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ふたりめ
第3回
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3
「へぇ。良かったじゃないですか」
真帆さんはこちらに背を向けたまま、所狭しと並べられた商品の整理をしながらそう言った。
あのハンカチを類人くんに渡した後、わたしはそのことを誰よりもまず真帆さんに報告したくて、ダッシュで魔法百貨堂にやってきた。
息も切れ切れで、興奮冷めやらぬこの気持ちを抑えきれないまま、わたしは捲し立てるように次から次へと言葉を発した。
自分でも何を言っているのか解らないくらいの興奮がようやく収まりかけたころ、仕事のひと段落した真帆さんがこちらに体を向け、あの優し気な微笑みを浮かべながら、
「ところで、昨夜はよく眠れましたか?」
と小首を傾げながら訊いてきた。
今日はデニムのパンツに白い袖なしのワイシャツといった出で立ちで、白い腕のきめ細やかな肌がとても綺麗だった。
わたしは、わたしもあんな肌を目指さないとな、と思いながら、
「はい! おまけに類人くんとデートしてる夢まで見ちゃいました!」
と答えた。
「そうですか、それは何より」
真帆さんは頷き、
「じゃあ、次はどうしましょうか」
わたしはその言葉に、思わずぽかんと口を開ける。
「……次?」
「えぇ、次です。確かにハンカチの魔法でその男の子……大地くん、でしたっけ?」
首を傾げる真帆さん。
わたしも同じように首を傾げながら、
「? 類人くんです」
「ああ、ごめんなさい、間違えました」
真帆さんは口元に手をやりながらペコリと頭を下げて、それからニコリと可愛らしく微笑んだ。
「あのハンカチで、類人くんの気持ちは萌絵さんにも向きました。けれど、まだそれだけです。次はデートに誘っちゃいましょう!」
「でで、で、デートっ?」
わたしは驚きのあまり一歩後退り、まじまじと真帆さんの顔を見つめる。
そんな、デートだなんて、まだ、早すぎて。
「そうです」
と真帆さんは頷き、
「魔法が切れないうちにデートに誘って、一気に告白まで持っていきましょう!」
「え、だって、そんな、わたし……!」
しどろもどろになりながら、わたしはカウンター越しに真帆さんの腕に縋り付く。
ちょっとひんやりとした、しなやかな肌の感触。
「じゃあ、もうここで終わりにします?」
真帆さんの言葉にわたしは瞬きをして、すぐに大きく首を横に振った。
そんなわけにはいかない。この気持ちを、ちゃんと伝えないと!
「でも、どうやって誘ったら良いか…… あれだけいつも周りに人が居るんです。わたしだけデートに誘って、もしあとでみんなから何か言われたら……」
「つまり、人払いが出来ればいいんですね?」
「え?」
「たしか、ちょうど良いのがこの辺りに……」
そう言って、真帆さんは右端の棚に手を伸ばした。
程なくして、チェーンのついた小さな金色の懐中時計をカウンターの上に置きながら、
「これ、売り物ではないんですけど、特別にお貸しします」
「もしかして、時が止まる……とか?」
いかにも魔法の道具っぽい! なんて思っていると、
「いえいえ、違いますよ。残念ながらね、ぷぷっ!」
真帆さんは噴き出すようにちょっと笑った。
「人払いしてくれるだけです。チェーンがついてるこの上の部分がボタンになっていて、それを押すと三十秒、周囲から人が居なくなります。その隙にデートに誘ってください」
わたしはその手のひらにすっぽり収まるほど小さな時計を手に取ると、
「あ、ありがとうございます! 頑張ります!」
お礼を言って、大きく頭を下げたのだった。
「へぇ。良かったじゃないですか」
真帆さんはこちらに背を向けたまま、所狭しと並べられた商品の整理をしながらそう言った。
あのハンカチを類人くんに渡した後、わたしはそのことを誰よりもまず真帆さんに報告したくて、ダッシュで魔法百貨堂にやってきた。
息も切れ切れで、興奮冷めやらぬこの気持ちを抑えきれないまま、わたしは捲し立てるように次から次へと言葉を発した。
自分でも何を言っているのか解らないくらいの興奮がようやく収まりかけたころ、仕事のひと段落した真帆さんがこちらに体を向け、あの優し気な微笑みを浮かべながら、
「ところで、昨夜はよく眠れましたか?」
と小首を傾げながら訊いてきた。
今日はデニムのパンツに白い袖なしのワイシャツといった出で立ちで、白い腕のきめ細やかな肌がとても綺麗だった。
わたしは、わたしもあんな肌を目指さないとな、と思いながら、
「はい! おまけに類人くんとデートしてる夢まで見ちゃいました!」
と答えた。
「そうですか、それは何より」
真帆さんは頷き、
「じゃあ、次はどうしましょうか」
わたしはその言葉に、思わずぽかんと口を開ける。
「……次?」
「えぇ、次です。確かにハンカチの魔法でその男の子……大地くん、でしたっけ?」
首を傾げる真帆さん。
わたしも同じように首を傾げながら、
「? 類人くんです」
「ああ、ごめんなさい、間違えました」
真帆さんは口元に手をやりながらペコリと頭を下げて、それからニコリと可愛らしく微笑んだ。
「あのハンカチで、類人くんの気持ちは萌絵さんにも向きました。けれど、まだそれだけです。次はデートに誘っちゃいましょう!」
「でで、で、デートっ?」
わたしは驚きのあまり一歩後退り、まじまじと真帆さんの顔を見つめる。
そんな、デートだなんて、まだ、早すぎて。
「そうです」
と真帆さんは頷き、
「魔法が切れないうちにデートに誘って、一気に告白まで持っていきましょう!」
「え、だって、そんな、わたし……!」
しどろもどろになりながら、わたしはカウンター越しに真帆さんの腕に縋り付く。
ちょっとひんやりとした、しなやかな肌の感触。
「じゃあ、もうここで終わりにします?」
真帆さんの言葉にわたしは瞬きをして、すぐに大きく首を横に振った。
そんなわけにはいかない。この気持ちを、ちゃんと伝えないと!
「でも、どうやって誘ったら良いか…… あれだけいつも周りに人が居るんです。わたしだけデートに誘って、もしあとでみんなから何か言われたら……」
「つまり、人払いが出来ればいいんですね?」
「え?」
「たしか、ちょうど良いのがこの辺りに……」
そう言って、真帆さんは右端の棚に手を伸ばした。
程なくして、チェーンのついた小さな金色の懐中時計をカウンターの上に置きながら、
「これ、売り物ではないんですけど、特別にお貸しします」
「もしかして、時が止まる……とか?」
いかにも魔法の道具っぽい! なんて思っていると、
「いえいえ、違いますよ。残念ながらね、ぷぷっ!」
真帆さんは噴き出すようにちょっと笑った。
「人払いしてくれるだけです。チェーンがついてるこの上の部分がボタンになっていて、それを押すと三十秒、周囲から人が居なくなります。その隙にデートに誘ってください」
わたしはその手のひらにすっぽり収まるほど小さな時計を手に取ると、
「あ、ありがとうございます! 頑張ります!」
お礼を言って、大きく頭を下げたのだった。
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