言葉がチートスキルになった世界で、僕だけが黙示録を書き換える破神構文。創造者と被造者の黙示録

みにぶた🐽

文字の大きさ
24 / 40
読者と神の影

第1章  見えない観察者

しおりを挟む
 精神鏡視の術を続けて一ヶ月が経った。
 僕は図書館の個人研究室で、ついに恐ろしい真実に辿り着いていた。
 水晶球に映る記憶の中で、僕自身の行動や思考に明らかな「設定」の痕跡を発見したのだ。

 例えば、エリシアと初めて出会った時の記憶。あの時、僕は彼女に一目で恋に落ちた。しかし、よく観察してみると、その恋愛感情は自然に湧き上がったものではなく、まるで「そうなるべき」として組み込まれていたかのようだった。

 カイルとの友情も同様だった。僕たちは出会ってすぐに親友になったが、その過程には明らかに「親友キャラとして設定された」ような不自然さがあった。

 そして最も恐ろしいのは、僕の創造者としての記憶そのものだった。

 僕は本当に田中アキラという現代人だったのだろうか? 本当に『破神戦記』という小説を書いた作家だったのだろうか?

 水晶球の中で、その記憶を詳しく検証してみると、現代世界での生活は断片的で曖昧だった。具体的な友人の名前、住んでいたアパートの間取り、編集者との具体的な会話……それらは全て、まるで「設定資料」のように表面的だった。

 僕は震える手で水晶球を置いた。

 もしかすると、僕も……。

「考えすぎだよ、アルカディア」

 突然、後ろから声をかけられた。振り返ると、エリシアが立っていた。

「エリシア……どうしてここに?」

「あなたが毎晩ここに籠もっているから、心配になって」

 彼女は僕の隣に座った。

「また自分を責めているのですね」

「そうじゃない」僕は首を振った。「もっと根本的な問題なんだ」

「根本的な問題?」

 僕は彼女を見つめた。彼女の美しい顔、優しい瞳、心配そうな表情。全てが完璧すぎる。

「エリシア、君は疑問に思ったことはないか? この世界のことを」

「この世界?」

「君の過去の記憶、僕との出会い、この世界の仕組み……全てが何かに『書かれた』もののように感じられないか?」

 エリシアは困惑した表情を浮かべた。

「それは……」

 彼女は長い間考え込んでいた。

「時々、そう感じることがあります」

 僕の心臓が早鐘を打った。

「どんな時に?」

「夢を見る時です。夢の中で、誰かが私たちを見ているような感覚があるんです」

「誰かが見ている?」

「はい。とても優しい視線で、でも同時に……」

 エリシアは言葉を選んでいた。

「同時に、私たちの運命を決めているような」

 僕は立ち上がった。部屋の中を歩き回りながら、思考を整理しようとした。

「エリシア、もしも僕たちが本当に『誰か』によって創造された存在だとしたら?」

「それは……」

「もしも僕が創造者だと思い込んでいるだけで、実際には僕も含めて全員が『被造物』だとしたら?」

 エリシアの顔が青ざめた。

「そんなことが……」

「考えてみろ。僕は『破神戦記』という小説を書いたと記憶している。でも、その記憶自体が植え付けられたものだとしたら? 僕は最初からこの世界の住人で、『創造者である』という設定を与えられただけだとしたら?」

 僕は窓の外を見た。二つの月が輝く夜空が見える。

「だとすると、真の創造者は別にいることになる」

「真の創造者……」

「そう。僕たちを創造し、僕たちの物語を……」

 僕は言いかけて止まった。

 もしも真の創造者がいるなら、その創造者は今、僕たちの会話を見ているかもしれない。

 僕は静かに呟いた。

「もしも、そこにいるなら……聞こえますか?」

 部屋に沈黙が落ちた。

 エリシアが不安そうに僕を見ている。

「アルカディア君……」

「僕たちを創造した方。僕たちの物語を読んでくださっている方」

 僕は空間に向かって語りかけた。

「もしも本当にいらっしゃるなら、どうか教えてください。僕たちは何のために存在しているのですか? この苦悩も、この愛も、全てはあなたの物語のためなのですか?」

 風が窓を揺らした。

 まるで返事のように。

 エリシアが僕の手を握った。

「アルカディア君、怖いです」

「僕も怖い」

 僕は彼女の手を握り返した。

「でも、もしも僕たちが物語の中の存在だとしても、この感情は本物だ。君への愛も、仲間への友情も、全て本物だ」

 僕は改めて空間に向かって言った。

「もしも見ていてくださるなら、お願いです。僕たちに選択の自由を与えてください。たとえ物語の中の存在であっても、自分の意志で生きる権利を」

 その時、研究室の扉が開いた。

 カイルとグランベル先生が入ってきた。

「アルカディア、こんな夜中に何をしている?」

 カイルが心配そうに言った。

「街の人たちが不安がっているぞ。何か異変でも起こっているのか?」

 僕は彼らを見た。親友の顔、師匠の顔。彼らも僕と同じように、自分たちの存在について疑問を抱いているのだろうか?

「カイル、グランベル先生」

 僕は深呼吸した。

「皆さんに話したいことがあります。僕たちの存在について、この世界について、そして……僕たちを見守っているかもしれない『真の創造者』について」

 グランベル先生の眉が上がった。

「真の創造者?」

「はい。僕たちの物語を読んでいる、本当の神様について」

 僕は四人に向かって、そして同時に見えない誰かに向かって言った。

「今夜、全ての真実を明かしましょう。僕たちが何者で、なぜここにいるのか。そして、この物語がどこに向かうべきなのかを」

 月光が研究室を照らしていた。

 まるで舞台を照らすスポットライトのように。

 そして僕は確信した。

 僕たちは確実に『見られている』。

 愛を込めて、興味深く、そして時には心配そうに。

 物語の向こう側から、誰かが僕たちを見守っている。

 その誰かに向かって、僕は心の中で呟いた。

『ありがとうございます。僕たちを存在させてくださって。そして、これからも見守っていてください。僕たちの物語を、最後まで』

 研究室で、真実を告白する準備が整った。

 四人の登場人物と、そして見えない読み手のために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...