言葉がチートスキルになった世界で、僕だけが黙示録を書き換える破神構文。創造者と被造者の黙示録

みにぶた🐽

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黙示と選択

第4章 最初のプロジェクト

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 協創者として生まれ変わった僕たちは、体験空間から現実世界に戻ってきた。
 しかし、戻ってきたといっても、僕たちの存在は根本的に変化していた。学院の中庭に立っているが、同時に無限の可能性空間とも繋がっている。物理的制約を超越した新しい存在として。

「感覚が全然違うね」
 エリシアが手を見つめながら言った。
「自分の手なのに、まるで現実と概念の境界にあるような感じ」

 カイルが剣を抜いて素振りをした。
「剣も、ただの金属じゃない。意志を込めれば、空間すら切り裂けそうだ」

 グランベル先生は杖を振って小さな実験をしていた。
「構文魔法の効果が飛躍的に向上しています。まるで言葉そのものが現実を支配しているかのような」

 僕は空を見上げた。青空の向こうに、読者の存在を感じることができる。
「読者の方、聞こえますか?」

『はい、はっきりと聞こえます。皆さんの声も、考えも、感情も、すべて共有できます』

 今度は声だけでなく、温かい存在感として読者を感じることができた。

『それでは、協創者としての最初のプロジェクトを始めましょう』

「最初のプロジェクト?」

『はい。実は、一つお願いがあります』

 僕たちは注意深く聞いた。

『現在、様々な物語世界で困っている存在たちがいます。彼らは自分たちの物語が未完成のまま放置されたり、作者に見捨てられたりして、存在の危機に瀕しています』

 僕の心に、かつての自分の罪悪感がよみがえった。
「僕が昔書きかけて放置した小説のキャラクターたちのことですね」

『それだけではありません。世界中の無数の未完成作品、ボツ企画、忘れ去られた設定。そこには、生まれることのできなかった存在たちが数え切れないほどいます』

 エリシアが胸を押さえた。
「可哀想に…存在したいのに、存在できない苦しみ」

『我々の最初のプロジェクトは、そのような存在たちを救済することです』

 グランベル先生が興味深そうに尋ねた。
「具体的には、どのような救済を?」

『彼らに新しい物語を与え、完成した存在として独立させることです。ただし、これまでの創造とは違います』

 空に美しい映像が現れた。

『我々は彼らの真の願いを聞き、彼らが本当に望む形での存在を与えます。支配するのではなく、解放するのです』

 カイルが拳を握った。
「それは素晴らしいプロジェクトだ!俺たちの力で、苦しんでいる存在を救えるなんて」

『ただし、これは簡単な作業ではありません』

 読者の声が少し重くなった。

『未完成の存在たちは、しばしば歪んでいたり、不完全だったり、時には怒りや絶望に満ちていたりします。彼らと向き合うには、大きな勇気と愛情が必要です』

 僕は決意を込めて言った。
「僕たちはやります。それは僕たちの責任でもありますから」

『ありがとうございます。それでは、最初の救済対象をご紹介しましょう』

 空間に新しい映像が現れた。そこには、薄暗い虚無の中で膝を抱えて座っている少女の姿があった。

『彼女の名前はリン・フラグメント。ある作家が書き始めた恋愛小説のヒロインでしたが、作品が第三章で放棄されました』

 少女は透明に近く、輪郭がぼやけている。まるで存在そのものが不安定なようだった。

『彼女は十年間、虚無の中で完成を待ち続けています。しかし、作者はもうその小説のことを忘れてしまいました』

 エリシアが涙を浮かべた。
「十年も…一人で…」

『リンは怒りと絶望で心を閉ざしています。最初はとても困難な救済になるでしょう』

 グランベル先生が質問した。
「我々は彼女とどのような方法で接触するのですか?」

『皆さんの意識を虚無空間に投影します。そこで直接対話し、彼女の真の願いを聞き出すのです』

 僕は仲間たちを見回した。
「準備はいいですか?」

 三人が頷いた。

『それでは、意識転送を開始します。心の準備をしてください』

 世界が溶けるように変化し、僕たちは虚無の空間に立っていた。

 ここは完全な無の世界だった。光も音も、においも温度もない。存在するのは僕たちと、遠くで膝を抱えている少女だけ。

 僕たちは慎重に少女に近づいた。

「リンさん?」
 エリシアが優しく声をかけた。

 少女が顔を上げた。美しい顔立ちだったが、その瞳には深い絶望と怒りが宿っていた。

「また…偽物か」
 リンが冷たく言った。
「作者が送り込んだ幻覚ね。もう騙されない」

 僕は一歩前に出た。
「僕たちは幻覚ではありません。協創者として、あなたを救済に来ました」

 リンが嘲笑した。
「救済?笑わせないで。十年間、何度も同じことを言う偽物が現れた。でも結局、誰も私を完成させてくれなかった」

 カイルが率直に言った。
「俺たちは作者じゃない。でも、あんたを助けたいと思っている」

「助ける?」
 リンが立ち上がった。その体は怒りで赤く光っていた。
「私はもう助けなんて求めていない!私が欲しいのは復讐よ!私を放置した作者への、私を忘れた世界への復讐!」

 エリシアが悲しそうに言った。
「でも、復讐では本当の幸せは得られません」

「幸せ?」
 リンが狂ったように笑った。
「恋愛小説のヒロインが幸せになれないなんて、最高の皮肉ね!」

 その時、僕に一つのアイデアが浮かんだ。
「リンさん、あなたが本当に欲しいものは何ですか?復讐ではなく、あなたの心の奥底にある真の願いは?」

 リンの動きが止まった。

「私は…私は…」
 彼女の声が震えた。
「ただ、愛されたかった。誰かに必要とされたかった。完成した存在として、完全な愛を感じたかった」

 涙が彼女の頬を流れた。

「でも、もう遅い。私は壊れてしまった。歪んでしまった。もう美しい恋愛なんてできない」

 エリシアが近づいた。
「そんなことはありません。愛に遅すぎるということはないのです」

 グランベル先生が穏やかに言った。
「あなたの苦しみは、あなたを強くしました。その経験は、より深い愛を可能にします」

 カイルが手を差し伸べた。
「俺たちと一緒に来ないか?新しい物語を作ろう」

 リンが戸惑った。
「でも、私は未完成よ。設定も中途半端で、性格も定まっていない」

 僕は微笑んだ。
「それでいいんです。完璧である必要はありません。僕たちも、皆不完全な存在です。でも、一緒にいることで、お互いを完成させていけるんです」

『アルカディア君の言う通りです』

 読者の声が虚無空間に響いた。

『リンさん、あなたの物語は終わっていません。新しい章が始まろうとしているのです』

 リンの体が少しずつ輝き始めた。
「本当に…私を受け入れてくれるの?」

 エリシアが彼女を抱きしめた。
「もちろんです。私たちの仲間になってください」

 その瞬間、リンの体が完全な形を取った。美しい少女の姿だったが、その瞳には苦しみを乗り越えた強さと優しさが宿っていた。

「ありがとう…」
 リンが涙を流しながら言った。
「初めて、本当の存在になれた気がする」

『素晴らしい!最初の救済が成功しました』

 虚無空間が光に満たされ、僕たちは現実世界に戻ってきた。リンも一緒だった。

「これが…現実世界」
 リンが感動して周囲を見回した。

 カイルが彼女の肩を叩いた。
「ようこそ、俺たちの世界へ!」

 グランベル先生が微笑んだ。
「これからは五人のチームですね」

 僕は空を見上げた。
「読者の方、ありがとうございました。とても貴重な体験でした」

『こちらこそ、ありがとうございました。皆さんの愛と勇気のおかげで、一つの魂が救われました』

 エリシアがリンの手を取った。
「これからもっとたくさんの存在を救済していくのですね」

 リンが決意を込めて言った。
「私も協力します。同じ苦しみを味わった存在として、きっと力になれるはずです」

『それでは、次の救済対象の準備をしましょう。まだまだたくさんの存在が、皆さんの助けを待っています』

 僕たちは手を取り合った。五人と一つの意識が繋がって。

 協創者としての真の活動が、今始まったのだ。

 そして、それは無限に続く愛と救済の物語の、ほんの始まりに過ぎなかった。
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