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②第二章 一生のキズを背負う子供たち
4差異があるだけで相容れない存在となる
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一つ二つ三つと片付けられたのは良いものの、残りの四つは目的地がハッキリとしていないものしか無い。
教師が生徒を殺したって言えば教室なのかもしれないが、一通り近くにある教室へ寄っても誰も(?)居なかった。かといって他のはどうかと考えてみても場所のヒントが無ければ探しようが無い。
さてどうしたものかと頭を悩ませている内に閃いたのは
「ネト友に助言を求めればいいのでは?」
ということ。
普段から作業に追われててホラーに飢えている野良猫ろんちゃんならきっと……食いついてくれるに違いない!
速やかにちみほを取り出して電源を入れ、ライソで飛ばす。
『ろんちゃんろんちゃん!!』
『どうした~~』
『気分転換にホラー話で推理して欲しい』
『何それ面白そう。乗った』
『──って感じの奴なんだけどこれ4以降さ……場所分かんなくて……』
『あー、へー。その分だと生徒が殺された場所考えた方が何かあるかもね! から4は教室とか授業出来るとことかだと思うよー』
『な、なるほど……!!!流石ろんちゃん』
『後ぱんださん同じ学校じゃない?』
『へ????』
手が止まった。
マジ……?
画面を覗き込んできたブラビットは
「同じ学校ならリアルでご友人になればよろしいのでは?」
と言ってきたがいや、いやそれは。
よく考えてみてほしい、黒兎赤が中の人だと分かった瞬間に幻滅する瞬間を。可能性を。
中の人が分かった時点で
「ああ、あの噂の」
と避けられてプレイズされ挙句の果てにはアカウントまで晒されて逃げ場が完全に無くなるかもしれない、そういう可能性を……!
などと言い訳を重ねては既読を付けて返信しなかった為、向こうから
『ごめんリアルとネットは別々で扱いたいよね、無神経だった。忘れて』
と返ってきて申し訳ない思いに駆られた。
でもホッとしている自分がいるのも分かる。前より臆病になったことは認めよう、
だってリアル怖い。
「…………」
彼女からの視線が痛い。
「ま、まーとりあえず次ミーティングルームとか行ってみようかー」
ちゃんと
『いやこっちこそごめん! ネットはネットで完結させたい派だからびっくりしちゃって』
と言っておいたので大丈夫です。
大丈夫です、……多分。
くっそ通知来てビビったけどこれハニーマートのメルマガだ。くそうメルマガめ。
罪の無いコンビニエンス・ストアに八つ当たりしながら移動していくこと数十分。
音楽室から理科室へと寄り、何も無かったからと別棟にあるミーティングルームへ赴いた。
息を整え速やかに小窓から状況確認。
右良し左良しオールオッケー、よし行こう。
小刻みな動きをする手を見ないふり、誰もが皆意地を張りたくなる場面はあることだろう。
僕はブラビットと二人きりの今がそうです。
意地を張って少しでも格好良く映りたいお年頃なのだと室内へ入り込めば、そこは静寂に包まれているだけで、特に何も無さそうだった。何だ何も無いのか──と次へ移ろうとする、その瞬間。
間を置かずに聞こえてきたのは背後から響く、誰かがすすり泣く声。
あまりにも物寂しそうな声をするもんだから今ばかり情が移りそうになってしまう。
いけない、どんな幽霊か分からない内に同情なんて……すぐ考えを改めようとしたが、それでも聞こえる
「どうせ」
と
「俺なんて」
という悲壮感溢れる声は、僕の気を引くに十分すぎた。
だからだろう、自然と背後へ振り返れたのだ。
「……君が殺されちゃった生徒さん?」
声を掛ければ先程の悪魔より透けている赤いショートに少し切れ長の青い瞳を持った少年が、そこにいた。
『見えるのか』
そう言葉を発する彼から感じられるのは不安、疑念、期待が入り混じった感情だった。
推察するに、訴えることをしたかったのに出来なかった、とか現実への失望を抱いているように見受けられる。
幸か不幸か、僕は幽霊が見える体質らしい!(嬉しくない)
これを機に霊媒師でも始めようかな、始めないけど……昔からこういった職業があることを考えれば自ずと、自分が思っているよりも遥かに人外の関わりは根深いものだと分かるものだ。前はそれを良いことだと捉えていたが、単純にそれだけでは収まらない事例があるのだとなんとなく気付き始めていた。
近くにあるパイプ椅子へ腰を下ろし、慣れない一人称を使い口から出任せを並べていく。
「見えるよ? 生憎、ぼ……俺はここに、あー。気付かない内に彼女と閉じ込められちゃってね。出れるようになるまで暇だからこの学校に伝わってる噂話を調べてるんだ。所謂自由研究って奴」
事実最初は閉じ込められたことがきっかけだったのだし、嘘は言っていない。
二人きりという状況を再認識してにやけていたのかもしれない、
「これだからデートスポット代わりに使う奴は」
とお咎めの発言が飛び交う。
デート=カップル認識されてる!
と舞い上がる僕の制服を見て不可抗力で、という点は信じて貰えたようだ。
「貴方、死神の者ですか」
え、嘘? 死神じゃ同業者じゃ、とは思ったものの反応を見るに違うようだ。
彼は首を横に振って「死神の血は引いている」とぶっきらぼうに答える。
つまりハーフか。
あの悪魔の子といいなんなんだこの学校!
人外にとって環境悪すぎたんじゃねえの! と思わざるを得ない。
問題無いフリをしただけのハリボテの良さなんて要らないのに、世の中どうも塗り固めるだけの工事ばかりを上手くやる。
不満を溜め込みがら問う。
「君は多分この四つ目の『悪魔の教師が生徒を呪って殺した』っていう噂の子だよね? どうして死んじゃったのか訊いても良い……?」
『は? 呪い? ふざけんな、最初に先生を煽ったのは生徒だ。共犯者の癖に都合が悪いことは隠しやがって』
またかー、ほんとこの学校クソだな。
と、聞いていく内に思わぬ収穫があった。
悪魔やハーフ、そして人外達の人間界での歴史を聞くことが出来たのだ。
彼らは種族によって身体的な特徴を持っているそうだ。
例えば悪魔は耳が尖っていて長く、天使は金髪が多いなど……特徴を曝け出してしまえば人間達は畏怖する。
最初の内は共存出来ていた者達もいたらしいが、後に出来たハーフの子孫に問題があった。
問題が本人にあったかというとそうではなく、遺伝子による差異が僕達人間にとっては問題になり得たのだ。
魔法が使える、
創造力が使える、
死神の目が使える……見た目にも隠さなければならない箇所が出てきたり。
過去に行われていた魔女狩りというのはハーフ狩りのこと、どちらにも忌み嫌われる存在でありやすいこと。
でも、頑なに殺そうとするのは人間に多く、人外たちは戦闘で解決することが多かったんだとか。
長く続いているハーフの歴史の影響は根深いもので、彼は悪魔の先生にしつこく難癖を付けられ、人間にも陰口を言われていた。
理由はたった一つ、「色が見える」からだ。
魂の色が見えるから、死ぬ前まではそれをなんとなく良いものだと思っていたと彼は語った。
教えられていなかったんだと。
死神の血を引いているということも、魂の色が見えるのは人間や他の種族には無いことも。
だから彼はそれまで自分自身を人間だと信じて疑わなかった。
その教師が来てから初めて自身の出生を疑い、死んだ後に種族のことを知り、普通では無かったと思い知らされた。
教師が生徒を殺したって言えば教室なのかもしれないが、一通り近くにある教室へ寄っても誰も(?)居なかった。かといって他のはどうかと考えてみても場所のヒントが無ければ探しようが無い。
さてどうしたものかと頭を悩ませている内に閃いたのは
「ネト友に助言を求めればいいのでは?」
ということ。
普段から作業に追われててホラーに飢えている野良猫ろんちゃんならきっと……食いついてくれるに違いない!
速やかにちみほを取り出して電源を入れ、ライソで飛ばす。
『ろんちゃんろんちゃん!!』
『どうした~~』
『気分転換にホラー話で推理して欲しい』
『何それ面白そう。乗った』
『──って感じの奴なんだけどこれ4以降さ……場所分かんなくて……』
『あー、へー。その分だと生徒が殺された場所考えた方が何かあるかもね! から4は教室とか授業出来るとことかだと思うよー』
『な、なるほど……!!!流石ろんちゃん』
『後ぱんださん同じ学校じゃない?』
『へ????』
手が止まった。
マジ……?
画面を覗き込んできたブラビットは
「同じ学校ならリアルでご友人になればよろしいのでは?」
と言ってきたがいや、いやそれは。
よく考えてみてほしい、黒兎赤が中の人だと分かった瞬間に幻滅する瞬間を。可能性を。
中の人が分かった時点で
「ああ、あの噂の」
と避けられてプレイズされ挙句の果てにはアカウントまで晒されて逃げ場が完全に無くなるかもしれない、そういう可能性を……!
などと言い訳を重ねては既読を付けて返信しなかった為、向こうから
『ごめんリアルとネットは別々で扱いたいよね、無神経だった。忘れて』
と返ってきて申し訳ない思いに駆られた。
でもホッとしている自分がいるのも分かる。前より臆病になったことは認めよう、
だってリアル怖い。
「…………」
彼女からの視線が痛い。
「ま、まーとりあえず次ミーティングルームとか行ってみようかー」
ちゃんと
『いやこっちこそごめん! ネットはネットで完結させたい派だからびっくりしちゃって』
と言っておいたので大丈夫です。
大丈夫です、……多分。
くっそ通知来てビビったけどこれハニーマートのメルマガだ。くそうメルマガめ。
罪の無いコンビニエンス・ストアに八つ当たりしながら移動していくこと数十分。
音楽室から理科室へと寄り、何も無かったからと別棟にあるミーティングルームへ赴いた。
息を整え速やかに小窓から状況確認。
右良し左良しオールオッケー、よし行こう。
小刻みな動きをする手を見ないふり、誰もが皆意地を張りたくなる場面はあることだろう。
僕はブラビットと二人きりの今がそうです。
意地を張って少しでも格好良く映りたいお年頃なのだと室内へ入り込めば、そこは静寂に包まれているだけで、特に何も無さそうだった。何だ何も無いのか──と次へ移ろうとする、その瞬間。
間を置かずに聞こえてきたのは背後から響く、誰かがすすり泣く声。
あまりにも物寂しそうな声をするもんだから今ばかり情が移りそうになってしまう。
いけない、どんな幽霊か分からない内に同情なんて……すぐ考えを改めようとしたが、それでも聞こえる
「どうせ」
と
「俺なんて」
という悲壮感溢れる声は、僕の気を引くに十分すぎた。
だからだろう、自然と背後へ振り返れたのだ。
「……君が殺されちゃった生徒さん?」
声を掛ければ先程の悪魔より透けている赤いショートに少し切れ長の青い瞳を持った少年が、そこにいた。
『見えるのか』
そう言葉を発する彼から感じられるのは不安、疑念、期待が入り混じった感情だった。
推察するに、訴えることをしたかったのに出来なかった、とか現実への失望を抱いているように見受けられる。
幸か不幸か、僕は幽霊が見える体質らしい!(嬉しくない)
これを機に霊媒師でも始めようかな、始めないけど……昔からこういった職業があることを考えれば自ずと、自分が思っているよりも遥かに人外の関わりは根深いものだと分かるものだ。前はそれを良いことだと捉えていたが、単純にそれだけでは収まらない事例があるのだとなんとなく気付き始めていた。
近くにあるパイプ椅子へ腰を下ろし、慣れない一人称を使い口から出任せを並べていく。
「見えるよ? 生憎、ぼ……俺はここに、あー。気付かない内に彼女と閉じ込められちゃってね。出れるようになるまで暇だからこの学校に伝わってる噂話を調べてるんだ。所謂自由研究って奴」
事実最初は閉じ込められたことがきっかけだったのだし、嘘は言っていない。
二人きりという状況を再認識してにやけていたのかもしれない、
「これだからデートスポット代わりに使う奴は」
とお咎めの発言が飛び交う。
デート=カップル認識されてる!
と舞い上がる僕の制服を見て不可抗力で、という点は信じて貰えたようだ。
「貴方、死神の者ですか」
え、嘘? 死神じゃ同業者じゃ、とは思ったものの反応を見るに違うようだ。
彼は首を横に振って「死神の血は引いている」とぶっきらぼうに答える。
つまりハーフか。
あの悪魔の子といいなんなんだこの学校!
人外にとって環境悪すぎたんじゃねえの! と思わざるを得ない。
問題無いフリをしただけのハリボテの良さなんて要らないのに、世の中どうも塗り固めるだけの工事ばかりを上手くやる。
不満を溜め込みがら問う。
「君は多分この四つ目の『悪魔の教師が生徒を呪って殺した』っていう噂の子だよね? どうして死んじゃったのか訊いても良い……?」
『は? 呪い? ふざけんな、最初に先生を煽ったのは生徒だ。共犯者の癖に都合が悪いことは隠しやがって』
またかー、ほんとこの学校クソだな。
と、聞いていく内に思わぬ収穫があった。
悪魔やハーフ、そして人外達の人間界での歴史を聞くことが出来たのだ。
彼らは種族によって身体的な特徴を持っているそうだ。
例えば悪魔は耳が尖っていて長く、天使は金髪が多いなど……特徴を曝け出してしまえば人間達は畏怖する。
最初の内は共存出来ていた者達もいたらしいが、後に出来たハーフの子孫に問題があった。
問題が本人にあったかというとそうではなく、遺伝子による差異が僕達人間にとっては問題になり得たのだ。
魔法が使える、
創造力が使える、
死神の目が使える……見た目にも隠さなければならない箇所が出てきたり。
過去に行われていた魔女狩りというのはハーフ狩りのこと、どちらにも忌み嫌われる存在でありやすいこと。
でも、頑なに殺そうとするのは人間に多く、人外たちは戦闘で解決することが多かったんだとか。
長く続いているハーフの歴史の影響は根深いもので、彼は悪魔の先生にしつこく難癖を付けられ、人間にも陰口を言われていた。
理由はたった一つ、「色が見える」からだ。
魂の色が見えるから、死ぬ前まではそれをなんとなく良いものだと思っていたと彼は語った。
教えられていなかったんだと。
死神の血を引いているということも、魂の色が見えるのは人間や他の種族には無いことも。
だから彼はそれまで自分自身を人間だと信じて疑わなかった。
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