おこもり魔王の子守り人

曇天

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第六十一話

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「まて! ラクレイ!」

「えっ? 何マモル」

 無詠唱で魔法をぶっぱなした。 当たった感覚があった。

 俺はトゥルースフィアで扉のほうをみる。 後ろに黒いローブの一団が見えた。

「何か大勢ローブをきたやつがいる! みんな構えろ!」

「ほう...... 我らの存在を気取るとは......」

 その低くて重いいやな声はどこかで聞いたことがあった。

「お前!? ベネプレスか!!」

 その時目の前が揺らめくとベネプルスとローブをきたもの五人が現れた。 四人ほどは倒れている。

「......あのとき以来だな。 さっそくだが、それを渡してもらおう......」

「これを手に入れてどうするつもりだ...... といっても答えてくれないか」

「......いけ」

 ベネプルスがそういうと、黒いローブの一団は空を揺らめきながら飛んできた。

「ハウリング!!」

 ガルムがそのローブをハウリングでとらえる。

 ーー大地に願う。 その偉大なる懐を侵すものに、戒めの獄《ひとや》をーー
 
「グランドジェイル!!」

 ラクレイが唱えると、床から無数の石柱が出てローブの者たちを貫いた。 だがローブの者たちはすり抜けるように迫ってくる。

「ダメだ! ほとんど効いてない!」

 ラクレイは叫ぶ。

(モンスターか、だがベネプレスの視界は防いだ...... いまだ)

 俺は静かに呪文を唱えるが、ローブの者たちはすぐそこまできていた。

 ーー深き深き漆黒よ、光の者を凍てつかせよ......ーー

「......シャドウアイシクル......」

 ーー我が領域に、その守護たる光の障壁をーー

「ライトオブシールド」

 ローブが放つ黒い影を橘さんの光の壁が防いだ。

「ガルム! ラクレイ!」

「おう!」
 
「うん!」

 俺たちは剣でローブの者たちを斬る。 ローブは切り裂いた。 ローブのなかにはおぼろげな骸骨が現れる。

「うわっ! 骸骨!?」

「ラクレイこいつらはレヴァナント、悪霊だ! 物理攻撃はあまり効かない! さわられると生命力を奪われるぞ!」
 
 ガルムに言われてて剣でその手を防ぎながら、すぐ橘さんの光の壁の中に引き返す。

「ガルム倒しかたは!! さっきのラクレイの魔法もあんまり効いてなかったぞ!」

「アンデッドには魔法だが、特に炎と光魔法だ!」

「確かに俺の魔法は効いてたな。 よし!」

「俺もやる! マモルは炎を放て!」

 ガルムがそういうと、俺たちは呪文を唱えた。

 ーーその燃え盛る炎をもって、混沌すら焼き尽くせーー 

「フレアエクスプロージョン」

 ーー吹きすさぶ風よ、なぎ倒し荒ぶり狂えーー

「ストームガスト」 

 俺の炎が、ガルムの渦巻く風をうけ螺旋状に吹き出し、前方のレヴァナントたちを焼き付くした。  

「やったか......」

「まだだ。 ベネプレスがいる! 気を抜くなよ」

「でもマモル、僕の柱ごと焼いたんだから、もう死んだんじゃない」 

 目の前にはラクレイの放った石柱が焼かれて崩れ落ちている。

(いや、そんな簡単に...... 後ろに魔力!?)

「......これほどとは...... やはり、魔王の側近だけのことはある......」

「なっ!?」

 後ろを振り向くと、黒い球体を手に持ったベネプレスの姿があった。

「いつの間に!」

「......お前たちは厄介だな...... ここで殺しておくか......」

 ーー無色、静寂の世界より、きたれ漆黒の闇ーー

「......ダークネスエクスプロージョン......」

「ライトオブフィールド!!」
 
 橘さんがとっさに光の防御魔法を展開するが、ペネプレスの放った闇はその光の壁ごと俺たちを吹き飛ばした。

「ぐっ!」

「ぐわっ!」

「うわぁ!!」

「きゃああ!」

(あれはアディエルエと同じ魔法か......)

「......ほう、生きている...... かなりの防御魔法...... 侮れんな」

 そうペネブレスは感心したように言う。

「俺に策がある...... まだいけるか...... みんな」

「ああ、なんとか」

「逃げられそうにないしね」

「ま、まだ行けるよ......」

「じゃあ、みんなあいつに攻撃を集めてくれ!」

 俺たちは立ち上がり、散開し攻撃を加える。

「......魔力も減ってきているな...... つぎでとどめをさすか......」

 そうベネプレスが目を閉じた。

 ーー風の刃よ、荒れ狂う暴風となり切り裂けーー

「ウィンドエッジサイクロン!!」

 ーー怒れる大地よ、その御手を眼前の敵にぶつけたまえーー

「アースハンマー!!」

 ーーみなの魔力に煌めく光の加護をーー

「マジックストレングス!!」

 橘さんに強化されたガルムたちの魔法がベネプレスに向かう。

「無駄なこと......」

 ーー無色、静寂の世界より、きたれ漆黒の闇ーー

「......ダークネスエクスプロージョン......」

 黒い炎球がガルムたちの魔法を吹き飛ばした。 こちらまで衝撃は伝わってきた。

「くそっ! 俺の最高の魔法が!」

「強化されてるのに! きかないなんて!」

「マモルくん!!」

 ーーその光より隠せ、影たるその御姿をーー

「シャドウムーブ」

「なに......」

 俺はベネプレスの影より出て剣でその首を切り裂いた。 ベネプレスは倒れた。

「やったか!!」

「マモル!」

「マモルくん!」

「まだだ!」

 近づこうとするみなを制しベネプレスから俺は飛び退いた。

 するときったはずの首がつながりベネプレスがたちあがる。
 
「なっ!?」

「クックック...... 気づいていたのか......」

 皆が驚くなか、そうペネブレスは不敵に笑った。
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