも慌ただしさは増し、僕らの集まりはより悪くなっていった。

 もはや部室に行くこともなくなり、放課後は学校で真帆と分かれて帰宅。そのまま自分の部屋にこもって(ダラダラと身の入らない)勉強に励む毎日が続いていた。

 そんななか、クリスマスも間近になってきた十二月二十二日の木曜日。

 ホウキに乗って帰る真帆を屋上で見送り、さて僕も家に帰ろうかと階段を降りていると、鐘撞さんとその友人である井(わかし)美幸さんがふたり並んで廊下を歩いていた。

「あ、シモハライ先輩」
「こんにちは、先輩」

 鐘撞さんと井さんが、立ち止まって僕に小さく会釈する。

 そう言えば、このふたりが並んで歩いているのをしばらく見ていなかったような気がする。

「ふたりも今から帰るの?」

 はい、と鐘撞さんは頷いて、
「すみません、最近部活に行けてなくて」

「いいよいいよ、僕も今月に入ってから一度も行ってないし。真帆もそうだけど、なんだかみんな忙しいみたい。かくいう僕だって来月には入試試験が控えてるから、しかたないっちゃしかたないんだけどね」

 答えれば、井さんもこくりと頷き、
「まぁ、そもそも他の部活だと、三年生はだいたい引退しちゃってますし、そんなものかもしれませんね」

「確かに、そうだね」
 それから僕は改めて鐘撞さんに顔を向けて、
「僕らが居なくなったら、鐘撞さんはどうするの? 肥田木さんと、あの魔法研究部を続けていくつもり? そもそも真帆が趣味で立ち上げたような部活だし、ふたりだけでやっていくのも難しいなら、このまま解散しても良いんじゃないかって僕は内心思ってるんだけど……」

「それなんですけど」と鐘撞さんは井さんに顔を向け、「ユキも魔法研究部に入るって言ってくれてます。だから、先輩たちが居なくなっても、三人で細々やっていこうかなって、肥田木さんとも話をしていたんですよ」

「え、そうなの? 井さんが? 魔法研究部に?」

 井さんはこくりと頷いて、
「……色々ありましたけど、そうしてみようかなって。わたしに魔法の才能なんて全くないのはわかってるんですけど、それでもアオイと一緒にやっていけたらなって」

「へぇ、いいんじゃないかな。もしかしたらまた全魔協の計らいで、新しい魔法使いの新入生が入ってくるかもしれないしね。そうしたら、またその子に入部してもらって、新しいメンツで賑やかにやっていけばいいんじゃないかな」

「はい、そう思ってます。せっかく真帆先輩が創った魔法で遊ぶための部活なんですから、わたしも真帆先輩までとは言わなくても、もう少し魔法に関わっていけたらなって思います」

「……もしかして、鐘撞さんも全魔協に入るつもり?」

 もしそうだとしたら、鐘撞さんのおばあさんが激怒しそうだけれども。

 すると鐘撞さんは首を横に振って、
「いえいえ、そんなことしませんよ。そんなことしたら、おばあちゃんになんて言われちゃうか。お小言だけじゃすまないです。それに、わたしはうちが魔法が使える家系ってだけで良いと思ってます。これから先、この考えが変わるかもしれないですけど、少なくとも、今のところは」

 乙守先生には、再三勧誘されてますけどね、と鐘撞さんは最後に苦笑したのだった。

 それからふたりと分かれ、脱靴場で靴を履き替えていると、
「おう、シモハライ、ちょっといいか?」
 廊下をふらふらやってきた井口先生に引き留められた。

「あぁ、井口先生。なんです? どうかしましたか?」

「大学入試の勉強、頑張ってるか?」

「まぁ、一応、なんせ年明けたらすぐなんで」

「ま、そうだよな。いいことだ」

 うんうん頷く井口先生。

 いったい何が言いたいのだろうか。

「……その確認だけですか?」

「あぁ、いや、違う違う。会長から言伝だ」

「乙守先生から? 直接言えばいいのに、いつも保健室に居るんだから」

 脱靴場から校舎内を覗き込めば、すぐ目の前に職員室があって、その隣が校長室、放送室、そして保健室と並んでいる。その距離、だいたい十メートルちょいくらい。歩いても数十秒とかからない距離である。それに、呼び出してくれたら普通に行くのに。

「いや、今日からしばらく居ないんだ。年末年始で、この一年間に溜まりに溜まった仕事を片付けるために、会長は全魔協の本部に戻ってる。溜まりに溜まったっていうか、あの人が自分で片付けてこなかった仕事だけどな。自業自得だ。この俺を一年間振り回してくれたツケだな!」
 ふっふっふ、と不敵な笑みを浮かべる井口先生。なんかだいぶ不満がたまっていたらしい。
「ま、だからこそ、この俺がメッセンジャーを仰せつかったわけだ」

「で、そのメッセージとは?」

 ふむ、と井口先生はひとつ頷き、
「――クリスマス、頑張って!」
 乙守先生の声真似をして、ぐっと親指を立ててみせる。

 ……いったい何がしたいんだ。

「どういう意味?」

「どういうも何も、お前と楸、クリスマスくらいデートするだろ」

「……まぁ、クリスマスだけは絶対にデートしますからね! って真帆も意気込んでますけど」

「そういうことだよ」

「はい? 何をどう頑張れって?」

「知らん。俺はそう伝えるようにしか聞いてない。しかも、絶対に言いなさいって」

「なんすか、それ」

 僕は思わず眉間に皴を寄せてしまう。

 そんな僕に、井口先生はふんと口元に笑みを浮かべて、
「んじゃ、俺はちゃんと伝えたからな。頑張れよ、シモハライ!」
 はっはっは、と声高らかに笑いながら背中越しに手を振りつつ、職員室へと戻っていった。

 僕はそんな井口先生を見送りながら、
「……なんだよ、いったい」
 ただ口を尖らせるばかりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...