1 / 31
第1章 魔法使いの少女
第1回
しおりを挟む
1
鏡を見つめる。
そこに映っているのは、ストレート・ショートボブの可愛らしい女の子。
ぱっちりした大きな瞳に小さな鼻、微笑みを湛えたピンクの唇。
わたしはそんな自分の姿を何度も確認して、髪を整えて、
「――よし」
いつものように、大きく頷く。
今日もばっちり! 可愛いぞ、わたし!
「アオイ、なにしてんの! 遅刻するわよ!」
「はぁい!」
でもあまり時間なんて気にしない。
だってわたしには、魔法のホウキがあるんだから。
わたしは洗面所から駆けだし、廊下を抜けて玄関へと向かう。
そこには呆れ顔のママが立っていて、わたしの通学鞄を手にしながら、
「はい、いってらっしゃい!」
元気に笑顔でわたしに言って、ぽんっと背中を叩いてくれる。
「うん! 行ってきます!」
わたしも負けじと大きな返事。
鞄を受け取ると、勢いよく玄関から飛び出した。
青い空、白い雲、眩しく輝く大きな太陽。
今日もいい天気!
わたしは玄関先に置かれた自転車――の横のホウキを引っ掴み、その柄を真横に傾けて、ぽんっとそこに腰を下ろした。
柄の先に鞄の取っ手を引っかけて、さぁ、出発!
もちろん、道ゆく人からは鳥に見えるよう、姿を変える魔法を忘れない。
小さく歌うように呪文を唱えて、ふわりとホウキは上昇する。
どんどん、どんどん、はるか下へと地面が離れる。
目指すは学校、わたしの教室!
ひゅんっ! と前へ進みだすホウキの柄をしっかり掴んで、わたしはパパから高校入学のお祝いに貰った小さな腕時計に目を向ける。
午前八時過ぎ。やばい、ちょっと遅刻ペース。
「急がなきゃ!」
独り言ちて、わたしはホウキの柄をしっかりと握りなおした。
いつもより少し早めに、けれどその勢いで落ちちゃわないように気をつけながら、去り行く景色に目を向ける。
朝日に照らし出された街並みはとても綺麗で、活気があって。
渋滞する道路も、通勤、通学でごった返す歩道も、すべてが賑やかだった。
わたしはそんな朝の町の様子を空から見下ろすのが好きだった。
別に上から目線で「ふふふ、まるで人がアリンコのようだ」なんてことを宣うつもりなんて毛頭ない。
ただ単純に、一日の始まりというこの瞬間が大好きなのだ。
……まぁ、この景色を独り占めしている優越感がないわけではないのだけれど。
新しい朝、希望の朝、なんてどこかの歌の歌詞が浮かんでくるような清々しい空気の中をホウキで飛び続けるわたし。
並みの魔女でも空を飛ぶなんて魔法は使えないから、今この時間は確かにわたしだけのもので――
「えっ」
その時だった。
わたしの少し先を飛ぶ人影が見えて、思わずわたしは目を見張った。
わたし以外に空を飛ぶ人なんて、いったい誰なんだろう。
少なくとも、わたしはわたし以外に空を飛べる魔女を他に知らない。
思い、空飛ぶスピードをちょっと緩めて、斜め上空からその人影の様子を窺う。
わたしと同じようにホウキに腰掛ける一人の少女。
わたしと同じ高校の制服に身を包んで。
わたしと同じように、眼下の街並みを眺めている。
わたしより長くて綺麗な髪を風になびかせながら。
わたしよりもゆっくりとしたスピードで空を飛んでいて。
いったい、この子は誰なんだろう。
同じ制服ってことは、当然同じ高校に通っているっていうことで。
わたしと同じ一年生? それとも、二年か三年の先輩?
……わからない。
この春に入学して数か月。
まだわたしは、同じ学年や先輩たちに、どんな子が居るのかすら覚えきれていなかった。
けれど、まさか私と同じ、空を飛べる魔女がいただなんて。
驚きながらそんな少女を眺めていると、
「……あっ」
不意にその少女が頭をもたげて、わたしの方に顔を向けた。
少女はしばらくわたしの姿を見つめていたが、
「――こんにちは」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
鏡を見つめる。
そこに映っているのは、ストレート・ショートボブの可愛らしい女の子。
ぱっちりした大きな瞳に小さな鼻、微笑みを湛えたピンクの唇。
わたしはそんな自分の姿を何度も確認して、髪を整えて、
「――よし」
いつものように、大きく頷く。
今日もばっちり! 可愛いぞ、わたし!
「アオイ、なにしてんの! 遅刻するわよ!」
「はぁい!」
でもあまり時間なんて気にしない。
だってわたしには、魔法のホウキがあるんだから。
わたしは洗面所から駆けだし、廊下を抜けて玄関へと向かう。
そこには呆れ顔のママが立っていて、わたしの通学鞄を手にしながら、
「はい、いってらっしゃい!」
元気に笑顔でわたしに言って、ぽんっと背中を叩いてくれる。
「うん! 行ってきます!」
わたしも負けじと大きな返事。
鞄を受け取ると、勢いよく玄関から飛び出した。
青い空、白い雲、眩しく輝く大きな太陽。
今日もいい天気!
わたしは玄関先に置かれた自転車――の横のホウキを引っ掴み、その柄を真横に傾けて、ぽんっとそこに腰を下ろした。
柄の先に鞄の取っ手を引っかけて、さぁ、出発!
もちろん、道ゆく人からは鳥に見えるよう、姿を変える魔法を忘れない。
小さく歌うように呪文を唱えて、ふわりとホウキは上昇する。
どんどん、どんどん、はるか下へと地面が離れる。
目指すは学校、わたしの教室!
ひゅんっ! と前へ進みだすホウキの柄をしっかり掴んで、わたしはパパから高校入学のお祝いに貰った小さな腕時計に目を向ける。
午前八時過ぎ。やばい、ちょっと遅刻ペース。
「急がなきゃ!」
独り言ちて、わたしはホウキの柄をしっかりと握りなおした。
いつもより少し早めに、けれどその勢いで落ちちゃわないように気をつけながら、去り行く景色に目を向ける。
朝日に照らし出された街並みはとても綺麗で、活気があって。
渋滞する道路も、通勤、通学でごった返す歩道も、すべてが賑やかだった。
わたしはそんな朝の町の様子を空から見下ろすのが好きだった。
別に上から目線で「ふふふ、まるで人がアリンコのようだ」なんてことを宣うつもりなんて毛頭ない。
ただ単純に、一日の始まりというこの瞬間が大好きなのだ。
……まぁ、この景色を独り占めしている優越感がないわけではないのだけれど。
新しい朝、希望の朝、なんてどこかの歌の歌詞が浮かんでくるような清々しい空気の中をホウキで飛び続けるわたし。
並みの魔女でも空を飛ぶなんて魔法は使えないから、今この時間は確かにわたしだけのもので――
「えっ」
その時だった。
わたしの少し先を飛ぶ人影が見えて、思わずわたしは目を見張った。
わたし以外に空を飛ぶ人なんて、いったい誰なんだろう。
少なくとも、わたしはわたし以外に空を飛べる魔女を他に知らない。
思い、空飛ぶスピードをちょっと緩めて、斜め上空からその人影の様子を窺う。
わたしと同じようにホウキに腰掛ける一人の少女。
わたしと同じ高校の制服に身を包んで。
わたしと同じように、眼下の街並みを眺めている。
わたしより長くて綺麗な髪を風になびかせながら。
わたしよりもゆっくりとしたスピードで空を飛んでいて。
いったい、この子は誰なんだろう。
同じ制服ってことは、当然同じ高校に通っているっていうことで。
わたしと同じ一年生? それとも、二年か三年の先輩?
……わからない。
この春に入学して数か月。
まだわたしは、同じ学年や先輩たちに、どんな子が居るのかすら覚えきれていなかった。
けれど、まさか私と同じ、空を飛べる魔女がいただなんて。
驚きながらそんな少女を眺めていると、
「……あっ」
不意にその少女が頭をもたげて、わたしの方に顔を向けた。
少女はしばらくわたしの姿を見つめていたが、
「――こんにちは」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる