告発ゲーム

みにぶた🐽

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第1章 招かれざる客たち

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船が島に近づくにつれて、蓮の胸の奥で何かが蠢いていた。

「心理ケア合宿プログラム」——そんな聞こえの良い名前に騙されて、こんな何もない島まで来てしまった自分が馬鹿だったのかもしれない。母親の「あなたのためよ」という言葉と、大学のカウンセラーの「良い機会だと思うよ」という勧めに押し切られて、気がついたらここにいる。

蓮は甲板に立ち、潮風に黒髪を揺らしながら島を見つめていた。19歳になった今でも、3年前の出来事が心に重くのしかかっている。あの時、自分は正しいことをしたつもりだった。高校1年生の正義感から、匿名掲示板で先輩のいじめを告発した。しかし、その告発は無実の人を巻き込み、取り返しのつかない結果を招いてしまった。

緑豊かで美しい島だが、どこか人工的な匂いがする。建物が規則正しく配置され、あまりにも整然としすぎていた。

「初めまして」

振り返ると、同年代くらいの少女が立っていた。肩まで伸びた栗色の髪を風になびかせ、上品な笑みを浮かべている。制服のような白いブラウスとプリーツスカートが、彼女の清楚な印象を際立たせていた。

「僕も初めまして。蓮です」

「奈々です。よろしくお願いします」

彼女の笑顔は完璧すぎて、蓮は少し違和感を覚えた。まるで鏡に映った自分の笑顔を何度も練習したような、そんな人工的な美しさがあった。

「同じプログラムの参加者ですか?」蓮が尋ねると、奈々は小さく頷いた。

「みんな、それぞれ事情があるみたいですね」

奈々の言葉に、蓮の胸がちくりと痛んだ。自分の「事情」——あの匿名掲示板での出来事を思い出しそうになって、慌てて頭を振る。あれは正しいことをしただけだ。いじめを告発したのは間違っていない。たとえ結果的に関係ない人が巻き込まれてしまったとしても、それは仕方のないことだったのだ。

甲板の向こうで、大柄な青年が一人で海を見つめていた。日焼けした肌と鋭い目つき、そして拳に刻まれた小さな傷跡が、彼の過去を物語っているようだった。拓海と名乗ったその青年は20歳くらいに見えた。蓮たちの会話を聞いていたのか、こちらを振り返った。

「俺は拓海だ」

低く野太い声だった。笑いもしなければ、敵意も見せない。ただ淡々と事実を述べるような口調で、蓮は本能的に警戒心を抱いた。

船が港に接岸すると、次々と参加者たちが姿を現した。

美咲と名乗った少女は、完璧に整えられた黒髪とメイク、隙のない立ち振る舞いで、まるでファッション雑誌から抜け出てきたようだった。19歳という年齢の割には大人びており、その完璧さの裏に、何かを必死に隠そうとする焦燥感が透けて見えた。

雪菜は小柄で華奢な18歳の少女で、常に俯き加減で、人と目を合わせることを避けているようだった。彼女の細い腕には、長袖で隠そうとしても見える小さな傷跡があり、蓮の胸が締め付けられた。

健太は21歳で人懐っこい笑顔を振りまいていたが、その笑顔がどこか営業的で、蓮は直感的に信用してはいけない人間だと感じた。話し方も巧みで、初対面の相手でも瞬時に距離を縮める術を心得ているようだった。

莉子は群を抜いて美しい22歳の女性で、その美貌を自覚しているかのように、計算された仕草と表情を見せていた。しかし、その美しい瞳の奥に、氷のような冷たさが宿っているのを蓮は見逃さなかった。

大輔は眼鏡をかけた真面目そうな男性で、参加者の中では最年長の28歳だった。他の参加者とは明らかに違う重みを感じさせていた。その整った顔には深い疲労の色が浮かんでおり、まるで長い間眠れない夜を過ごしてきたような影があった。

千尋は蓮と同じ19歳に見える少女で、スマートフォンを片時も離さず、常に画面を見つめていた。指の動きは異常に早く、まるで機械のようにタイピングし続けている。

翔太は20歳の痩せ型の青年で、落ち着きがなく、常にそわそわとしていた。時折、ポケットに手を突っ込んで何かを確認するような仕草を見せ、蓮はそれが依存症特有の行動パターンだと直感した。

沙織は21歳で、看護師を目指しているのか、清潔感のある白いカーディガンを着ていた。しかし、その手は微かに震えており、蓮と目が合うと慌てたように視線を逸らした。

亮介は背が高く、25歳でスーツを着込んだ姿は若手の会社員といった印象だった。年齢相応の威圧感があったが、その裏に何かを恐れているような緊張感が漂っていた。

圭は19歳で最も目立たない存在で、まるで空気のように存在感を消していた。話しかけられても小さく頷くだけで、自分から発言することはほとんどなかった。

十三人の参加者が港に集まったとき、蓮は改めて違和感を覚えた。年齢層が18歳から28歳に分散しているものの、大半が19歳前後で、それぞれに何かを抱えているような雰囲気がある。本当に偶然集まった心理ケアプログラムの参加者なのだろうか。

「皆さん、お疲れ様でした」

突然、スピーカーから声が響いた。機械的な音声変換がかけられており、性別も年齢も判別できない。

「これより、皆さんを宿泊施設にご案内いたします。荷物を持って、指定されたルートに従ってください」

蓮は小さなバッグを肩にかけ、他の参加者たちと共に歩き始めた。島の中央部に向かう道は舗装されており、両側には美しい花壇が整備されていた。しかし、どこを見回しても島の外界との連絡手段は見当たらない。船は既に港を離れ、水平線の彼方に消えていた。

「綺麗な島ですね」奈々が隣を歩きながら言った。

「うん、でも少し静かすぎるような気がする」蓮は答えた。

確かに美しい島だった。しかし、鳥の鳴き声も虫の音も聞こえず、不自然なほど静寂に包まれていた。まるで作り物の楽園のような、そんな印象を蓮は抱いていた。
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