おこもり魔王の子守り人

曇天

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第五十二話

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「はっ!」 

 目が覚めると、そこは鉄格子が前にあり、周りがレンガのような石で囲われた窓もない小さな部屋だった。

(独房か...... 一体何が......)

「兄ちゃん、やっと起きたか」

 前の独房から声がした。 暗いなか光る目が見える。 よく目をこらすとそれは小柄な緑の人だった。

「誰だ。 あんた亜人か」

「ああゴブリンのアターチっていうケチなもんさ」

(ゴブリン...... ゲームやアニメなんかにでてくる亜人か)

「それであんたこんなところにぶちこまれて、なにしたんだ? 盗みか、いやこんなところに盗みなんてできねえしな」

 ゴブリンのアターチはそう聞いてきた。

「そんなんじゃない...... それでここはどこなんだ?」

「ここ? ここはザイガルフォンさまの城さ」

「ザイガル...... それってアディエルエの兄貴か!!」

「ああそうだよ。 それがどうした?」

(どういうことだ? ヴァライアがザイガルフォンと繋がってた...... ならアディエルエはまさか!!) 

 俺は意識を失ったときのことを思い出していた。 あの時なぜヴァライアは俺を狙ったのか、そしてきづいた。

 ーーその燃え盛る炎をもって、混沌すら焼き尽くせーー

「フレアエクスプロージョン」

 呪文を唱えると一瞬炎ができたが、次の瞬間散っていった。

「結構高等な魔法を使うようだが、無駄だよ。 ここは魔力を拡散させる牢なのさ」

「くっ、アターチさん! ここからでる方法はないのか!」

「なんだい? ここからでてどうすんだ? 外はザイガルフォンさまの部下でいっぱいだぜ。 でたところですぐお縄だぞ」

「くそっ! アディエルエがヤバイってのに!」

「おい! アディエルエさまがどうしたって!?」

 俺は話をすれば助けになるという言葉を聞いて、迷いはしたがワラにもすがる思いで、今までの話をアターチにした。


「......そうか、お前を囮《おとり》にアディエルエさまを脅したのかもしれんな」

「ああ、ここにアディエルエがいるかもしれない...... いないならいいが、もしいたなら俺のせいだ......」

「ふうむ......」

 アターチさんは少し考えこちらをみすえている。

「どうやら、あんたは用済みのようだな。 ここには番兵の一人もいない。 目的をはたしたからだろうな」

「ならアディエルエがとらえられた...... くそ!!」

 俺が地面を殴るのをみて、アターチさんはとめた。

「......やめておきな。 こんなところで怪我してたら、助けられるもんも助けられんぜ」

「助ける方法があるのか!!」

「まあ、落ち着けよ......」

 そういうと小声で俺へ話をする。

「......ここは元々、ザイガルフォンさまが作った【真魔】って組織のアジトだ」

「確か、魔族至上主義者の奴らか」
 
「そうそう、よく知ってるな。 だから町や村からは遠い、逃げても捕まる」

「だからってこのままなにもせずいるわけには!」

「まあ待ちなって、ここにはな転移ゲートがあるんだ」

「転移ゲート......」

「ああ、他の場所と場所とをつなぐ魔法のゲートだ。 そいつに入れれば逃げられる。 だけど、この牢から逃げられないなら、意味がない」

「なら、この牢を壊す」

 俺は部屋を探して牢の檻を壊せるものを探す。 

「なにもないさ、ただ魔法なら壊せるかもな」

「だけど魔法は拡散するって......」

「ああ、拡散させずに使うにはその檻に密着して使えばいい...... でもわかるよな。 そんなことすりゃ......」

 ーーその燃え盛る炎をもって、混沌すら焼き尽くせーー

「まて! まてって! 死ぬかもしれん!」

「それしか方法がない!」

「わかった! わかったよ」

 そういうとアターチさんは服のしたから、鍵のようなものを取り出した。 それを鍵のある場所の内側に向けると鍵が開いた。

「これは魔法の鍵でな。 鍵ならなんでも開けられるのさ」 

「先に...... いや今はいい! 頼む早くこっちも開けてくれ!」

「わかったよ。 ただ落ち着けよ。 いきなりとびだしたら、捕まるんだからな。 俺がゲートの場所を教えるからついてきな。 ああ、お前さん名前は」

「俺はマモルだ」

「わかったマモル、お前さんを信じよう」

 そういうとアターチさんは鍵を使い牢からだしてくれた。
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