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第1章「始業式と異常通達」
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春の陽光が差し込む白鷺大学の大講堂で、結城燈は息を詰めて壇上を見つめていた。心理学部の新入生として迎えた初日、期待していた普通のオリエンテーションとは程遠い光景が展開されている。
「今年度より、本学部では『実践型性教育』が必修科目となります」
壇上の教授が淡々とした口調で告げた瞬間、講堂内がざわめいた。燈の隣に座る学生たちも、困惑の表情を浮かべている。
「この授業では、異性間の身体的・精神的コミュニケーション能力の向上を図ります。ただし」
教授が手に持った資料を高く掲げる。そこには赤い文字で『恋愛感情発生時:即座に退学処分』と書かれていた。
「真の愛情を抱いた瞬間、強制退学となります。AIによる感情値監視システムにより、心拍数、ホルモン値、表情筋の動きまで、全てリアルタイムで解析されます」
講堂の天井から小型ドローンが降下してきた。赤く点滅するセンサーが、学生たち一人ひとりを舐めるように観察している。
燈が動揺していると、隣の席にすっと女性が座った。振り向くと、息を呑むような美貌の持ち主がそこにいた。
「七瀬澪よ。よろしく」
彼女の声は低く、どこか挑戦的だった。整った顔立ちに長い黒髪、制服から覗く白い首筋が燈の視線を釘付けにする。
「結城燈です」
「それでは早速、ペア確認実習を開始します。恋人らしい自然な接触を5分間継続してください」
教授の指示と共に、澪が燈の方へ身体を向けた。
「演技よ。本気じゃないなら……これくらい余裕でしょ?」
澪の手が燈の頬に添えられる。その指先は意外に温かく、燈の心臓が激しく鼓動し始めた。
次の瞬間、澪の顔が近づいてくる。彼女の唇が燈の頬に触れた——いや、それ以上だった。澪の舌先が燈の頬をゆっくりと舐め上げたのだ。
「っ……」
燈は思わず声を漏らしそうになる。澪の唇は予想以上に柔らかく、ほのかに甘い香りがした。
「本気じゃないなら、これくらい平気でしょ?」
澪は燈の耳元で囁くと、今度は唇の内側を舌で舐め取りながらウィンクした。その仕草があまりにも大胆で、燈の思考が停止する。
「心拍数急上昇。注意レベル:オレンジ」
AIの機械音声が響いた。燈は慌てて呼吸を整えようとするが、澪の体温と香りが近すぎて集中できない。
「大丈夫。私だって同じよ」
澪が小さく微笑んだとき、燈は気づいた。彼女の手も微かに震えている。制服越しに伝わる体温が、いつの間にか熱を帯びていた。
燈の視線が澪の制服のボタンに向かう。白いブラウスの胸元がわずかに開いており、そこから覗く鎖骨のラインが妙に艶めかしい。
「見てるのね」
澪が気づいて、わざと胸を張るような仕草を見せる。制服越しでも分かる柔らかな膨らみに、燈の喉が渇いた。
「これも……演技でしょ?」
燈がかすれた声で問うと、澪は首を傾げた。
「そうね。全部、演技よ」
しかし彼女の瞳には、先ほどまでの冷たさとは違う、何か熱いものが宿っているのを燈は見逃さなかった。
「時間終了」
教授の声で、二人は離れた。澪は何事もなかったかのように髪を整えるが、その頬がわずかに赤く染まっているのが燈には見えた。
「なかなか上手じゃない……演技として」
立ち上がりながら澪が振り返る。その表情は再び冷静さを取り戻していたが、燈は先ほどの彼女の反応を忘れることができなかった。
講堂を出る際、澪が燈の袖を軽く引いた。
「結城君。一つだけ約束して」
「何ですか?」
「絶対に、私に惚れないこと」
澪の表情は真剣だった。しかし、その瞳の奥で何かが揺れているのを、燈ははっきりと感じ取った。
「……分かりました」
燈は頷いたが、胸の奥で疼く感情を抑えることができずにいた。これから始まる大学生活が、どれほど危険なものになるのか、彼はまだ理解していなかった。
二人の後ろで、AIの監視ドローンが静かに浮遊し続けている。赤いランプが、時折オレンジ色に明滅しながら。
「今年度より、本学部では『実践型性教育』が必修科目となります」
壇上の教授が淡々とした口調で告げた瞬間、講堂内がざわめいた。燈の隣に座る学生たちも、困惑の表情を浮かべている。
「この授業では、異性間の身体的・精神的コミュニケーション能力の向上を図ります。ただし」
教授が手に持った資料を高く掲げる。そこには赤い文字で『恋愛感情発生時:即座に退学処分』と書かれていた。
「真の愛情を抱いた瞬間、強制退学となります。AIによる感情値監視システムにより、心拍数、ホルモン値、表情筋の動きまで、全てリアルタイムで解析されます」
講堂の天井から小型ドローンが降下してきた。赤く点滅するセンサーが、学生たち一人ひとりを舐めるように観察している。
燈が動揺していると、隣の席にすっと女性が座った。振り向くと、息を呑むような美貌の持ち主がそこにいた。
「七瀬澪よ。よろしく」
彼女の声は低く、どこか挑戦的だった。整った顔立ちに長い黒髪、制服から覗く白い首筋が燈の視線を釘付けにする。
「結城燈です」
「それでは早速、ペア確認実習を開始します。恋人らしい自然な接触を5分間継続してください」
教授の指示と共に、澪が燈の方へ身体を向けた。
「演技よ。本気じゃないなら……これくらい余裕でしょ?」
澪の手が燈の頬に添えられる。その指先は意外に温かく、燈の心臓が激しく鼓動し始めた。
次の瞬間、澪の顔が近づいてくる。彼女の唇が燈の頬に触れた——いや、それ以上だった。澪の舌先が燈の頬をゆっくりと舐め上げたのだ。
「っ……」
燈は思わず声を漏らしそうになる。澪の唇は予想以上に柔らかく、ほのかに甘い香りがした。
「本気じゃないなら、これくらい平気でしょ?」
澪は燈の耳元で囁くと、今度は唇の内側を舌で舐め取りながらウィンクした。その仕草があまりにも大胆で、燈の思考が停止する。
「心拍数急上昇。注意レベル:オレンジ」
AIの機械音声が響いた。燈は慌てて呼吸を整えようとするが、澪の体温と香りが近すぎて集中できない。
「大丈夫。私だって同じよ」
澪が小さく微笑んだとき、燈は気づいた。彼女の手も微かに震えている。制服越しに伝わる体温が、いつの間にか熱を帯びていた。
燈の視線が澪の制服のボタンに向かう。白いブラウスの胸元がわずかに開いており、そこから覗く鎖骨のラインが妙に艶めかしい。
「見てるのね」
澪が気づいて、わざと胸を張るような仕草を見せる。制服越しでも分かる柔らかな膨らみに、燈の喉が渇いた。
「これも……演技でしょ?」
燈がかすれた声で問うと、澪は首を傾げた。
「そうね。全部、演技よ」
しかし彼女の瞳には、先ほどまでの冷たさとは違う、何か熱いものが宿っているのを燈は見逃さなかった。
「時間終了」
教授の声で、二人は離れた。澪は何事もなかったかのように髪を整えるが、その頬がわずかに赤く染まっているのが燈には見えた。
「なかなか上手じゃない……演技として」
立ち上がりながら澪が振り返る。その表情は再び冷静さを取り戻していたが、燈は先ほどの彼女の反応を忘れることができなかった。
講堂を出る際、澪が燈の袖を軽く引いた。
「結城君。一つだけ約束して」
「何ですか?」
「絶対に、私に惚れないこと」
澪の表情は真剣だった。しかし、その瞳の奥で何かが揺れているのを、燈ははっきりと感じ取った。
「……分かりました」
燈は頷いたが、胸の奥で疼く感情を抑えることができずにいた。これから始まる大学生活が、どれほど危険なものになるのか、彼はまだ理解していなかった。
二人の後ろで、AIの監視ドローンが静かに浮遊し続けている。赤いランプが、時折オレンジ色に明滅しながら。
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