イセカイトレーダー ~取引《トレード》で異世界に建国する~

曇天

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第十六話

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 それから一ヶ月もすると、人も増え前の村より大きくなり町になった。 俺たちは呼び掛けも兼ねてグナトリアとし、服飾、調度品なども交易品として販売できるようになった。

「かなり、交易もうまく行ってるな。 人も五百人を越えた」

 俺は町につくった執務室でみんなの報告を聞く。

「はい、品質もいいので売れ行きは確実に増やしています」

 ミーシャは笑顔でそういった。

「土地の拡張も壁の強度も上げました。 ジャイアントでも簡単には
壊せません」

「魔法使いも増えた二十人はいる。 魔法スクロールを皆に配って同じぐらいの魔法は使える」

 クリュエとディラはそう報告した。

「町の衛兵も五十人ほどです。 皆に装備を与え訓練しています。 ジャイアントとまでは行きませんが、通常のモンスターならば補助なしで倒せます」

「そうですね。 大型のモンスターでも一体程度なら我々で対処可能です」

 セーヌとハクレイがそういう。

「問題点は?」

「農地は正直あまり芳しくはないわ。 ここは元々水がよくないの。 前の王国も水を確保するために、奥へと広げていったけど......」

「今は魔法で対処していますが、人が更に増えてくると、その問題がでてくると思います」

 アンナにクリュエが補足した。

「水か...... アンナ水の入手はどうすればいい」

「そうね。 西の奥には大きな湖があるのはわかってたわ。 でも周囲の国とモンスターに対する防衛でなかなか近づけなかったの」

「湖か...... 行けそうかなセリーヌ、ハイレン」

「正直無理でしょう。 現状、モンスターからの防衛と警戒にこの兵力でギリギリです。 もともと専門の戦闘員ではないですし、交易時の護衛もありますから」

「ですね。 そして他国の者がここを見に来ることはあります。 普通の観光客とは思えません。 おそらく偵察かなにかでしょう」

「狙ってきてるのか......」

「だけど、今のこの土地を得てもあまり意味がないでしょう。 それより盗賊なんかを警戒した方がいいかもしれません」

 リクルはそういうと、ミーシャもうなづく。

「お金をもっとためたり、食料をためたりすればきっと襲ってくるでしょうね」

「ならここの兵は減らせないな...... となると」

「ええ、冒険者ギルドで戦えるものを仲間にしましょう」

 そういうアンナと共に冒険者ギルドに向かうことにした。


「大丈夫かな......」

「大丈夫よ。 少なくとも一ヶ月は守りきれるわ。 五百個も、赤爆球、蒼氷球を準備したでしょ」

 俺とアンナは戦える仲間を探すべく、冒険者ギルドのあるベルベルクという国の王都にきていた。

「コウミさまとアンナさまですね。 確認しました。 あの掲示板で依頼の方探してくださいませ」

 冒険者ギルドの受付を済ませる。

「冒険者ギルドは各国にあるんだな」

「ええ、独立した組織よ。 モンスターはどこも脅威だからね。 自前の兵士を使うより育てる必要もないし、使い勝手がいいからどこの国でも支部があるわ」

 アンナはそういいながら、依頼書を確認している。
 
「ここで人材の募集してはどうかな?」

「それは危険があるわね。 盗賊たちが冒険者と兼用してる可能性もあるわ」

「俺ならクズの見分けはつくかもしれないけどな。 性格悪いやつや素行が悪いやつまではわからん」

「あなたのクズの定義がよくわからないわね。 ......まあ、それはおいといて、もちろん安全な人材もいるけど...... ほらここみて」

 依頼書にC以下と書いている。

「なんだこれ」

「これはランクよ。 多くの依頼を達成するとランクがあがり、それにより受けられる依頼、報酬があがるの」

「なら高いランクならそれだけ能力などが高く、安全ということだな。 Sってのがある...... 嘘だろ! 雇うのに100万かよ!」 

「ええ、当然ランクの高い者は安全だけど高額よ」

「一人ずっと雇うのも無理だな......」

「だから依頼をこなしつつ、低いランクで優秀か、信頼できる者たちを集めましょう」

「だな」

 俺たちはまず小さな依頼をこなすことにした。


「大丈夫かアンナ」  

 アンナは依頼のラージバットを仕留めていた。 

「ええ、この弓のおかげでね」 

 そういってアンナは赤い弓矢を見せた。 俺が作った【追尾の魔矢】《ホーミングアロー》だ。 魔力を伝えることで放った矢が相手を追尾する。

「これなら無駄にある私の高い魔力を使えるわ」

「魔力を使って扱う武具はほとんどない。 だから魔力に引っ張られる性質の魔引石を矢の棒に加工してもらって作った」 

「確かにバーンランスも、槍先の中に火炎草の液を濃縮したものをくっつけてつくったものね」

「ああ、何とか作れれば取引《トレード》できるようになるが、魔法の武具は作り方がわからん」

「魔法の武具...... さすがにそんなものを作れる人は、錬金術師くらいね。 そうそう見つからないわ」

「錬金術師か......」

 俺たちはラージバッド数体をギルドに持ち込む。

「これでDランクに上がりました。 最速ですよ!」

 興奮気味に受付に伝えられる。

「やっと下から二番目のDか」

「でもこれで受けられる依頼の数が増えるわね」

 掲示板でDランクの依頼を探す。

「これは」

「他の冒険者が依頼用に仲間を募ってるわ。 ちょうどDランクね。 明日ここで待ってるって依頼料は人数で分配ですって、報酬もすごいわ!」

「受けてみるか」

 次の日、俺たちはギルドにきていた。

 何人かが先にまっていた。

「ふざけるな!」

 怒号が飛び交う。

「なんだ?」

「いくら報酬がよくても、そんなヤバイ依頼受けられるか!」

「死ねといってるようなものよ!」

 次々と冒険者たちが去っていった。

「はぁ......」

 中心にいた大きな鞄を背負った赤い長髪の少女がため息をついた。 そして俺たちに気づいた。

「あなたたち! 依頼を受けてくれるんですか!?」

「内容によるけど、どうやらヤバイらしいな」

「ま、まあ、でもどうしても討伐したいんです!」

「内容は......」

「サンドワームの討伐です」

「えっ!? あなたDクラスでそんな危険なモンスターと戦おうとしてたの。 あれは懸賞金がかかってるモンスターよ......」

 あきれたようにアンナはそういった。

「サンドワーム?」

「巨大なミミズのようなものよ。 ジャイアントほどじゃないけど、かなりの強さのモンスターね。 Dクラスじゃ何人集めても無理よ」

「で、でも報酬はSクラスですよ! 懸賞金だって山分けです! 私のもっていた財産全部払いますから! 一緒にきてください!」

 少女は涙目でお願いしてくる。

「まあでも死んだら、いくら金をもっていても仕方ないからな」

「そうですが......」

 沈んだように少女は答えた。

「なにか策があるから、やろうとするんだろ。 どうするつもりだ」

「そう!! やれる! きっとです!」 

 そう力強くいう。

「ちょっと、受けるつもり」

「この子はクズじゃないからな。 クズの俺がいうから間違いはない」

「はぁ、わかったわ。 それでどうやって倒すの?」

「ふっふっふ、それは私の作ったアイテムです!」

「作ったアイテム...... そうか、それじゃあ」

 俺は帰ろうとした。

「まって!! 何で帰るんですか!」

「さすがにアイテムだけで倒せないだろ。 強力な魔法かなんかあるのかと思ったんだけど」

「ふっふっふ、私の作ったアイテムはそんじょそこらのアイテムとは違います」

「そうか、じゃあかんばってくれ......」

「だから帰らないで!」

「まあ、聞くだけ聞きましょう」

 アンナが俺を止め、あきれながらそういった。
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