言葉がチートスキルになった世界で、僕だけが黙示録を書き換える破神構文。創造者と被造者の黙示録

みにぶた🐽

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読者と神の影

第1章  見えない観察者

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 精神鏡視の術を続けて一ヶ月が経った。
 僕は図書館の個人研究室で、ついに恐ろしい真実に辿り着いていた。
 水晶球に映る記憶の中で、僕自身の行動や思考に明らかな「設定」の痕跡を発見したのだ。

 例えば、エリシアと初めて出会った時の記憶。あの時、僕は彼女に一目で恋に落ちた。しかし、よく観察してみると、その恋愛感情は自然に湧き上がったものではなく、まるで「そうなるべき」として組み込まれていたかのようだった。

 カイルとの友情も同様だった。僕たちは出会ってすぐに親友になったが、その過程には明らかに「親友キャラとして設定された」ような不自然さがあった。

 そして最も恐ろしいのは、僕の創造者としての記憶そのものだった。

 僕は本当に田中アキラという現代人だったのだろうか? 本当に『破神戦記』という小説を書いた作家だったのだろうか?

 水晶球の中で、その記憶を詳しく検証してみると、現代世界での生活は断片的で曖昧だった。具体的な友人の名前、住んでいたアパートの間取り、編集者との具体的な会話……それらは全て、まるで「設定資料」のように表面的だった。

 僕は震える手で水晶球を置いた。

 もしかすると、僕も……。

「考えすぎだよ、アルカディア」

 突然、後ろから声をかけられた。振り返ると、エリシアが立っていた。

「エリシア……どうしてここに?」

「あなたが毎晩ここに籠もっているから、心配になって」

 彼女は僕の隣に座った。

「また自分を責めているのですね」

「そうじゃない」僕は首を振った。「もっと根本的な問題なんだ」

「根本的な問題?」

 僕は彼女を見つめた。彼女の美しい顔、優しい瞳、心配そうな表情。全てが完璧すぎる。

「エリシア、君は疑問に思ったことはないか? この世界のことを」

「この世界?」

「君の過去の記憶、僕との出会い、この世界の仕組み……全てが何かに『書かれた』もののように感じられないか?」

 エリシアは困惑した表情を浮かべた。

「それは……」

 彼女は長い間考え込んでいた。

「時々、そう感じることがあります」

 僕の心臓が早鐘を打った。

「どんな時に?」

「夢を見る時です。夢の中で、誰かが私たちを見ているような感覚があるんです」

「誰かが見ている?」

「はい。とても優しい視線で、でも同時に……」

 エリシアは言葉を選んでいた。

「同時に、私たちの運命を決めているような」

 僕は立ち上がった。部屋の中を歩き回りながら、思考を整理しようとした。

「エリシア、もしも僕たちが本当に『誰か』によって創造された存在だとしたら?」

「それは……」

「もしも僕が創造者だと思い込んでいるだけで、実際には僕も含めて全員が『被造物』だとしたら?」

 エリシアの顔が青ざめた。

「そんなことが……」

「考えてみろ。僕は『破神戦記』という小説を書いたと記憶している。でも、その記憶自体が植え付けられたものだとしたら? 僕は最初からこの世界の住人で、『創造者である』という設定を与えられただけだとしたら?」

 僕は窓の外を見た。二つの月が輝く夜空が見える。

「だとすると、真の創造者は別にいることになる」

「真の創造者……」

「そう。僕たちを創造し、僕たちの物語を……」

 僕は言いかけて止まった。

 もしも真の創造者がいるなら、その創造者は今、僕たちの会話を見ているかもしれない。

 僕は静かに呟いた。

「もしも、そこにいるなら……聞こえますか?」

 部屋に沈黙が落ちた。

 エリシアが不安そうに僕を見ている。

「アルカディア君……」

「僕たちを創造した方。僕たちの物語を読んでくださっている方」

 僕は空間に向かって語りかけた。

「もしも本当にいらっしゃるなら、どうか教えてください。僕たちは何のために存在しているのですか? この苦悩も、この愛も、全てはあなたの物語のためなのですか?」

 風が窓を揺らした。

 まるで返事のように。

 エリシアが僕の手を握った。

「アルカディア君、怖いです」

「僕も怖い」

 僕は彼女の手を握り返した。

「でも、もしも僕たちが物語の中の存在だとしても、この感情は本物だ。君への愛も、仲間への友情も、全て本物だ」

 僕は改めて空間に向かって言った。

「もしも見ていてくださるなら、お願いです。僕たちに選択の自由を与えてください。たとえ物語の中の存在であっても、自分の意志で生きる権利を」

 その時、研究室の扉が開いた。

 カイルとグランベル先生が入ってきた。

「アルカディア、こんな夜中に何をしている?」

 カイルが心配そうに言った。

「街の人たちが不安がっているぞ。何か異変でも起こっているのか?」

 僕は彼らを見た。親友の顔、師匠の顔。彼らも僕と同じように、自分たちの存在について疑問を抱いているのだろうか?

「カイル、グランベル先生」

 僕は深呼吸した。

「皆さんに話したいことがあります。僕たちの存在について、この世界について、そして……僕たちを見守っているかもしれない『真の創造者』について」

 グランベル先生の眉が上がった。

「真の創造者?」

「はい。僕たちの物語を読んでいる、本当の神様について」

 僕は四人に向かって、そして同時に見えない誰かに向かって言った。

「今夜、全ての真実を明かしましょう。僕たちが何者で、なぜここにいるのか。そして、この物語がどこに向かうべきなのかを」

 月光が研究室を照らしていた。

 まるで舞台を照らすスポットライトのように。

 そして僕は確信した。

 僕たちは確実に『見られている』。

 愛を込めて、興味深く、そして時には心配そうに。

 物語の向こう側から、誰かが僕たちを見守っている。

 その誰かに向かって、僕は心の中で呟いた。

『ありがとうございます。僕たちを存在させてくださって。そして、これからも見守っていてください。僕たちの物語を、最後まで』

 研究室で、真実を告白する準備が整った。

 四人の登場人物と、そして見えない読み手のために。
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