はみ出し記者 鷹見恭平 オールドメディアは世の不条理、タブーを暴けるか VOI.1 不法滞在者が運ぶ甘い媚薬

奇談エバンジェリスト

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take1:スクープもどき

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大江戸TV第一スタジオ―――。
看板報道番組『ワールドニュース22』のオンエア中だ。
報道局チーフ記者鷹見恭平は、カメラに向けた美貌に愁いを帯びる、キャスター伊集院雅子の横顔に見とれつつ、昨夜の情事を思い起こす。
その清楚かつ怜悧な表情からは想像もつかぬほど、肉欲に溺れ、悦楽を求めてきた類まれな美女を見つめていると、今この場で淀みなく事実を伝え、倫理観に満ちた表情を作る彼女とは別人なのではないかという錯覚すら抱く。
が、そのギャップにもヒト科のオスとして本能を刺激され、勃然とした気持ちが沸き起こり、雅子と己の肉体の結びつきの深さを自覚する鷹見だ。

「ドリーム・エンターテインメントの、ドリー富岡社長は現在一部マスコミで報じられているような、女性タレントへの性行為の強要について事実無根であると、文章で回答しました…。次のニュースです…」
キャスター伊集院雅子は女子アナの登竜門、ミス慶陽のグランプリを受賞したほどの端正な顔を、やや無機質なポーカーフェイスに変えると、事実のみを伝える様にニュースを締めくくる。
(この程度の放送が限度か…)
ドリーム・エンターティメントは多くの若手女優やフリーの女子アナが所属する、業界最大手の芸能事務所だ。
社長であるドリー富岡は、業界の明日を担う若い女性たちの夢の実現を謳い文句に、様々なジャンルに通用するビッグスターを誕生させるべく、その育成に力を注いでいた。
結果、マスメディアにおいて所属する美女が登場しない日などなく、ドリーム・美女というくくりで表現されることも多い彼女達は、絶大なファンにも支えられている。
結果、その社長である富岡の威光は、マスコミ界はもとより、政財界にも通用するほど絶大との噂だ。

だが、そんなドリーム事務所にあらぬ噂が立ったのは3カ月前のこと。
女子大生レポーターとして活動していた、華原さつきが社長から性的行為を強要されたことを週刊誌に暴露したのだ。
それに呼応するようにティーンエイジャーのタレントたちからも、性被害を訴え始めた。
その内容は社長の奇怪な性癖の暴露にとどまらず、事務所からある政界人との愛人関係を無理やり結ばされたことを匂わせるセンセーショナルなものだった。
ドリーム事務所が急成長を遂げた理由、すなわち闇の扉が開かれた瞬間だった。
また華原の告白が、アブノーマルな富岡の性癖をも匂わせる内容であったことも、詮索好きの老若男女の好奇心を刺激することとなった。
ネットメディアは当然、この話題で持ちきりだったが、オールドメディアと揶揄されるTV業界では、ほぼこの話題はタブー視されている。
大江戸TVも例外ではなく、人気タレントや女子アナの「提供」をボイコットされたら死活問題だ。
ドリーム事務所との友好的な関係を続けるべく、報道の大江戸TVの看板などかなぐり捨て、ほぼすべての番組でこの問題をスルーしてきた。

看板ニュース番組『ワールドニュース22』を擁する大江戸TV報道部の熱血漢、鷹見恭平が、メインキャスター兼編集長の嶌津敏久に食い下がり、どうにか報じたニュースが、雅子に読ませた原稿である。
それも15秒というショートニュース扱いだ。
「じゃあ、嶌津さんはこの問題これ以上突っ込むなと、黙っていろって言うんですか!? この『日本の行く末』とかいうご大層な本を書いている良識派ジャーナリストの名が泣きますよ!! ドリー富岡を徹底追及しましょう」
放送終了後、不惑を迎えても血気盛んな辣腕記者は、白髪が印象的な穏健な紳士然とした嶌津に食い下がった。
「落ち着き給えよ、恭ちゃん」
恭平とはすでに十数年来の仕事仲間とあって、良識派ジャーナリストはその性格を熟知している。穏やかな口調で宥めにかかった。
「裏はとれているといったって、所詮はまだ週刊誌レベルの問題じゃないか。ウチの番組で取り上げるテーマでもないだろう。中東情勢にせよ、政権与党の不始末にせよ、追及すべき問題は山積みだろう」
大手新聞社出身らしく、大掛かりな国際問題やアジア問題に造詣は深くとも、成果買いなど、今の時代だからこそ表面化するデリケートなニュースに疎いのだ。
「それに富岡社長はいずこかへ雲隠れしていて、捕まらんよ。」
「鷹見さん、少しお話が」
週刊誌の人気女性キャスターランキングで、常に上位を占める伊集院雅子はその美貌を引き締めたまま、怜悧な声で窘めるように恭平を呼び止める。
涼しげな瞳でじっと見つめると、微かに頭を振ってそっと小指を絡めてきた―――。
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