おこもり魔王の子守り人

曇天

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第七十話

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「それでここに来たのか......」

「ああ、少し調べてたくてな」

 俺は森を歩きながらガルムにいった。 昨日あったことをみんなに話し来てもらっていた。

「大きな魔力...... それモンスターじゃないの」 

 ラクレイがのんびりとした声でいう。

「わからんが、アービンさんが言うには、俺やヴァライアより大きかったと言うんだ」

「それはかなりだね...... その遺跡の中にいるのかも」

 橘さんがそう話したことで、俺は思いだした。

「ああそうだ橘さん。 あの遺跡にあった黒い石碑、びんちゃんはなんていってた」

「ん? ああ、あれ、え~と、メモってきたんだった」

 スマホを取り出し、じゃあいうね、といってメモの内容を話した。

『遥かなながきにわたる苦難の時をえて、我らここに滅びを決意し、神を封印す...... 残されしものたちよ、この犠牲をもって神の封印を守ることを切に願う』

「神を封印...... どういうことだ何かの比喩か?」

「封印したって神様がいたの?」

 ガルムとラクレイは首をかしげている。

「そう書いてるらしいの...... でもびんちゃんにも何だかわからないらしくて」

「わざわざあんなところに書いたんだから、これに何か意味があるのは間違いない......」

(神か......)

 俺たちは昨日アービンさんが言っていた遺跡を見つけた。

「ここか...... 確かに古いな」

「微妙にサードエリアにはいってるな」

 ガルムがスマホをみていう。

「それで見つかってなかったんだね」 

「この間の遺跡によくにてるね......」

「よし、入ろう」

 俺たちは遺跡へと入る。

 
「くっ! かなり強いな!」

 かなり遺跡を深くもぐると、そこではかなりの強さのモンスターが現れた。

「ああ、だが進めないってほどじゃないな!」 

「うん、十分戦えるね」

(ガルムとラクレイはかなり強くなったな。 バルディオに師事しているからか...... ん?)
 
「どうした? 橘さん」

「うん...... こんな強いモンスターがいたのに、いままで外に出てないなんておかしくない」

「......外に出られないよう魔法でもかけているのか......」

「それなら外にいたって言うでかい魔力はなんだ」

 ガルムが少し不安そうにそういった。

(確かに...... やはりおかしいな。 一応保険はかけておいたが......)

「しっ、 ほらあそこ......」

 ラクレイが指差す奥の部屋から大きな魔力を感じる。
 
「かなりの魔力だな......」

「......危険だが、いくしかないな」

「だね。 師匠からも調べてこいって言われてるしね」

「そうだね」

 俺たちは奥の部屋へと進んだ。

「あれは!?」

 そこは広くなっており、前の遺跡でみた黒い石碑があった。 だが俺が驚いたのはそこではなかった。

「あっ、魔王ちゃんのナイトくん」

 そこにいたのはあの白髪の少女だった。

「なぜお前がここに!」

「今日は魔王ちゃんはいないんだ。 この間、あのワンちゃんにかまれてビックリしたよ」

「マモルこいつはなんだ...... すげー魔力だが」

「こいつがベリタリスを殺して、アディエルエを狙ったやつだ......」

「この子が!」

 橘さんが驚いている。 

「なんで君たちがここにいるのかなぁ」

 そういってこちらに向かってくる。 その魔力は俺を越えている。

「気を付けろ! こいつアディエルエ並の魔法を使うぞ!」

 俺の声でガルムとラクレイが散開する。

「へえ......」

「かなり強いようだが、俺たち四人には勝てん! さっさと投降しろ」

 ガルムがそういうと、白髪の少女が顔を傾ける。 その前髪が動きルビーのように透明な赤い目が見えた。

(赤い目、アディエルエの目に似ている......)

「......確かに君たち四人と一人で戦うのはいやだな......」

 そういうと少女はニヤリと笑う。

 ーー彼方の地より、我の魂との契約によりきたれーー

「ディヴァインサモン......」

 そう唱えると、地面に複数の円形の魔方陣らしきものが現れ、無数のモンスターが現れた。

「なっ! モンスター!!」

「キャハハハ」

 少女の笑う声が響く中、そのモンスターがこちらへと迫る。

「ぐっ! こいつらかなり強いぞ!」

「みたこともないやつらだよ!」

「それより、この数...... まずいよ」

 俺たちは何とかそのモンスターを押し止めるだけだった。

「キャハハハ、ほらほら、そのままじゃ、いずれ食べられちゃうよ」

 白髪の少女がそう笑う。

「......いいや」

 そう俺がいうと、少女は吹き飛んだ。

「ぐはっ! なに!?」

 少女の後ろにヴァライアがいた。 俺がここにくるまえ保険に伝えてあった。 そして攻撃をくりだし少女を圧倒する。
 
「こ、こいつ......」

「お前が何者かはいてもらう」

「くっ!」 

 少女は影移動をしようとするが、ヴァライアが影に剣を突き立てられる。

「なっ!」

「この影は私の支配下になった。 もう移動はできん」

「がっ......」

 そして少女はヴァライアに一撃入れられ倒れた。 俺たちも何とかモンスターたちを倒した。

「なんとかなった......」

「マモル、ヴァライアさまを呼んでいたのか?」

 ガルムが近寄る。

「ああ、最悪の場合があるからな...... 正直このモンスターたちとあの女の子を相手にするのはきつい......」

「はぁ、そうだね。 このモンスターもすごい強さだった。 一体一体がBクラスはあったよ」

「あ、あの子、このモンスターを呼び出したよね...... 召喚魔法なんてあるの?」

 橘さんは驚いてガルムに聞いた。

「......古代にはそういう魔法もあったとは聞いたことはあったが、本当にみたことはないな」

「ほとんど都市伝説のようなものだね......」 

 ガルムとラクレイは口をつぐんだ。

「どうだ?」

 俺は少女を拘束しているヴァライアに近づく。

「ああ、気絶させた。 こいつには聞きたいことがあるからな。 しかし......」

「どうした?」

「この目......」

「アディエルエとおなじだな......」

「それだけじゃない...... 白い髪で赤い目、アディエルエさまの父君ラーゼエルさまとおなじだ......」

(アディエルエの父親と同じ...... 偶然だよな)

 だが俺はいやな胸騒ぎを覚える。

「......ヴァライアこいつは俺が連れていくから、早くアディエルエのもとに行ってくれないか」

「ん、ああ、わかった」

 そういってヴァライアは俺のダークルートで移動していった。

 俺は白髪の少女を背負う。

「こっちは黒い石碑の写真はとったぜ」 

「他にはなにもなさそう、早く帰ろう」

「そうね。 もうかなり魔力を消耗したから、ギルドに連絡しておくよ」

「ああ、帰ろう......」

 俺たちは足早に遺跡をでて帰った。
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