初夏

tukuno

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#月

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いつか精算されるだろうと筆を持つ。

あの時の鼻についたジャスミンの香りは、今も粘膜にべたりと貼りつき初夏が来るのを嫌がった。

「今年は秩父にでも行こうか」
喉の奥から苦いものを感じ取り、私は黙って話を聞くばかりだった。
その男から聞く話は嘘か誠かも分からない。その瞳だけが綺麗に月の色を乗せて光を放っていたので、私は何か綺麗なものを見つけた気がしてしまったのだ。それでもじっと耳を傾けるとやはり悪戯に企んでいるだけのようにも聞こえる。

あの花はまだ私を監視しているのだろう。
あの匂いとともに、二度と恋など出来ぬよう。

「そうね」
私は煙の中その余韻に浸って震える。
月だけがその姿を捉えていた。
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