12 / 19
Take12:熱血漢キレる!!
しおりを挟む
週が明けた夜――――。
「結局は、追究し切れずか―――」
「ですね」
恭平と李は、他のスタッフに隠れ、実らぬ取材の成果を報告し合っていた。
ファンタジーと呼ばれる鎮痛剤の流通経路についても、例の運送屋の社長経由でアジアのとある大国であることの裏が取れた。
また、それを雇い入れたハラム人を使い、極秘裏に、いずこかへ運んでいることも認めさせたが、その行く先がどうしても知れないのだ。
社長は、北関東市で保険証を持たぬハラム人たちの闇医療に貢献しているのだと言い張るばかりだった。
これではスクープしたとしても、苦境にいる者たちを救う日本人やその関係者という、ある種の美談で終わってしまう。
ハラム人問題の闇を解決したことにはならない。
問題はその先なのだ。
多くのハラム人を手足のように使い、その運び込んだ薬品をどこでどうしているのか、口の堅いハラム人の一人を懐柔し、情報を得ようとした矢先、そのハラム人が突如事故死したのだ。
しかも、『ワールドニュース22』の編集権を持つ嶌津敏久も、待ったをかけてきたのだ。
「恭ちゃん、さすがにまずいな。“天の怒りに触れる”ぞ」
この“天の怒りに触れる”とは局内の隠語で、Don't standともいわれていた。
『この件について深入りしすぎると、無用な犠牲者が出るだけだ』
嶌津は暗に、一人のハラム人が暗殺されたことを示唆した。
「闇医療の貢献…その件だけでもなかなかのスクープじゃないか」
穏健で人権はキャスターとして知られる嶌津は、その“うわべだけの追及”の成果に満足げだった。
「しかし、嶌さん、そういう姿勢だからオールドメディアは信用されないんじゃないですかね!?」
久方ぶりに、恭平は嶌津に食って掛かった。
「今、残念だがメディアはネットに押されています。TVや新聞のことなど、肥大化しすぎて、首が回らずてめぇの尻を自分で拭えない古代恐竜みたいにいう奴ばかりだ。意味が解りますか⁉」
恭平は、未だ古き良き時代の残像に取り憑かれているかのような嶌津を見据える。
「大手企業や巨大組織に金もらって、その会社の批判できるのかっていう事ですよ⁉ おれらの会社だって不祥事起こしている会社と同列で、親族みたいになって、図体ばかりデカくなって、穢ねえ部分が山ほどあるのに、自浄作用も利かなくなって、腐りきった大義名分ばっかりを垂れ流しているわけだ! 再生数欲しさに現場で、プロ市民が金もらってやっているデモ隊にケンカ売ってる馬鹿な“ミーチューバー”の動画の方がよっぽど事実を報道してるって、世間は思い始めているんですよ!」
恭平がまくし立てているさなか、背後に上品な香水の香りが漂う――――。
「結局は、追究し切れずか―――」
「ですね」
恭平と李は、他のスタッフに隠れ、実らぬ取材の成果を報告し合っていた。
ファンタジーと呼ばれる鎮痛剤の流通経路についても、例の運送屋の社長経由でアジアのとある大国であることの裏が取れた。
また、それを雇い入れたハラム人を使い、極秘裏に、いずこかへ運んでいることも認めさせたが、その行く先がどうしても知れないのだ。
社長は、北関東市で保険証を持たぬハラム人たちの闇医療に貢献しているのだと言い張るばかりだった。
これではスクープしたとしても、苦境にいる者たちを救う日本人やその関係者という、ある種の美談で終わってしまう。
ハラム人問題の闇を解決したことにはならない。
問題はその先なのだ。
多くのハラム人を手足のように使い、その運び込んだ薬品をどこでどうしているのか、口の堅いハラム人の一人を懐柔し、情報を得ようとした矢先、そのハラム人が突如事故死したのだ。
しかも、『ワールドニュース22』の編集権を持つ嶌津敏久も、待ったをかけてきたのだ。
「恭ちゃん、さすがにまずいな。“天の怒りに触れる”ぞ」
この“天の怒りに触れる”とは局内の隠語で、Don't standともいわれていた。
『この件について深入りしすぎると、無用な犠牲者が出るだけだ』
嶌津は暗に、一人のハラム人が暗殺されたことを示唆した。
「闇医療の貢献…その件だけでもなかなかのスクープじゃないか」
穏健で人権はキャスターとして知られる嶌津は、その“うわべだけの追及”の成果に満足げだった。
「しかし、嶌さん、そういう姿勢だからオールドメディアは信用されないんじゃないですかね!?」
久方ぶりに、恭平は嶌津に食って掛かった。
「今、残念だがメディアはネットに押されています。TVや新聞のことなど、肥大化しすぎて、首が回らずてめぇの尻を自分で拭えない古代恐竜みたいにいう奴ばかりだ。意味が解りますか⁉」
恭平は、未だ古き良き時代の残像に取り憑かれているかのような嶌津を見据える。
「大手企業や巨大組織に金もらって、その会社の批判できるのかっていう事ですよ⁉ おれらの会社だって不祥事起こしている会社と同列で、親族みたいになって、図体ばかりデカくなって、穢ねえ部分が山ほどあるのに、自浄作用も利かなくなって、腐りきった大義名分ばっかりを垂れ流しているわけだ! 再生数欲しさに現場で、プロ市民が金もらってやっているデモ隊にケンカ売ってる馬鹿な“ミーチューバー”の動画の方がよっぽど事実を報道してるって、世間は思い始めているんですよ!」
恭平がまくし立てているさなか、背後に上品な香水の香りが漂う――――。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
小野寺社長のお気に入り
茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。
悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。
☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる