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第十五話

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「すこしスッとしたわ」

「はい!」

 アンナがいうとクリュエが同調した。

「家や壁をアイテムや魔法スクロールに変えてしまうとは」

「確かに奪われるよりはましですしね」

 セーヌとハクレイがそういうとみんなうなづく。

「その場で取引《トレード》するしかないからな。 さて、ここからモンスターの生息域だ...... みんな用意はいいか、作戦通りにいくぞ!」

 壊れた門が見えてきた。

 俺たちが馬車を降りると、すぐにモンスターがこちらに感づき、迫ってくる。
 
「魔法使い部隊、魔法を!」

「おお!」

 近づいてくるモンスターに魔法を放ち倒した。

「よしみんなで門にはいる!」

 崩れた門の中にはいると多くのモンスターがこちらに気付き、向かってくる。

「投てき部隊、赤爆球を! 魔法使い部隊は壁、戦闘部隊は抜けてくるモンスターを迎撃!」

 アイテムを投げると爆発し、モンスターが宙をまい凍る。 魔法使いたちにはできるだけ外側に壁を作らせる。 近づいてくるものは剣や槍で倒した。

「何とかやれる! だいぶ減った」

「いや、あれ!」

 クリュエの声でみると、奥からこん棒をもった巨大な人型のモンスターが現れる。 

「ガアアアアアアア!!」

 そう咆哮した。
 
「あれは巨人か!」

「ジャイアントよ!」

 アンナがそう叫んだ。

 ジャイアントが振り回すこん棒で作った壁を壊されてしまう。

「投てき部隊、蒼氷球を足元に!!」

 大量に投げられた蒼氷球で、足元が凍りジャイアントがまごついている。 そこに魔法使いが更に魔法で畳み掛ける。

「あれはバリスタでやる! 前衛はモンスターの進攻をおさえろ! 他のものは作戦どおりに!」

(強いモンスター用に考えていたバリスタだ!)

 中央に斜めの石の台と離れた左右に俺は取引《トレード》で石柱をつくる。 みんなは裁縫で作った編み込まれた太い縄を馬車からだし、左右の柱にくくる。
 
「よしそのまま引っ張って!」

 アンナはそう指示をだすと、太い縄からでた紐をみんなで放射状に一斉に引きだす。

 家を変換したとき作った宝石で取引《トレード》を使う。

「くっ! バーンランス! 三十本!」

 三十本の槍を中央の台に並べる。

「前の者たち避けろ!! よし放て!!」

 前の者たちが待避するのをみて、みんなで引っ張っていた紐をはなした。

 ドシュッ! ドシュッ!! ドシュッシュッ!!!

 ドガァン! ドガァン!! ドガガァァン!!!
 
 次々と三十本の槍は、前方のモンスターたちとジャイアントに当たり爆発した。

「グオォォォ......」

 そう叫ぶとジャイアントは倒れ、その下敷きに多くのモンスターがつぶされる。

 それをみたモンスターたちは一斉に逃げ出した。

「やった...... やったーー!!」

 どこからともなく歓声があがった。

「なんとかなったな」

「ええ......」

 アンナも感慨深げだ。

「うっ......」

「大丈夫ですかコウミさん!」

「ああ、クリュエ......」

「多分魔力の使いすぎだ。 これだけのものを取引《トレード》した」

 ディラがそういうと、アンナがうなづく。

「みんな! 今日は馬車の荷物を外に出して、寝泊まりして!」

 みんなはそれぞれ荷物をだすと、馬車に眠った。

「一応ジャイアントの件もある。 動けるものは壁の作成と警戒にあたってほしい」

 セーヌとハクレイはみんなに指示を出した。

(みんなできてるな。 じゃあ、俺は明日のために眠るか......)

 俺は意識をなくすようにその日は眠った。

 次の日、目が覚めるとみんな壁を強化したり、畑をつくったりしていた。

「おはよう。 無理はやめてよ。 あのバーンランス一本魔力値700はするでしょ。 他にも取引《トレード》を使ってるんだから......」

 アンナがそう心配そうにいう。

「大丈夫だ。 寝たからかなり回復した」

 早速、倒したモンスターたちを媒介に家を交換し始める。  

 昼頃には碁盤のように家を百軒ほどたてた。

「ふぅ」

「お疲れ様。 この短時間で百軒も家を建てられるようになったわね」

「ああ、魔力も3万ぐらいまで増えたからな」

「とりあえず、これからどうする?」

「前と同じようにしてからだな。 もう少し奥へと広げていって、人を呼んで村から町にする」

「そうね。 奥には町が点在してるわ。 それに沿ってつくっていけば、いずれ王都までつくしね」

「ただ正直、人材と資材が足りない。 俺は魔力のあるものしか取引《トレード》できないからな」

「それは畑をつくり、交易がすればある程度は増えるでしょう。 人も国を失ったものを中心に貧しい者たちは大勢いますから」

 ミーシャがそういって近づいてくる。

「売れるものは服や、魔力で成長を促進した野菜、くだものか、他にも扱いたいけど、ミーシャ他になにかないかな」

「村人のなかには元職人も多くいます。 アクセサリーや家具などもつくれるでしょう。 そのために道具と素材が必要です」

「なら俺は、宝石や貴金属、木材なんかをつくるか」

「では私とリクルたちで更に道具を手に入れてきます」

 そういってリクルたちと馬車ででかけた。

「アンナ、ここにいた人たちはどこにいる?」

「みな、いろんな場所にでていってわからないわ...... 探しはしたけど」

「さすがに難しいでしょうね...... 十年も前なら。 まあここが大きくなればいずれ耳にもとどくでしょう」

 セーヌがそういうとアンナはうなづいた。

「セーヌとハクレイは訓練しながら、魔法使いたちをサポートしてくれ」

「クリュエとディラたち魔法使いたちは、壁の補強と拡張を頼む」

「わかりました」

「わかった」

 みんなそれぞれ自分の仕事を行う。

「私はどうする?」

「アンナは情報を教えてくれ。 特にこの近くの地形と他の国のことだ」

「そうね。 わかったわ」 

 アンナから情報を教えてもらいながら、取引《トレード》を行う。 

 俺たちはついに、自分達の領土《いばしょ》をてにいれた。

 
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