12 / 15
第12章 復讐者の最期
しおりを挟む
「告発時間を終了します。審判を開始します」
スクリーンに奈々の情報が表示された。
**被告発者:奈々(19歳)**
**告発票数:6票**
**犯罪内容:復讐のために他者を欺き、殺人ゲームを企画・扇動した。精神的拷問により複数名を死に追いやった**
奈々は静かに立ち上がった。
「犯罪内容は正しいわね。私は確かに、復讐のためにあなたたちを利用した」
参加者たちは黙って見つめていた。誰も、奈々の処刑を喜んでいるようには見えなかった。
「でも、後悔はしてない」奈々が続けた。「美咲ちゃんのために戦えたから」
蓮が立ち上がった。
「奈々さん、最後に聞かせてください。美咲さんは本当はどんな人だったんですか?」
奈々の表情が和らいだ。
「美咲ちゃんは……誰よりも優しくて、誰よりも強い子だった」
奈々は窓の方を向いた。
「小学生の時、いじめられてる子を助けて、自分がいじめられるようになったことがあった。でも、美咲ちゃんは『正しいことをしたから後悔はない』って言ってた」
参加者たちが息を呑んだ。
「中学に入ってからも、困ってる人がいると必ず助けてた。成績の悪い子に勉強を教えたり、保健室で泣いてる子の話を聞いたり……」
奈々の声が震えた。
「そんな美咲ちゃんが、なぜあんな目に遭わなければならなかったの?なぜ、優しい子が死んで、美咲ちゃんを傷つけた人たちが生きてるの?」
沈黙が流れた。
大輔が口を開いた。
「私は……美咲さんに相談を受けた時、忙しくて真剣に話を聞かなかった。もし、あの時ちゃんと向き合っていれば……」
千尋が泣きながら言った。
「私は面白半分でSNSに投稿した。美咲さんがどんなに苦しんでいるかなんて、考えもしなかった」
一人、また一人と、参加者たちが自分の犯罪を告白し始めた。
拓海は美咲を「いじめっ子」だと決めつけて暴言を吐いたこと。
莉子は週刊誌に美咲の母親の私生活を売ったこと。
翔太は美咲の写真を無断でネットに上げて炎上させたこと。
沙織は守秘義務を破って美咲の最期の様子をマスコミに漏らしたこと。
亮介は世間体を気にして美咲の父親の異動を提案したこと。
圭は美咲がいじめられているのを見て見ぬふりをしたこと。
美咲(従姉妹)は真実を知りながら、正義面して週刊誌のインタビューに答えたこと。
そして蓮は、根拠不十分な告発で美咲を地獄に突き落としたこと。
全員の告白が終わったとき、奈々は振り返った。
「ありがとう。やっと、みんなが美咲ちゃんに向き合ってくれた」
「審判結果:有罪。適性度:危険レベル。即時脱落」
機械音声が告げた。
奈々の首輪が青く光り始めた。
「奈々さん!」蓮が叫んだ。
しかし、奈々は笑顔だった。
「大丈夫よ。これで私も美咲ちゃんに会えるかもしれない」
奈々の身体がぐったりと椅子にもたれかかった。
しばらくして、黒い人影が現れて奈々を運び去った。
ロビーには十人が残された。
長い沈黙の後、美咲が口を開いた。
「私たち……これからどうするの?」
大輔が答えた。
「生きるしかない。美咲さんの分まで」
「でも、ゲームは続くのよ」莉子が言った。「まだ私たちは島にいる」
その時、スピーカーから機械音声が流れた。
「重要な発表があります。プログラム主催者より特別メッセージをお送りします」
スクリーンに、初めて人間の映像が映し出された。白髪の老人が、実験室らしき場所に立っていた。
「参加者の皆さん、お疲れ様でした。私はデジタル倫理研究機関の創設者で主任研究者、Dr.橋本です」
参加者たちがざわめいた。橋本——美咲と同じ姓だった。
「橋本美咲は、私の孫娘でした」
全員が凍りついた。
「この『デジタル倫理研究機関』は、孫娘の死をきっかけに私が設立した実在の研究機関です。元々はデジタル犯罪者の心理分析を目的としていました」
「しかし、2年前に奈々さんが私のもとを訪れ、孫娘の件について詳細を話してくれました。その時、特別なプログラムとして今回の実験を企画することを決めたのです」
蓮の頭が整理された。奈々は復讐を計画し、Dr.橋本の研究機関と協力して今回のプログラムを実現させたのだ。
「奈々さんには、皆さんを特定し、参加への誘導を協力してもらいました。彼女の復讐心と、私の研究への関心、そして孫娘への贖罪の気持ちが一致したのです」
「私自身、孫娘を救えなかった祖父として、皆さんと同じ加害者の一人です。だからこそ、この実験に意味があると考えました」
「しかし、皆さんの今夜の行動を見て、考えが変わりました」Dr.橋本が続けた。「皆さんは真摯に自分のデジタル犯罪と向き合い、償いの意志を示された」
「実験を終了します。皆さんは明朝、島から解放されます」
参加者たちが安堵の息を漏らした。
「ただし、条件があります」Dr.橋本の表情が厳しくなった。「皆さんには、美咲の死を社会に正しく伝える義務があります。ネットリンチの恐ろしさ、匿名での告発の危険性、傍観者の罪——それらを世に知らしめてください」
「なお、奈々さんは生きています」Dr.橋本が付け加えた。「脱落処理は睡眠薬による気絶でした。彼女は現在、専門施設で心理治療を受けています」
蓮は安堵した。奈々は生きている。
「このプログラムで得られたデータは、将来のデジタル社会の健全化に活用されます。皆さんも、その一翼を担っていただくことになります」
スクリーンが消えた。
参加者たちは、それぞれの想いを胸に、最後の夜を迎えた。
スクリーンに奈々の情報が表示された。
**被告発者:奈々(19歳)**
**告発票数:6票**
**犯罪内容:復讐のために他者を欺き、殺人ゲームを企画・扇動した。精神的拷問により複数名を死に追いやった**
奈々は静かに立ち上がった。
「犯罪内容は正しいわね。私は確かに、復讐のためにあなたたちを利用した」
参加者たちは黙って見つめていた。誰も、奈々の処刑を喜んでいるようには見えなかった。
「でも、後悔はしてない」奈々が続けた。「美咲ちゃんのために戦えたから」
蓮が立ち上がった。
「奈々さん、最後に聞かせてください。美咲さんは本当はどんな人だったんですか?」
奈々の表情が和らいだ。
「美咲ちゃんは……誰よりも優しくて、誰よりも強い子だった」
奈々は窓の方を向いた。
「小学生の時、いじめられてる子を助けて、自分がいじめられるようになったことがあった。でも、美咲ちゃんは『正しいことをしたから後悔はない』って言ってた」
参加者たちが息を呑んだ。
「中学に入ってからも、困ってる人がいると必ず助けてた。成績の悪い子に勉強を教えたり、保健室で泣いてる子の話を聞いたり……」
奈々の声が震えた。
「そんな美咲ちゃんが、なぜあんな目に遭わなければならなかったの?なぜ、優しい子が死んで、美咲ちゃんを傷つけた人たちが生きてるの?」
沈黙が流れた。
大輔が口を開いた。
「私は……美咲さんに相談を受けた時、忙しくて真剣に話を聞かなかった。もし、あの時ちゃんと向き合っていれば……」
千尋が泣きながら言った。
「私は面白半分でSNSに投稿した。美咲さんがどんなに苦しんでいるかなんて、考えもしなかった」
一人、また一人と、参加者たちが自分の犯罪を告白し始めた。
拓海は美咲を「いじめっ子」だと決めつけて暴言を吐いたこと。
莉子は週刊誌に美咲の母親の私生活を売ったこと。
翔太は美咲の写真を無断でネットに上げて炎上させたこと。
沙織は守秘義務を破って美咲の最期の様子をマスコミに漏らしたこと。
亮介は世間体を気にして美咲の父親の異動を提案したこと。
圭は美咲がいじめられているのを見て見ぬふりをしたこと。
美咲(従姉妹)は真実を知りながら、正義面して週刊誌のインタビューに答えたこと。
そして蓮は、根拠不十分な告発で美咲を地獄に突き落としたこと。
全員の告白が終わったとき、奈々は振り返った。
「ありがとう。やっと、みんなが美咲ちゃんに向き合ってくれた」
「審判結果:有罪。適性度:危険レベル。即時脱落」
機械音声が告げた。
奈々の首輪が青く光り始めた。
「奈々さん!」蓮が叫んだ。
しかし、奈々は笑顔だった。
「大丈夫よ。これで私も美咲ちゃんに会えるかもしれない」
奈々の身体がぐったりと椅子にもたれかかった。
しばらくして、黒い人影が現れて奈々を運び去った。
ロビーには十人が残された。
長い沈黙の後、美咲が口を開いた。
「私たち……これからどうするの?」
大輔が答えた。
「生きるしかない。美咲さんの分まで」
「でも、ゲームは続くのよ」莉子が言った。「まだ私たちは島にいる」
その時、スピーカーから機械音声が流れた。
「重要な発表があります。プログラム主催者より特別メッセージをお送りします」
スクリーンに、初めて人間の映像が映し出された。白髪の老人が、実験室らしき場所に立っていた。
「参加者の皆さん、お疲れ様でした。私はデジタル倫理研究機関の創設者で主任研究者、Dr.橋本です」
参加者たちがざわめいた。橋本——美咲と同じ姓だった。
「橋本美咲は、私の孫娘でした」
全員が凍りついた。
「この『デジタル倫理研究機関』は、孫娘の死をきっかけに私が設立した実在の研究機関です。元々はデジタル犯罪者の心理分析を目的としていました」
「しかし、2年前に奈々さんが私のもとを訪れ、孫娘の件について詳細を話してくれました。その時、特別なプログラムとして今回の実験を企画することを決めたのです」
蓮の頭が整理された。奈々は復讐を計画し、Dr.橋本の研究機関と協力して今回のプログラムを実現させたのだ。
「奈々さんには、皆さんを特定し、参加への誘導を協力してもらいました。彼女の復讐心と、私の研究への関心、そして孫娘への贖罪の気持ちが一致したのです」
「私自身、孫娘を救えなかった祖父として、皆さんと同じ加害者の一人です。だからこそ、この実験に意味があると考えました」
「しかし、皆さんの今夜の行動を見て、考えが変わりました」Dr.橋本が続けた。「皆さんは真摯に自分のデジタル犯罪と向き合い、償いの意志を示された」
「実験を終了します。皆さんは明朝、島から解放されます」
参加者たちが安堵の息を漏らした。
「ただし、条件があります」Dr.橋本の表情が厳しくなった。「皆さんには、美咲の死を社会に正しく伝える義務があります。ネットリンチの恐ろしさ、匿名での告発の危険性、傍観者の罪——それらを世に知らしめてください」
「なお、奈々さんは生きています」Dr.橋本が付け加えた。「脱落処理は睡眠薬による気絶でした。彼女は現在、専門施設で心理治療を受けています」
蓮は安堵した。奈々は生きている。
「このプログラムで得られたデータは、将来のデジタル社会の健全化に活用されます。皆さんも、その一翼を担っていただくことになります」
スクリーンが消えた。
参加者たちは、それぞれの想いを胸に、最後の夜を迎えた。
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる