白い魔女と小さな魔女

ノムラユーリ

文字の大きさ
9 / 58
ひとりめ

第8回

しおりを挟む
   8

 やがて見えてきた僕の家の前には、お父さんやお母さん、凛花ちゃんや真奈ちゃん、あとは知らない大人の人たちが何人かいて、
「あ! 勇気くん!」
 凛花ちゃんが空を見上げて指さして、
「ゆ、勇気!」
 お父さんが、大きな声で僕を呼んだ。

 アリスさんはホウキをふんわりと地面に下ろすと、
「さぁ、どうぞ」
 と言って、僕を支えながら降ろしてくれた。

 それからアリスさんもホウキを降りて、僕の背中を軽く押しながら、
「頑張ってね」
 と優しく微笑む。

 僕は「うん」と頷くと、お父さんの所まで数歩歩いて、
「お、お父さん」

「大丈夫か? 勇気。怪我とか、してないか?」
 お父さんは僕の身体をぎゅっと抱きしめると、泣きそうな顔でそう言った。

 僕はそんなお父さんに、勇気を振り絞って、
「ご、ごめんなさい。お父さんの大事なプラモデル、壊しちゃって」

「いいんだ。いいんだよ、勇気」
 お父さんは僕の頭を撫でながら笑顔で言った。
「お父さんもごめんな。勇気の言うこと、ちゃんと信じてあげなくて――」

「う、ううん。いいんだよ。僕も、凛花ちゃんたちに教えてもらうまで、魔女なんて信じられなかったし……」
 それから僕は、後ろに立つアリスさんに顔を向けて、
「アリスさんが、お父さんのプラモデルを直してくれたんだ」

 お父さんはうんうんと何度も頷くと、アリスさんに頭を下げる。
「勇気が大変お世話になりました。それに、プラモデルも直してくださって、本当にありがとうございます」

 するとアリスさんは、両手を軽く振りながら、
「あ、いえ。お気になさらないでください」
 そして僕の方に笑顔を向けると、
「良かったね、勇気くん」

「うん!」
 僕は頷き、そして周りを見回す。

 お母さんも僕に駆け寄ってきて、僕の身体を抱きしめてくれた。
 凛花ちゃんも真奈ちゃんも、良かったね、と笑っている。
 他の大人の人たちも、安心したように微笑んでいた。

「皆さんも、ご迷惑をおかけしました」
 お父さんが頭を下げると、「無事でよかった」と言って、次々に帰っていく大人たち。

 やがてアリスさんは頷くと、
「それじゃぁ、真奈ちゃん、凛花ちゃん。私たちも帰りましょうか」
「はい!」
「じゃぁね、勇気くん!」

 ふたりはアリスさんのホウキに飛び乗ると、再びふんわりとホウキは浮いて、三人して手を振りながら、空高く上がっていく。
 それはやっぱり、なんだか不思議な光景だった。
 ホウキに乗った三人の姿は、いつの間にか一羽の白い鳥に変わっていて、どこか遠くへと飛んでいった。

 それを見送ってから、お父さんは僕と手を繋ぐと、
「それじゃぁ、俺たちも帰ろうか。勇気」

「うん」
 と僕は頷く。

 それからお父さんはにっこりと微笑むと、
「明日、一緒にプラモデルを買いに行こうか。コウキと三人で、一緒に組み立てよう」

「――うん!」

 僕は大きく頷いて、お父さんの手を強く握った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

処理中です...