ランキングデスゲーム〜辛くて拡散希望、生き残りたいです〜

みにぶた🐽

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第II部:支配という報酬

第7章 「命令が効かない」

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 宇佐美凛の処刑から一夜が明けた。

 俺たちは皆、 前夜よりもさらに眠れなかった。 四肢切断という残酷な処刑の光景が、 瞼の裏に焼き付いて離れない。 あの血の匂いが、 まだ鼻の奥に残っているような気がした。

 だが、 ゲームは容赦なく続いていく。

 午前10時。 俺たち看守は命令権の行使を開始する時間になった。

 看守席に座る俺たち5名。 床に座らされた囚人8名。 この権力関係も、 もはや当然のものとして受け入れられつつある。

 斑鳩凌が最初に立ち上がった。

「昨日の処刑で、 お前たちは現実を理解したはずだ。 今日からは、 より厳格な規律で臨む」

 彼は囚人たちを見回し、 宍戸昴を指差した。


#14、 宍戸昴。 お前の不謹慎な態度は他の囚人に悪影響を与える。 壁に向かって立ち、 昨日処刑された宇佐美凛への謝罪文を100回書け。 手が痛くても休むな」

 宍戸昴は皮肉な笑みを浮かべた。

「謝罪文?面白いじゃないか」

「ふざけるな」 斑鳩凌が怒鳴った。 「真剣に書け。 一文字でも手を抜いたら分かる」

 続いて真鍋天馬の番になった。 彼は明らかに躊躇していた。

「僕は……」

 斑鳩凌が睨んだ。

「何をためらっている。 看守の責任を果たせ」

 真鍋天馬は苦悩の表情で相楽翠を指差した。


#12、 相楽翠さん。 今日は……みんなのために料理を作ってください。 心を込めて」

 相楽翠は震え声で答えた。

「でも……材料とか……」

「システムが用意してくれるはずです」 真鍋天馬は優しく言った。

 雪村颯汰は葛城翼を指差した。


#02、 葛城翼。 君の怒りを建設的に使ってほしい。 ホール内の設備点検をしてくれ。 何か脱出の手がかりがないか調べながら」

 葛城翼は意外そうな表情を見せた。

「脱出の……?」

「密かにね」 雪村颯汰は小声で言った。

 鳴海瑠璃は冷たく白鷺小夜を指差した。


#09、 白鷺小夜。 あなたの弱々しい態度は見ていて不快よ。 今日一日、 大きな声で自分の意見を言いなさい。 小声や泣き声は禁止」

 白鷺小夜は恐怖で震えた。

「で、 でも……私、 大きな声なんて……」

「命令よ」 鳴海瑠璃が冷徹に言った。

 そして俺の番が来た。

 俺は安堂圭吾を指差した。


#11、 安堂圭吾。 お前の怒りは理解できるが、 方向性が間違っている。 今日一日、 このゲームの脱出方法を真剣に考えろ。 そして夕方に具体的な案を3つ以上提示しろ」

 安堂圭吾は困惑した表情を見せた。

「脱出方法って……」

「感情的に怒るだけでは何も変わらない」 俺は冷静に言った。 「建設的に考えろ。 それがお前の怒りを有効活用する方法だ」

 配信のコメント欄が俺の命令を評価していた。


#07の心理戦やばい』
『優しさを封じるとか鬼畜』
『でも理にかなってる』

#08が壊れるの楽しみ』

 命令を受けた囚人たちは、 それぞれ指示された行動を開始した。

 宍戸昴は壁に向かって謝罪文を書き始めた。 皮肉な笑みは消えていた。

 相楽翠は震えながら簡単な料理の準備を始めた。

 葛城翼は意外にも積極的に設備を調べ始めた。

 白鷺小夜は必死に大きな声を出そうと努力していた。

 安堂圭吾は怒りを抑えながら脱出方法について考え込んでいた。

 そして、 それ以外の囚人たち――五十嵐龍之介、 宝生朱音、 早乙女千景は、 恐る恐る様子を見守っていた。

 午後になると、 異変が起こった。

 安堂圭吾が突然立ち上がったのだ。

「もうやめだ!」

 彼は看守席に向かって叫んだ。

「こんなバカげた命令、 従ってられるか!」

 ホール内がざわめいた。

 斑鳩凌が険しい表情で立ち上がった。


#11、 命令違反だ。 即座に正座に戻れ」

「断る!」 安堂圭吾が怒鳴り返した。 「俺たちは人間だ!お前たちの奴隷じゃない!」

 その瞬間、 機械音声が響いた。

「命令違反を確認。 ペナルティを執行いたします」

 ホール中央に拷問台が上昇し始める。

「やめろ!」 安堂圭吾が叫んだ。 「俺は間違ったことは言ってない!」

 だが、 機械のアームが彼を捕獲し、 拷問台へと運んでいく。

 その時、 予想外のことが起こった。

 葛城翼が立ち上がったのだ。

「おい、 やめろよ!安堂の言ってることは正しいだろう!」

 続いて宝生朱音も立ち上がった。

「これは……これはやりすぎです!」

 さらに白鷺小夜も震えながら立ち上がった。

「お願いします……もうやめて……」

 囚人たちの間に、 初めて団結の兆しが見えた。

 だが、 機械音声は容赦なく告げた。

「複数名による命令違反を確認。 集団ペナルティを執行いたします」

 拷問台がさらに大型化し、 複数人を同時に拘束できる仕様に変化した。

 斑鳩凌が激怒した。

「お前たち……調子に乗るな!」

 だが安堂圭吾は怯まなかった。

「調子に乗ってるのはお前たちだろう!同じ境遇だったくせに、 看守になった途端に偉そうに!」

 葛城翼も続いた。

「そうだ!俺たちはお前たちの所有物じゃない!」

 宝生朱音も勇気を振り絞って言った。

「私たちにも……私たちにも尊厳があります!」

 囚人たちの反抗に、 看守の間にも動揺が走った。

 真鍋天馬が立ち上がった。

「みんな、落ち着いて。 話し合いで解決しよう」

 だが斑鳩凌が真鍋天馬を制止した。

「甘い!規律を乱す者は処罰されなければならない!」

 鳴海瑠璃も同調した。

「集団反抗を許せば、 統制が取れなくなる」

 雪村颯汰は苦悩の表情で呟いた。

「でも……彼らの気持ちも分かる……」

 俺は冷静に状況を観察していた。

 この反抗は、 予想していたことだった。 圧政が続けば、 いずれ反発が起こる。 それは歴史の必然だ。

 だが問題は、 この反抗をどう処理するかだった。

 強硬に鎮圧すれば、 さらなる反発を招く。 しかし、 甘い処置を取れば、 看守の権威が失墜する。

 配信のコメント欄は大盛り上がりだった。

『囚人反乱きたああああ』

#11かっこいい!』
『看守ざまあwww』
『でも拷問されるんでしょ?』

#07はどう出るかな』

 機械のアームが安堂圭吾たち4名を拘束しようとした時、 俺は立ち上がった。

「待て」

 全員の視線が俺に向いた。

「ペナルティの前に、 彼らの言い分を聞こう」

 斑鳩凌が俺を睨んだ。

「何を言っている。 規律違反は処罰されるべきだ」

「その通りだ」 俺は冷静に答えた。 「だが、 処罰の前に原因を理解する必要がある。 同じ問題が再発しないようにするために」

 安堂圭吾が俺を見た。

「お前……」

 俺は安堂圭吾に向かって言った。

「お前の怒りは理解できる。 だが、 感情的になって反抗したところで、 状況は何も変わらない。 むしろ悪化するだけだ」

「じゃあどうしろって言うんだ!」 安堂圭吾が叫んだ。 「このまま奴隷になれって言うのか!」

「奴隷ではない」 俺は答えた。 「これはゲームだ。 そして、 ゲームには必ずルールがある。 ルールを理解し、 その範囲内で最善を尽くすことが重要だ」

 葛城翼が反発した。

「ルールって……人を殺すルールなんて従えるか!」

「従わなければ死ぬ」 俺は冷徹に言い放った。 「それがこのゲームの現実だ」

 宝生朱音が震え声で言った。

「でも……でも私たちにも人権が……」

「人権?」 俺は彼女を見つめた。 「この施設の中に人権があると思うのか?」

 その言葉に、 囚人たちは言葉を失った。

 俺は続ける。

「俺たちは既に、 一般社会のルールが通用しない世界にいる。 ここでは、 このゲームのルールだけが絶対だ。 それを受け入れなければ生き残れない」

 安堂圭吾が拳を握り締めた。

「じゃあ俺たちは……俺たちはただ従うだけか?」

「従うのではない」 俺は答えた。 「適応するのだ。 このゲームの中で、 自分なりの生き方を見つけるのだ」

 五十嵐龍之介が俺の命令を思い出したように言った。

「でも……優しさを捨てろって……それは人間性を捨てることじゃないですか?」

 俺は五十嵐龍之介を見つめた。

「優しさを捨てろとは言っていない。 ただ、 状況に応じて使い分けろと言っているだけだ。 今のお前の優しさは、 結果的に全員を危険にさらしている」

「どういうことですか?」

「お前が他の囚人を助けようとすれば、 その分お前のエネルギーが消耗する。 そして、 お前が弱くなれば、 次の投票で下位に落ちる可能性が高まる。 つまり、 お前の優しさは、 結果的にお前を殺すことになる」

 五十嵐龍之介は言葉に詰まった。

 俺は全員に向かって言った。

「このゲームでは、 感情的な判断は死を意味する。 冷静に、 合理的に、 戦略的に考えなければならない」

 斑鳩凌が俺の発言に同調した。

「その通りだ。 #07の言う通り、 感情に流されれば死ぬ」

 だが真鍋天馬が反発した。

「感情を捨てたら、 俺たちは人間じゃなくなる!」

「人間でいたければ死ねばいい」 鳴海瑠璃が冷たく言い放った。 「このゲームでは、 人間らしさと生存は両立しない」

 その言葉に、 ホール内が静まり返った。

 機械音声が告げる。

「反抗者の処遇について、 看守の判断を求めます」

 俺は立ち上がった。

「ペナルティは軽減する。 ただし、 今後同様の反抗があった場合は、 より厳しい処罰を科す」

 斑鳩凌が俺を睨んだ。

「甘すぎる!」

「甘くない」 俺は答えた。 「これは戦略だ。 今回は警告で済ませる。 だが、 次回は容赦しない。 このメリハリが重要だ」

 鳴海瑠璃が俺の判断に同調した。

「確かに。 一度目は寛大に、 二度目は厳格に。 これは支配の基本よ」

 機械音声が告げた。

「看守の判断を承認。 警告処分とします」

 拷問台が地下に引っ込んでいく。

 安堂圭吾が俺を見つめた。

「お前……なんで助けた?」

 俺は冷静に答えた。

「助けたのではない。 より効果的な支配方法を選択しただけだ」

 その言葉に、 安堂圭吾は複雑な表情を見せた。

 俺は続ける。

「お前たちは勘違いしている。 俺たち看守が敵だと思っているようだが、 真の敵は別にいる」

「何?」

「このゲームのシステムだ。 そして、 俺たちを見世物として楽しんでいる視聴者たちだ」

 配信のコメント欄を指差した。


#07の判断面白い』
『甘い処分だな』
『でも戦略的には正しい』
『次の反抗が楽しみ』

「見ろ。 彼らは俺たちの対立を娯楽として消費している。 俺たちが争えば争うほど、 彼らは喜ぶ」

 囚人たちは配信画面を見つめた。

「つまり」 俺は続けた。 「俺たちが本当に戦うべき相手は、 お互いではない。 このシステムそのものだ」

 安堂圭吾が困惑した表情で言った。

「でも……どうやって戦うんだ?」

「まずは生き残ることだ」 俺は答えた。 「死んでしまえば、 何もできない。 生き残って、 機会を待つ」

 葛城翼が疑念を示した。

「本当に機会なんて来るのか?」

「分からない」 俺は正直に答えた。 「だが、 希望を捨てれば確実に終わりだ」

 宝生朱音が小さく言った。

「希望……」

「そうだ」 俺は彼女を見つめた。 「今は従うふりをして、 内心では抵抗の意志を燃やし続ける。 それが俺たちにできる唯一の反抗だ」

 五十嵐龍之介が俺に向かって言った。

「でも……あなたの命令は……」

「俺の命令は、 お前を守るためのものだ」 俺は答えた。 「優しさを完全に捨てろとは言っていない。 ただ、 表面的には冷徹に振る舞えと言っているだけだ」

「表面的に……」

「そうだ。 心の奥底では、 人間らしさを保ち続けろ。 だが、 それを表に出すな。 このゲームでは、 弱さを見せることは死を意味する」

 夕方になると、 機械音声が告げた。

「本日の命令執行時間は終了です。 明日も継続して規律維持に努めてください」

 俺は看守席から囚人たちを見下ろした。

 今日の出来事で、 明らかに何かが変わった。

 囚人たちの中に、 わずかながら希望の光が戻った。 俺の言葉が、 彼らに新しい視点を与えたのだ。

 だが同時に、 看守の中にも亀裂が生じた。

 斑鳩凌と鳴海瑠璃は俺の判断に疑念を抱いている。 真鍋天馬と雪村颯汰は安堵している。

 そして俺は、 この微妙なバランスの上に立っていた。

 配信の視聴者数は2万5千人を超えていた。 コメント欄では様々な反応が飛び交っている。


#07の判断賢い』
『でも甘すぎない?』
『囚人に希望与えちゃダメでしょ』
『逆に面白くなりそう』

#07が黒幕っぽい』

 俺は心の奥で考えていた。

 今日の俺の行動は、 確実にゲームの流れを変えた。 囚人たちに希望を与え、 看守の中に分裂を生み出した。

 これが吉と出るか凶と出るかは分からない。

 だが、 少なくとも俺は、 このゲームに対する新しいアプローチを示した。

 単純な支配と被支配の関係ではなく、 より複雑で戦略的な関係性を築くこと。

 そして、 その過程で可能な限り人間性を保持すること。

 それが、 この地獄のようなゲームで生き残るための俺なりの方法だった。

 夜が更けても、 ホール内の空気は以前とは明らかに違っていた。

 緊張感は残っているが、 絶望的な雰囲気は少し和らいでいた。

 俺は明日への戦略を練り始めた。

 看守の分裂をどう利用するか。

 囚人たちの希望をどう維持するか。

 そして、 このゲームの真の敵に対して、 どのように立ち向かうか。

 答えはまだ見えない。

 だが、 少なくとも今日、 新しい可能性が生まれた。

 それだけでも、 価値のある一日だったのかもしれない。
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