【一話完結】あなたの心を少しだけ動かす、掌の中の物語

ソラ

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二十年後に届いた、嘘つきな母からの贈り物

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整理整頓が、母の唯一の取り柄だった。  
実家のリビングも、台所も、母の寝室も、いつだってモデルルームのように片付いていた。余計なものは置かない。思い出に浸って手を止めることもしない。そんな合理的で、少し冷淡とも思える母が、どこか何かに怯えているようにも見えて、私は苦手だった。

その母が亡くなって一週間。私は一人、遺品整理のために実家を訪れていた。  
がらんとした部屋で、クローゼットの奥から見慣れない桐箱が出てきたのは、夕暮れ時だった。

「……えっ?」

中に入っていたのは、あまりに場違いなもの。手のひらに乗るほどの、安っぽい陶器の招き猫だった。  
二十年前。私が心臓の手術を控えて入院していたとき、母が「なくした」と告げた私の宝物だ。当時、母は私の激しい追及に、膝の上の手を白くなるほど強く握りしめ、視線を合わせないまま「ごめんなさい」と繰り返すだけだった。

だが、今。目の前にある招き猫の首元には、不器用な修復の跡がある。  
底のフェルトを剥がすと、中から古い病院の領収書の裏紙が出てきた。

『神様、ごめんなさい。私が不注意で、この子の守り神を落として壊してしまいました。  
でも、どうかこれだけは聞き届けてください。  
ラッキーが身代わりになって壊れたのだと、そう信じさせてください。  
この子が明日、無事に手術を終えられるなら、私は一生、この子に嫌われても構いません。  
私がこの子の宝物を壊した「ひどい母親」のままでいいから、どうか、あの子の命だけは助けてください』

視界が、急激に滲んだ。  
母の部屋がいつも完璧に片付いていた理由が、今さら分かった気がした。  
母は、物を捨てていたのではない。もう二度と、大切なものを自分の不注意で壊さないよう、祈るようにして暮らしていたのだ。

「……お母さん」

二十年分の誤解が、涙と一緒に溶けていく。  
私は立ち上がり、母のいなくなった台所へ向かった。  
母が愛用していた、何も置かれていない真っ白な棚。その一番日当たりの良い場所に、私はそっと招き猫を置いた。

夕光を浴びた招き猫は、何も言わず、ただそこにいた。
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