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Last Take:はみ出し記者逆転勝利…?
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「そこまでだ!」
聞き覚えのある声に、雅子は虚ろな瞳を向ける。
と、そこには縛り上げられたやくざ者らしき男を捕らえた鷹見恭平の姿が。
同時に、先ほどまで堀越会の幹部と思い込んでいた男が仮面を取る。
雅子は、繋がれた不自由な身体を何とか起こすと、大きく目を見開いて男の顔を見た。
そこに現れた素顔は、恭平の部下、李だ。
「きょ、恭平クン…。それに李君? きっと来てくれると、信じてた…」
雅子は、歓喜の涙に瞳を潤ませつつ、力尽きたようにベッドに横たわる。
「この地下室での実態は、全部収めたぜ」
李のスーツに仕込んだ名刺サイズの隠しカメラが、すべての事態を記録しているのだ。
「き、貴様たち、これはどういうことだ?」
「彼女の肉体目当てにいそいそと乗り込んでくるこの野郎をとっ捕まえて、会員しか知り得ない地下室の暗証番号を聞き出すよう、俺が部下を送り込んだんだよ。“ヤクザさん”は御覧の通り縛り上げて、俺の部下が代理を務めさせてもらったよ。お前らは、マスコミ相手に、自分たちの犯罪行為を晒してくれたわけさ」
恭平は猿轡の下で情けない嘆ぎを漏らす幹部の頭に蹴りを入れながら凄む。
「俺は、国家権力は嫌いだが、今日ばかりはお手伝いをお願いしておいたぜ」
遠くからパトカーの音も聞こえてきた―――――。
―――――翌日の大江戸TVスタッフルーム。
「ど、どういうことですか、嶌さん⁉」
恭平の怒声が飛ぶのは毎度のことなので、スタッフは誰も気にかけない。
が、そこで話し合われている内容はなかなかヘビーなものだった。
「今回のスクープじゃ、堀越会のかの字もなけりゃ、逮捕された幹部の名も、あの場にいた連中の親玉の名もまるで出ていない‼ 北関東市に蔓延る薬物の運び屋の実態すら報道できない‼ 何一つめくれていないじゃないですか⁉」
恭平が怒るのも無理はない。
大スクープという形で解決したはずの今回の事件が、土屋をはじめとした数人の男が、運送屋に勤務する一部のハラム人と結託し引き起こした薬物を用いた監禁事件、としてしか報道できないというのだ。
国会議員の魔室は無論のこと、政界に強いコネクションを持つ旭日の名前すら報道はされないらしい。
当然、北関東市の闇は暴かれないまま、だ。
その現場に踏み込んで、危機にさらされかけた伊集院雅子を救った熱血漢として恭平の名が報道されるに至ったのは事実だが…。
「恭ちゃん、わかってくれないか。私にも立場があるんだ」
嶌津は温厚な顔に、困惑の色をたたえて恭平をあしらう。
「あんた、本当に報道人か⁉ こんな番組辞めてやる‼」
恭平はいつもの決まり捨て台詞を吐くしかなかった。
「まあまあ、恭平クン。今回はここで手を打ちませんこと?」
いつにもまして美しい純白のスーツ姿の雅子は、昨日の危険な取材の疲れも見せず上司であり、恋人でもある男にそっと身を寄せる。
「でも私、嬉しくってよ、恭平クン」
「なにがだよ」
「だって、あなたが助けに来てくれたんだもの…。土屋に捕まった時は、もう駄目かと思っちゃったわ。覚悟を決めていたんだから。あなたの名前をニュースで読み上げられるんですもの、感激しちゃう。愛する人の活躍を伝えられるだなんてアナウンサー冥利に尽きるわ」
雅子は甘えるような口調で囁く。
「これに懲りて、雅子先輩も行動を慎んだらどうです? お転婆に拍車がかかり過ぎると、今度はタダじゃ済みませんよ」
雅子救出の立役者、李が揶揄うように言う。
「まあ、余計なお世話ね、李君! キミ、変装しているのをいいことに私を虐めるようあの人たちに命令したわよね、最低なんだから!」
今度は冷たく塩対応して見せる雅子。
そのツンと澄ました貌すらなかなか可愛いのだ。
「いや、あれは、鷹見さんが到着するまでの時間稼ぎで…」
と、顔を赤らめ弁明する李。
鎖に繋がれ、身悶える雅子の艶姿はなかなか刺激が強かったようだ。
「それと雅子がどこへ連れ去られたか教えてくれた、ストーカー…いや、女子アナヲタクの青年にも感謝だな」
と恭平が、雅子を宥める。
「まあいいわ」
雅子は表情を和らげる。
「でもね、恭平クン」
雅子は声を固くする。
「今回の事件、ジェイソンマスクのおじさまは、真相の追及ができないことをあえて分かったうえで、私たちを先導したんじゃないかしら?」
「どういうことだい?」
と、恭平。
「私たちは、北関東市の裏側を知った一方で、陣川会や堀越会、そして帝国親民党を完全に敵に回したと思うの。今後大きな力を持つ相手と闘うことになる気がするわ。あえてそういう状況に私たちを追い込んだ…。北関東市の問題なんて、実は些細な事だった…きっとそうよ」
雅子は己を納得させるようにうなずいて、続ける。
「これからきっと難問が待ち構えているでしょうけど、それを読み解くことで、きっと私たちがこれまで報道できなかった事件の裏側を知ることも出来る気がするの。そして、あのジェイソンマスクの正体も、その目的も…」
「案外愉しそうだな、君は」
「ええ、スリルがあるもの!」
雅子は屈託なく笑う。
なかなかガッツのある娘だと、恭平は内心舌を巻く。
「確かにな、この事件は始まりに過ぎない。でも、俺はどこまでも挑んでやるよ。どんな奴を敵に回そうと」
「俺らもついてますから」
李がガッツポーズを作る。
「ま、こちらの命はジェイソンマスクに預けたまんまだしな。闘わざるを得ないぜ」
恭平たちを掌握する仮面の老人の正体も暴いてやる、恭平は決意を固めている。
「はみ出し記者とその門下生の腕の見せ所、よね!」
雅子が恭平の腕をやさしくとった―――――。(VOI.1:完)
聞き覚えのある声に、雅子は虚ろな瞳を向ける。
と、そこには縛り上げられたやくざ者らしき男を捕らえた鷹見恭平の姿が。
同時に、先ほどまで堀越会の幹部と思い込んでいた男が仮面を取る。
雅子は、繋がれた不自由な身体を何とか起こすと、大きく目を見開いて男の顔を見た。
そこに現れた素顔は、恭平の部下、李だ。
「きょ、恭平クン…。それに李君? きっと来てくれると、信じてた…」
雅子は、歓喜の涙に瞳を潤ませつつ、力尽きたようにベッドに横たわる。
「この地下室での実態は、全部収めたぜ」
李のスーツに仕込んだ名刺サイズの隠しカメラが、すべての事態を記録しているのだ。
「き、貴様たち、これはどういうことだ?」
「彼女の肉体目当てにいそいそと乗り込んでくるこの野郎をとっ捕まえて、会員しか知り得ない地下室の暗証番号を聞き出すよう、俺が部下を送り込んだんだよ。“ヤクザさん”は御覧の通り縛り上げて、俺の部下が代理を務めさせてもらったよ。お前らは、マスコミ相手に、自分たちの犯罪行為を晒してくれたわけさ」
恭平は猿轡の下で情けない嘆ぎを漏らす幹部の頭に蹴りを入れながら凄む。
「俺は、国家権力は嫌いだが、今日ばかりはお手伝いをお願いしておいたぜ」
遠くからパトカーの音も聞こえてきた―――――。
―――――翌日の大江戸TVスタッフルーム。
「ど、どういうことですか、嶌さん⁉」
恭平の怒声が飛ぶのは毎度のことなので、スタッフは誰も気にかけない。
が、そこで話し合われている内容はなかなかヘビーなものだった。
「今回のスクープじゃ、堀越会のかの字もなけりゃ、逮捕された幹部の名も、あの場にいた連中の親玉の名もまるで出ていない‼ 北関東市に蔓延る薬物の運び屋の実態すら報道できない‼ 何一つめくれていないじゃないですか⁉」
恭平が怒るのも無理はない。
大スクープという形で解決したはずの今回の事件が、土屋をはじめとした数人の男が、運送屋に勤務する一部のハラム人と結託し引き起こした薬物を用いた監禁事件、としてしか報道できないというのだ。
国会議員の魔室は無論のこと、政界に強いコネクションを持つ旭日の名前すら報道はされないらしい。
当然、北関東市の闇は暴かれないまま、だ。
その現場に踏み込んで、危機にさらされかけた伊集院雅子を救った熱血漢として恭平の名が報道されるに至ったのは事実だが…。
「恭ちゃん、わかってくれないか。私にも立場があるんだ」
嶌津は温厚な顔に、困惑の色をたたえて恭平をあしらう。
「あんた、本当に報道人か⁉ こんな番組辞めてやる‼」
恭平はいつもの決まり捨て台詞を吐くしかなかった。
「まあまあ、恭平クン。今回はここで手を打ちませんこと?」
いつにもまして美しい純白のスーツ姿の雅子は、昨日の危険な取材の疲れも見せず上司であり、恋人でもある男にそっと身を寄せる。
「でも私、嬉しくってよ、恭平クン」
「なにがだよ」
「だって、あなたが助けに来てくれたんだもの…。土屋に捕まった時は、もう駄目かと思っちゃったわ。覚悟を決めていたんだから。あなたの名前をニュースで読み上げられるんですもの、感激しちゃう。愛する人の活躍を伝えられるだなんてアナウンサー冥利に尽きるわ」
雅子は甘えるような口調で囁く。
「これに懲りて、雅子先輩も行動を慎んだらどうです? お転婆に拍車がかかり過ぎると、今度はタダじゃ済みませんよ」
雅子救出の立役者、李が揶揄うように言う。
「まあ、余計なお世話ね、李君! キミ、変装しているのをいいことに私を虐めるようあの人たちに命令したわよね、最低なんだから!」
今度は冷たく塩対応して見せる雅子。
そのツンと澄ました貌すらなかなか可愛いのだ。
「いや、あれは、鷹見さんが到着するまでの時間稼ぎで…」
と、顔を赤らめ弁明する李。
鎖に繋がれ、身悶える雅子の艶姿はなかなか刺激が強かったようだ。
「それと雅子がどこへ連れ去られたか教えてくれた、ストーカー…いや、女子アナヲタクの青年にも感謝だな」
と恭平が、雅子を宥める。
「まあいいわ」
雅子は表情を和らげる。
「でもね、恭平クン」
雅子は声を固くする。
「今回の事件、ジェイソンマスクのおじさまは、真相の追及ができないことをあえて分かったうえで、私たちを先導したんじゃないかしら?」
「どういうことだい?」
と、恭平。
「私たちは、北関東市の裏側を知った一方で、陣川会や堀越会、そして帝国親民党を完全に敵に回したと思うの。今後大きな力を持つ相手と闘うことになる気がするわ。あえてそういう状況に私たちを追い込んだ…。北関東市の問題なんて、実は些細な事だった…きっとそうよ」
雅子は己を納得させるようにうなずいて、続ける。
「これからきっと難問が待ち構えているでしょうけど、それを読み解くことで、きっと私たちがこれまで報道できなかった事件の裏側を知ることも出来る気がするの。そして、あのジェイソンマスクの正体も、その目的も…」
「案外愉しそうだな、君は」
「ええ、スリルがあるもの!」
雅子は屈託なく笑う。
なかなかガッツのある娘だと、恭平は内心舌を巻く。
「確かにな、この事件は始まりに過ぎない。でも、俺はどこまでも挑んでやるよ。どんな奴を敵に回そうと」
「俺らもついてますから」
李がガッツポーズを作る。
「ま、こちらの命はジェイソンマスクに預けたまんまだしな。闘わざるを得ないぜ」
恭平たちを掌握する仮面の老人の正体も暴いてやる、恭平は決意を固めている。
「はみ出し記者とその門下生の腕の見せ所、よね!」
雅子が恭平の腕をやさしくとった―――――。(VOI.1:完)
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