おこもり魔王の子守り人

曇天

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第四十六話

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「そうなのか、まあ対立はしてないようで良かった」

「ただまあ、海を隔てた遠くにある国はなんや対立したり、戦争なったり支配したり、されたりしてるゆうてたわ」 

(海外か...... そういやそんなことニュースでいってたな。 元々争いがある国に異世界から人がくればそうなるか......)

「魔王の力でなんとかならないのか?」

「魔王の威光は昔の話や、今は向こうでいう中央大陸【魔導大陸】にしか効果ない。 東にある【混沌大陸】や西の【精霊大陸】、北の【神聖大陸】、南の【暗黒大陸】なんかには、ほとんど影響力はなくてな。 状況もようわからんねん」

(その話は授業で聞いたな。 日本とくっついたのは【魔導大陸】だと聞いてる。 戦争をしていた地域と結び付いたなら、争いもやむなしか)


「ほらもうすぐやで、空みてみい」

 山の向こうの空に黒い点がみえる。 近づいてよくみると、それは翼のある蛇だった。

「ここからじゃ大きさもわからんな」

「うん、でも旋回してるね」

 ガルムとラクレイがそういった。

「ここからあいつのテリトリーや、入ると見境なく攻撃してくる。 準備しといて、ウチがあいつを地上に落とすからな」

 メルティーにそういわれて俺たちは準備をする。

「最悪、橘さんの魔力停止であいつの力を弱めてくれるか」

「うん、わかった」

「魔力が使えないその間の回復はポーションでおこなおう」

「ああ、ただポーションの魔力も失うからな。 効果は今一つだ」

「だねガルム」

 俺たちはそれぞれのカバンやリュックのポーションを確認する。

「ほな、ウチが先行してあいつを地上に落とすさかい、あとはあいつの注意をひいて、せやけど危ななったらすぐ逃げや。 ウチが何とかするからな」

 そういうとメルティーは宝石をポケットからだし、その姿が消えた。

「消えた!? いや、魔力はあるか」

「フォルムフィルムジェムの魔宝石だね。 姿を消せる魔法アイテムだよ」

「高額なアイテムだ。 こっちで1000万はするな」 

「マジか!」

 しばらく待っていると、上空に向かって花火のようなものが打ちあがり、それが一瞬閃光を放つ。

「うっ! あれは!?」 

 空をみると、黒いものが森に吸い込まれるように落ち、その場に轟音と土煙があがる。

「よし! いくぞ!!」

 俺たちは落ちたほうに走る。 土煙の中動いていてる黒い影がある。

「死んでない! 魔法を!」

「ウィンドダブルエッジ!」 

「グランドファング!」

「ライトブリッドエクスプロージョン!」

 俺たちの魔法がその影へと放たれた。

「ギャオオアオア!!」

 そう鳴き声が響くと衝撃が起こり、土煙を吹き飛ばした。

「くっ! あれで仕留められないのか!!」

 そこには、見上げるぐらいコウモリのような翼をもつ、翼竜のような巨大な爬虫類がいた。

「でかい!!」

「来るぞ!」

 俺たちのほうにその長い首をもたげると向かってくる。 

「ここは僕が!」

 ラクレイが囮となりその突進を大きな斧で防ぐ。

「オオオオオオオン」

 右にに移動していたガルムがハウリングで攻撃、動けないリントヴルムを左に移動した俺がきりつけた。

「くっ! 固い! 斬っても浅い!」

「こっちもだ! 固すぎて斬れんぞ!」

 固い鱗に阻まれ、なかなかきれない。 

「無理か! 仕方ない橘さん! 魔力を停止してくれ! 二人とも魔力が止まった瞬間やるぞ!」

「おお!」

「わかった、少しまって!」

 俺たちは魔力のあるうちリントヴルムの体に登る。

「マモルくん!」

 ーー万物の根源たる力を、理に抗い留めさせよーー

「フォースアウトサイクル!」
 
 唱え終わる前に高くとび、リントヴルムのその頭に三人で武器を突き立てる。

「ギャオオオオオオン......」

 そうリントヴルムは大きな声を発すると、うなだれるようにその巨体を地面に倒した。
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