1話5分でゾッと出来る話。短編ホラー集。短編怖い話は、そこにある

みにぶた🐽

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第24話「繰り返す死の夢」怖さ:☆☆☆☆☆

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 また、死んだ。

 今度は電車に轢かれた。ホームで電車を待っていたら、突然背中を押されて線路に落ちた。振り返る間もなく、巨大な鉄の塊が俺の体を粉砕した。

 痛みは一瞬だった。そして、俺は目を覚ました。

 ベッドの上で、冷や汗をかきながら。

 時計を見ると、午前六時ちょうど。いつもと同じ時間だ。

 これで何回目だろう。

 最初は心臓発作だった。会社で残業中、突然胸が締め付けられて、そのまま倒れた。

 二回目は交通事故。横断歩道を渡っているときに、猛スピードの車に跳ね飛ばされた。

 三回目は階段から転落。アパートの階段を降りているときに足を滑らせ、頭から落ちた。

 四回目は火事。自宅が燃えて、煙に巻かれて窒息した。

 そして今回の電車事故で五回目。

 毎晩、俺は違う方法で死ぬ夢を見る。そして、必ず午前六時に目を覚ます。

 最初は単なる悪夢だと思っていた。ストレスからくる不眠症の症状だろうと。

 しかし、三回目あたりから気づいた。

 夢で死んだ人が、現実に死んでいることに。

 心臓発作の夢を見た翌日、ニュースで同僚の田村さんが急性心筋梗塞で亡くなったと報じられた。

 交通事故の夢を見た翌日、近所の主婦が車に轢かれて死んだ。

 階段からの転落、火事による窒息死。すべて、俺が夢で体験した死に方と同じだった。

 そして今日。

 俺は震えながらニュースを確認した。

 案の定、電車事故のニュースが流れていた。飛び込み自殺として処理されているが、俺には分かる。あれは事故だった。誰かに押されたのだ。

 俺の夢の通りに。

 なぜ俺の夢が現実になるのか。なぜ俺は他人の死を体験するのか。

 考えれば考えるほど、恐ろしくなった。

 そして今夜も、俺は眠らなければならない。また誰かの死を体験するために。

 午後十一時。俺はベッドに横になった。

 今度はどんな死に方だろう。溺死か、毒殺か、それとも……。

 目を閉じると、すぐに夢の世界に引き込まれた。

 今度は古いビルの屋上にいた。

 夜景が美しく見える高層階。風が強く、髪が乱れる。

 俺は手すりの近くに立っていた。なぜかスーツを着ている。普段着ないような、高級そうなスーツだった。

 ポケットに手を入れると、封筒が入っていた。

 開けて読むと、解雇通知書だった。会社をクビになったのだ。

 絶望感が襲ってくる。家族を養えない。ローンも払えない。もう終わりだ。

 気がつくと、俺は手すりを乗り越えていた。

 足元には何もない。遥か下に見えるのは、小さく光る街の明かりだけ。

 風の音が耳を叩く。

 そして、俺は落ちた。

 長い、長い落下。恐怖と後悔が交錯する中で、俺は地面に激突した。

 午前六時。目覚ましの音で目を覚ました。

 また死んだ。今度は飛び降り自殺だった。

 俺は急いでテレビをつけた。ニュースを確認するために。

 しかし、飛び降り自殺のニュースは流れなかった。

 一時間経っても、二時間経っても、そんなニュースは出てこない。

 おかしい。いつもなら、俺が夢で体験した死に方で誰かが死ぬはずなのに。

 夕方になっても、夜になっても、飛び降り自殺のニュースはなかった。

 俺は安堵した。ついに、この呪いのような連鎖が断ち切れたのかもしれない。

 しかし、深夜のニュースで、俺は愕然とした。

 昨夜、高層ビルから飛び降りて自殺した男性の身元が判明したというニュースが流れた。

 その男性の名前は、俺の名前だった。

「山田雄一さん(二十八歳)会社員」

 画面に映る写真は、間違いなく俺だった。

 俺は鏡を見た。確かに俺がそこにいる。生きている。

 でも、テレビの中では俺が死んでいる。

 どういうことだ。

 その時、携帯電話が鳴った。

 母からだった。

「雄一……本当に死んじゃったの? ニュース見たわよ……」

 母は泣いていた。

「母さん、俺は生きてるよ。ここにいるよ」

「何を言ってるの……あなたはもう……」

 電話が切れた。

 俺は慌てて外に出た。

 アパートの前に、パトカーが停まっていた。

 警察官が大家さんと話している。

「山田雄一さんの部屋なんですが、遺族の方が荷物を取りに来られるそうで……」

 俺は警察官に駆け寄った。

「何をしてるんですか! 俺は生きてますよ!」

 しかし、警察官は俺を見ることができなかった。

 俺の声も聞こえていない。

 大家さんも、俺の存在に気づかない。

 俺は理解した。

 昨夜の夢は、俺自身の死だったのだ。

 他人の死を体験していたのではなく、俺は毎晩、自分の死に方の予行練習をしていたのだ。

 そして、ついに本当の死を迎えた。

 でも、なぜ俺はまだここにいるのか。

 答えはすぐに分かった。

 今夜も、俺は眠らなければならない。

 また誰かの死を体験するために。

 俺は死んだが、この呪いは終わらない。

 今度は、俺が他の誰かに死の夢を見させる番なのだ。

 遠くで、誰かがベッドに横になる気配を感じた。

 新しい被害者が、夢の世界で俺を待っている。

 俺は微笑んだ。

 今度は、どんな死に方を体験させてやろうか。
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