おこもり魔王の子守り人

曇天

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第二十八話

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「まったく昨日はひどい目にあったぜ」

「本当、死んだかと思ったよ」

 次の日、ガルムとラクレイは教室で憤っていた。 隣でヴァライアがノーパソのアディエルエと話している。

「すまん。 早く気づけばよかったんだけどな」

「まあ、ボカミンさまには逆らえないし、仕方ないか」

 ガルムは肩をおとした。

「......そうだね。 それに魔力はかなり上がったよ」

 ラクレイがそういい、たしかになと、ガルムもうなづく。

「橘さんは問題なかった」

「うん...... 特には」

「やはり、なにもない魔力の総量が大きいんだな。 俺も昨日は体が一日熱かったから」

(魔力の感知はできても、大きさをある程度測れるぐらいだからな......)

 俺が考えていると、チャイムがなり、ヤーム先生が教室にはいってくる。

「おはようございます。 では授業をはじめます。 タブレットにテキストがありますので開いてください」

 授業はこの世界の歴史から始まった。

(これ結構面白いんだよな。 ん?)

「ん、......くっ」

 隣から声がするので見る。 ノートパソコンから声がもれてる。

(アディエルエ、これは格闘ゲームしてるな。 普段は小声だけどあいつ無意識だと声がでるからな。 ちゃんと授業受けろよ)

 それから次の授業は、国家の歴史を学ぶ。

(このゼフォルは比較的新しい国家みたいたな。 といっても千年は続いているらしいが......)

「ふぉぉ」

 隣からそう声がする。

(なんだ興奮してる? 格闘ゲームではないな。 ネット対戦は怖がって無理だし、コンピューターにすら勝てないしな...... あとできるゲームは格闘以外だとRPGだが...... 人が怖くてギルドとかにはいれないからオフラインのRPGしかできない)

「......へんしーん、かっこいい......」

(あっ、ゲームやめて、特撮見始めたのか、ライフォマーか戦隊物か、最近俺にやたら薦めてきたからな)

 次の授業は魔法についてだった。

(魔力はかなり増えてきたから、新しい魔法がほしいが...... 誰にきくか、アディエルエか...... ヴァライアは電撃と影移動ぐらいしか、魔法使ったのみたことないな......)

「ふぉぉ」

(まだ、特撮みてるのか?)

「もっかい......」

(これ!? アニメだ! オープニングかエンディングを何回も見直してやがる!! 俺も休み中付き合わされたやつだ!)

「ふっ、それはあなたの意見ですよね......」

(ルナティックルナだ! これ! 真似してる!)

 それからもぶつぶつといいながら、アディエルエは授業中アニメを見つづけていた。


 それから授業では数学などこちらの世界の勉強も教わる。

(こっちの勉強も学べるのか、さすがにまだ科学はないな......)

 その間ずっと、アディエルエはアニメや特撮、マンガを堪能し続けた。 俺の前の席のヴァライアは気づいたのか体をプルプル震わせている。

(こいつ家とほぼ同じじゃねーか!)

 そうこう考えているうちに授業が終わる。

「ふぅ...... 授業やってやった......」

 アディエルエはそういっている。

「やってやった...... じゃないだろ。 お前ゲームして、特撮みて、アニメみて、マンガみて、プラモ組み立てただけだろ」

「な、なんで、それを......」

 そううろたえて答えた。

「アディエルエさま...... その、お声が漏れてまして......」

 ヴァライアがそういう。

「......声でてた」

「めちゃくちゃな」

「で、でも大丈夫...... 魔法は使えるし、黒板に書かれたのも映像があるし、動画もとってる......」

「でもさっそくテストがあるらしいぞ」

「てすと?」

「試験だ。 覚えたことを確認するんだよ。 進級とかにかかわる」

「しんきゅう?」

「上のクラスにいくのにテストの点数が低いと進級できないぞ。 進級できないと、俺たちがクラスが上がっても、お前はここで授業を受けないといけなくなる」

「わ、私だけ、そ、そんな......」

「ま、まあアディエルエさま。 私が覚えていますので、大丈夫です」

「ほんとかヴァライア?」

「あ、ああ、多分......」

 自信なさげにヴァライアが答えた。

(ヴァライアもあんまり勉強できそうにないな。 机においたタブレットを両手の指で使ってたし...... 操作もおぼつかないようだ)

 二人が慌ててるのをみて俺はため息をついた。
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