おこもり魔王の子守り人

曇天

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第七十四話

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 そこでは兵士たちとガルムたちが戦っている。

「なぜか急に兵士がおりてきたんだ!!」

「しかもこの人たち感情がないみたいで気持ち悪い!!」

 ガルムとラクレイは無表情で剣をふるう兵士たちに押されている。

「一旦部屋に戻ろう!」

「だけどこの人たち強いんだ!」

 そうラクレイにいわれ、俺は戦いに加わろうとする。

 ーーこの世界とかの世界をわかつ楔を打てーー

「アイソレーションフィールド......」

 アディエルエが唱えると、俺たちの前に赤色に光る壁できた。

「はあ、はぁ、これで少し...... 時間ができる」

「わかった。 早く部屋に!」

 俺たちは部屋へと入る。

「くっ、レグナンドに見つかったからか」

「どういうことだ?」

 ガルムたちにさっきの話をした。

「なっ、魂になった神が復活しようとしている!?」

「前の神の王がレグナンド、さっきの王様のそばにいた神官...... じゃあ、あのラグザックとかいう王様は?」

「多分...... アンデッドにされて操られてる...... 兵士たちも......」

 ラクレイの問いにアディエルエが答える。

「それで兵士たちは無感情なのか......」

「どうするマモルくん......」

 橘さんが不安そうに聞いてきた。

「ああ、セレンティナさんたちはモンスターを倒しながらだから、ここにつくには時間があるな」

「お前たち......」

 そこには呆然と立ったエセレニアがいた。

「こいつ、気がついて!」

 ガルムが剣を向ける。

「さっきの話しは本当か...... レグナンドさまがかつての神の王だと......」

「ああ、これをみろ」

 俺は宝物庫から手に入れた、魔剣バイザランディスを見せた。

「その剣...... まさか魔剣バイザランディス...... それは魔王の魔導器」

 そういうとエセレニアはうつむいた。

「レグナンドが持っていった...... あの杖は誰かの肉体に魂を乗り移らせる憑依の杖グラズアズラ......」

 アディエルエはそういう。

「魂を乗り移らせる...... 誰かの肉体...... まさか」

 その言葉を聞いてエセレニアは青ざめる。

「そう、ここにいる人たち...... 高い魔力を持ってるから......」

「そんな...... だったら私たちは長い間なんのために......」

 エセレニアは愕然としている。

「最初からだますつもりだったんだね」

 ラクレイはそういうと、アディエルエはうなづく。

「早くここからでないと...... ここの人たちが犠牲になる」

「なら、この壁を破壊するか」

「だめだ...... 魔法でもこの壁は壊せない...... 魔法を反射する素材だ」

 そう俺にエセレニアは言った。

「反魔法物質か...... 希少な鉱物だぞ」

「それをこれだけ集めるなんて」

 ガルムとラクレイが驚く。

「我たちが何世代もかけて、膨大な期間集めた鉱石で作った牢だ...... 魔法の類いは全く効かない...... だがここに普通の石がある。 ここからなら出られる」

 そういって壁の一部を剣でさして抜いた。

「とうして助ける?」

「私たちはお前たちに憎しみがあるが、何世代も騙されてきてなんて...... あいつら神の方が許せない」

 そうエセレニアは震える拳を握る。

「......今は力を借しておく、まずは皆を助ける......」

「そうだな。 行こう」

 俺たちは壁からそとに出た。 

「それでアディエルエ、レグナンドは何をしようとしてる」

「あの杖を使うには膨大な魔力が必要...... 並の魔力じゃ足りないから......」

 そうアディエルエがいう。

「おそらくアグラディバラスを使っているんだ。 だからみんなあんな風に...... モンスターの操作のためじゃなかったのか、ここを救いたかったのに逆に......」

 エセレニアはそう悔しそうに言った。

「そして更にランジェラングだ。 あの魔導器で更に広く魔力を吸収しているんだろう。 だから近くにモンスターがいなかったんだな」

 そうガルムがいった。

「レグナンドは城の上かな」

 ラクレイが言うとエセレニアは首をふる。

「......いや城にはいない。 おそらくあれだ」

 エセレニアが指差す遠くの方に、塔らしきものがみえる。

「ここは元々神たちが封印されているとレグナンドが言っていた。 だから私たちは世界に散った忌民たちをここに集めた...... だが」

「ここにいる人たちを、自分たちの器にするつもりだったのね」

 橘さんが言うとエセレニアは剣の柄を強く握った。

「行くぞ!」

 俺たちは塔へと向かった。 町を通り抜ける。 町の人々は前にみたときより、さらにぐったりしていて目が虚ろになっていた。

「兵士たちはいないね...... それにこの人たち周りも見えてない」 

「更に魔力を奪われているのか...... 俺も心なしか魔力が減っている気がするぜ」

 ラクレイがいうと、ガルムが走りながらいった。

「ああ、間違いない。 ここの人たちほどじゃないが、かなり魔力を奪われている」

「はぁ、はぁ」

「アディエルエ背負うか」

「いい...... 大丈夫......」

 肩で息をしながら走るアディエルエはいった。

(アディエルエの魔力が残り少ない...... 俺でもわかるくらいだ。 ここに長くいたからか、エセレニアも無くなりつつある」

「見えた塔だぞ!」

 そこには円柱の大きな塔が建っていった。
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