最弱の騎士団長は今日も逃げる

こせい。

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最弱の騎士団長

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夢を見た。
戦場最前線で頼もしい仲間を連れて、神剣を前に掲げて皆を鼓舞し、馬に股がり、凶悪な敵と戦う夢だ。
しかし、俺はそれが夢だと気づいていた。
なぜなら────

「団ちょー、給料日まだー? ギャンブルしたいんだけど?」
「あ、私も新しい剣のコレクションが欲しいんだけど」
「昼御飯もう食べて良いですか?」
「あ、見たい魔法送があるので帰りたいです」

─────

「お前らいい加減にしろぉぉおお!!??」

───なぜなら、俺は最果ての村の騎士団、通称『最弱の騎士団』の団長、アシュリー・リーベルなのだから……。




どうしてこうなった……。 いつから俺は道を踏み外した?
あれは7年前、俺が18歳の時に俺の親父、前騎士団長が魔王討伐最終戦の日、騎士団全員を連れて戦場に赴いた時……。
親父の世代は全員猛者揃いで一人一人の実力もあった。 今みたいに『最弱』何て不名誉な名前は無かった。
しかし、親父や他の騎士全員が戦場で殉職したあの日までは……。
親父が死んだ後、成り上がる感じで俺が騎士団長の職を引き継いだ。 騎士団員の募集などしては見たものの集まるのは有象無象のやる気がない者ばかりと……。
それでかれこれ7年、25歳になった俺の周りにはグータラでやる気のない先鋭が揃った……と……。

「無理だ……詰んでるは、これ……」
「にい様? 何か悩まれているのですか?」

妹のアリアが心配そうに見てくる。

「何でもないよ、それより朝御飯をとってもいい?」
「わかりました! 他の団員達ももう食べてますよ」
「いつも悪いな……家事を全部押し付けてしまって……」

何度も言うようだがここは最弱の騎士団……。
家事をしてくれる人を呼べる資金も無いので、全て妹に押し付けてしまっている。
いつしかはこの問題もどうにかしてあげなきゃいけないな……。

「団長さん、おはようございます。 先にご飯いただいてます」

そう言って礼儀正しく挨拶してくれるのは最近騎士団に入った女性、クリート・ハリストである。 長い髪をポニーテールにしていて、礼儀は丁寧だが、それゆえにちょっと固苦しい。
入ってきたばっかりの時には「問題児ばかりのこの騎士団でやっていけるのか?」 何て思っていたが案外上手くやっているようだ。

「それで……にい様、私、今日の朝ご飯美味しくできたと思うんです!!」
「お、おう……」

確かにいつもはお目にかからない美味しそうな料理が食卓に並んでいる。 いつもだったらパンと水のみの食卓が晩ご飯のように豪華になっていた。

「えっと……アリア? これはお金って……」
「誉めるより先にお金の心配ですか……そうですか……。 まぁ、お金は心配しないでください。 これは村の皆さんから、にい様にとプレゼントされたものですよ?」
「へぇ、村の人たちからか……。 それじゃあ後で礼に行かなきゃ行けないな」
「そうですね、後で一緒に行きましょう!」

村の人たちを守るという職業上村の人たちは俺に感謝してくれる。

「いつまで兄妹でイチャついてるついてるんですか?」

クリート・ハリストがおちょくってくる。

「別にイチャついてないだろ?」
「そ、そうですよ!? な、なんで私とにい様が!?」

でもまぁ、せっかくのごちそうがあるなら美味しくいただこう。
俺は食べながらひとつの疑問をぶつけた。

「そう言えば他の団員は?」
「今日は一日中ギャンブルしに行くって朝早くから出ていきましたよ?」
「……」

……あいつら…………。

「それじゃあ今日は俺とクリート・ハリストさんで仕事終わらせなきゃいけないのか……」
「それでしたら、私の代わりににい様と一緒にお礼を言いに行ったらどうです? 村の人たちにハリストさんを紹介しに行ったらどうですか?」
「それいいな! ナイス、アリア!」

俺はアリアの頭を撫でてあげる。

「うぇへへぇ」
「アリアさん、女の子として出してはいけない声が出てますよ……?」

冷静にクリート・ハリストさんがアリアにツッコむ。

「ご馳走さま、美味しかったよ。 ありがとアリア!」
「そ、そんな! お粗末様です!」

俺はご飯を食べ終わり、仕事の準備を始める。
後ろではアリアとクリート・ハリストさんが何かこそこそと会話していた。

「何を話してるんだ?」
「にい様には関係ないことですよ?」
「そ、そうか……」

俺に関係ないことなら深く追求はすまい。

「それじゃあ、見回りにいこうか?」
「はい……」

ん? なぜだかさっきより元気がないが大丈夫か? さっきアリアと何の話をしていたのだろうか?

「それじゃあ、にい様、いってらっしゃいませ。 ハリストさん、わかってますよね?」
「も、もちろんです!」
「行ってきます。 アリア、今日の夜にちょっとお話ししようか?」

さっき何か言ったか聞かないと、ただでさえ少ない団員がもっと少なくなる。

「そ、そんな!? 夜に、二人っきりで! 大切な、お話なんて!」

俺はツッコむ気力も起きなかったのでアリアを無視して外に出る。

季節は夏。 じめじめした空気と高い気温で気が滅入りそうになる。

「帽子ちゃんと持ってきましたか?」

できるだけ優しく問いかける。

「はい、持ってきています」
「よし、それじゃあ最初に今日の朝御飯の例を言いにいこうか?」
「は、はい!」

いい返事である。

……本当に久しぶりのいい返事である。
他の団員たちにも見習ってほしい……。
あれ? なんだか無性に泣けてきたぞ?

「あ、あのすいません! なな、何か言ってしまいましたか、私!?」

おろおろしている姿を見続けるのは流石に悪いので、仕方なく声をかける。

「緊張しないでいいですよ? アリアから何か言われたようですけど、気にしないでください」
「はい……」

今日が実質初任務である。
それもあって、若干緊張しているのかもしれない。

それからは緊張も溶けたのか、何事もなく仕事をこなしていった。
しかし、帰る頃になったところで事件が起きたのだった。
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