12 / 27
魔法使いの少年
第7回
しおりを挟む
***
「神楽君、可哀相」
しかし、その顔は明らかに、全然可哀相だと思っていないことを告げていた。
SHRが終わってすぐの休み時間。私の席に来たヒトミに、私はさっきのことを話してみた。
それに対してヒトミが返してきた感想が、それだった。
「ヒトミ、顔が笑ってる」
「だって、あかねちゃんの言うとおりじゃない。神楽君ってちっとも男の子らしくないよね」
まぁ、確かにそうだよね。顔は幼いし、手足は細いし、肌もきめ細やかだし。おまけに本ばっかり読んでて運動も全く出来ない。
「でも、なんか頭は良さそうだよね」
それは違うな、と私は思った。入学日の翌日に行われた実力テストの結果が戻ってきたとき、私は彼の横を通りながらその点数を見てみたけれど、それは私の半分にも満たない数値を示していた。勉強がまるで出来ない私なんかよりも更に点が低かったのだから、彼は頭も悪いらしい。
「ダメじゃない。彼のこと好きなんでしょ? 悪く言っちゃ可哀相よ」
「そんなこと言ったって、事実だし」
そう正直に答えて、私は神楽君のほうに顔を向ける。
神楽君はこちらの方に顔を向けており、私の視線に気がつくと慌てたように顔を前に戻し、気まずく感じたのだろうか、顔を机に伏せてしまった。
「ねぇ、告白とかしないの?」
ヒトミが突然、そんな事を訊いてきた。
告白ねぇ、
「したよ」
「え、嘘、マジ?」
ヒトミは目を真ん丸く見開いて驚く。
なに? その表情は。告白したらダメなわけ?
「それで、どうなったの? まさか、フラれちゃった?」
失礼な事を言う。こんなに美人で可愛い私がフラれる訳ないでしょ、と言ってやりたかったが自意識過剰はよろしくないと思い、
「あっちも私のことが好きだったんだってさ」
「で、まさか、付き合うことに」
「したよ。キスもした。二回」
「ええぇぇぇぇっ!?」
ヒトミの叫び声が教室内にこだまする。正直言って煩い。
ヒトミは何に対して驚いたんだろう。私が神楽君と付き合うことになったこと? それともキスをした事?
「両方よ!」
とヒトミは首を横に振りながら、
「ありえない。絶対にありえない!」
「そんなこと言ったって、しちゃったんだもん」
しかも、二回とも私から彼にキスをしたのだ。一回目は自白の為に強引に。二回目は愛情表現として。確かに普段の私からは想像もつかないほど積極的過ぎる事だったかもしれないけれど、私だって恋には積極的になれるのだ。
「もう、なんであんな奴なんかと!?」
「失礼ね。あんな奴だなんて」
「だってどう見たってオタクよ!? オタクに恋するだけじゃなくて、自分からそのオタクにキスをするあかねちゃんが私には信じられないわ」
何が言いたいのだ、ヒトミは。日本のオタク文化を馬鹿にするだなんて、なんて時代遅れ! そんなの一昔も二昔も前の盲信よ! オタクは日本の誇るべきサブカルチャーなのよ!
八割方『人』としてどうかって気もするけど(それも言い過ぎか)。
「はぁ、そっか。あかねちゃんのファーストキスは神楽君のものになっちゃったか」
「いいじゃない、別に。このまま処女も捨てちゃおうか?」
思い切って言ってやったら、ヒトミは慌てて手を左右に振りながら、
「な、何言ってるのよ、あかねちゃん! そんな、安売りなんかしちゃぁ!」
どういう意味よ、それ。
「とにかく、さっさと神楽君とは別れちゃうべきね」
そこまで言いますか。
「言うわよ」
やれやれ、と私は肩を落とした。
「神楽君、可哀相」
しかし、その顔は明らかに、全然可哀相だと思っていないことを告げていた。
SHRが終わってすぐの休み時間。私の席に来たヒトミに、私はさっきのことを話してみた。
それに対してヒトミが返してきた感想が、それだった。
「ヒトミ、顔が笑ってる」
「だって、あかねちゃんの言うとおりじゃない。神楽君ってちっとも男の子らしくないよね」
まぁ、確かにそうだよね。顔は幼いし、手足は細いし、肌もきめ細やかだし。おまけに本ばっかり読んでて運動も全く出来ない。
「でも、なんか頭は良さそうだよね」
それは違うな、と私は思った。入学日の翌日に行われた実力テストの結果が戻ってきたとき、私は彼の横を通りながらその点数を見てみたけれど、それは私の半分にも満たない数値を示していた。勉強がまるで出来ない私なんかよりも更に点が低かったのだから、彼は頭も悪いらしい。
「ダメじゃない。彼のこと好きなんでしょ? 悪く言っちゃ可哀相よ」
「そんなこと言ったって、事実だし」
そう正直に答えて、私は神楽君のほうに顔を向ける。
神楽君はこちらの方に顔を向けており、私の視線に気がつくと慌てたように顔を前に戻し、気まずく感じたのだろうか、顔を机に伏せてしまった。
「ねぇ、告白とかしないの?」
ヒトミが突然、そんな事を訊いてきた。
告白ねぇ、
「したよ」
「え、嘘、マジ?」
ヒトミは目を真ん丸く見開いて驚く。
なに? その表情は。告白したらダメなわけ?
「それで、どうなったの? まさか、フラれちゃった?」
失礼な事を言う。こんなに美人で可愛い私がフラれる訳ないでしょ、と言ってやりたかったが自意識過剰はよろしくないと思い、
「あっちも私のことが好きだったんだってさ」
「で、まさか、付き合うことに」
「したよ。キスもした。二回」
「ええぇぇぇぇっ!?」
ヒトミの叫び声が教室内にこだまする。正直言って煩い。
ヒトミは何に対して驚いたんだろう。私が神楽君と付き合うことになったこと? それともキスをした事?
「両方よ!」
とヒトミは首を横に振りながら、
「ありえない。絶対にありえない!」
「そんなこと言ったって、しちゃったんだもん」
しかも、二回とも私から彼にキスをしたのだ。一回目は自白の為に強引に。二回目は愛情表現として。確かに普段の私からは想像もつかないほど積極的過ぎる事だったかもしれないけれど、私だって恋には積極的になれるのだ。
「もう、なんであんな奴なんかと!?」
「失礼ね。あんな奴だなんて」
「だってどう見たってオタクよ!? オタクに恋するだけじゃなくて、自分からそのオタクにキスをするあかねちゃんが私には信じられないわ」
何が言いたいのだ、ヒトミは。日本のオタク文化を馬鹿にするだなんて、なんて時代遅れ! そんなの一昔も二昔も前の盲信よ! オタクは日本の誇るべきサブカルチャーなのよ!
八割方『人』としてどうかって気もするけど(それも言い過ぎか)。
「はぁ、そっか。あかねちゃんのファーストキスは神楽君のものになっちゃったか」
「いいじゃない、別に。このまま処女も捨てちゃおうか?」
思い切って言ってやったら、ヒトミは慌てて手を左右に振りながら、
「な、何言ってるのよ、あかねちゃん! そんな、安売りなんかしちゃぁ!」
どういう意味よ、それ。
「とにかく、さっさと神楽君とは別れちゃうべきね」
そこまで言いますか。
「言うわよ」
やれやれ、と私は肩を落とした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる