イセカイトレーダー ~取引《トレード》で異世界に建国する~

曇天

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第十四話

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 アンナに連れられ、国をこえて高い山を登る。 

「それにしても、バルバロにこびたりしなかったのね。 あなたならそういうことをしそうだと思ったけど」

「あいつにはこびても無駄だ。 余計増長する。 あいつは性根までクズだ。 クズの俺が保証する。 でなければ土下座してこびるさ」

「土下座するつもりだったの?」

「ああ、効果があればな。 だが意味がないなら、俺は土下座の無駄うちはしない」

 アンナにそういって俺は白い歯をみせる。

「カッコつけて名言みたいに言わないでよ」

 アンナにあきれられる。

「だが、ここまで来るのは大変だな。 馬車ではのぼれそうもないし、高齢者や子供もいる、ここまでこれるかな」

「下ならそこまで厳しい道じゃないわ。 ......本当はそちらかは行きたいんだけど...... ほら」

 山道から見下ろすと、荒廃し大きな町らしき廃墟が見える。 そこを多くのモンスターたちがかっぽしている。 そのなかには大型のモンスターもいるようだ。

「これは...... 町か」

「ええ、グナトリア王国、十年前滅んだ国よ」 

「十年前? それって......」

「そう私の国...... モンスターに滅ぼされたのよ。 セーヌのアンカレス王国のように......」

「ここは他の国に狙われなかったのか?」

「ええ、資源がなく、それほど豊かでもなかったし、支配してもモンスターの猛攻をしのげないと判断されたみたいね」

「なるほど...... 元滅んだ王国ならここを開拓すればいいのか、ただあのモンスターの数は驚異だな。 何とかして排除しないと」

「魔法使いは五人ほど、剣や槍、弓を使えるものは十五人ね。 二十人で倒しきれるかしら? それにすごく強いモンスターも現れるから、それで足りるとは思わないけど......」

「いや、蒼氷球や赤爆球や他にもつくれば、武器を扱えないものも戦える。 総力戦になるけどな」

「でもそんな数作れるの。 あと一週間もないのよ」

「いや、魔力ならある。 あとは訓練もしないと、すぐ帰ろう」

 俺たちは拠点に戻り準備に取りかかった。


 それから一週間、準備をして閉じた門の前で増やした馬車に荷物をのせていると、兵士たちがやってきた。 その後ろからバルバロがでてきた。

「ほう、でていく準備ができたか。 まあ税を払えば我が領民として迎えてやってもよかったのだがな。 クックッ」

 バルバロは俺たちを馬上からみて、笑いを噛み締めたようにいった。

「お前の領民になるのは願い下げだ」

「ふん! ならばさっさと失せろ! さあさ、ヴィンドアン伯爵、ここが我が領地です」

 そうバルバロは後ろの馬車に座る恰幅のよい老人に向かっていった。

「ふむ、バルバロどのよ。 彼らは一体?」

「ああ、ここに勝手に住んだ下劣な無法者ですが、我が温情にて罪にはといません」

 自慢気に語るバルバロのその姿を、その温厚そうな老人は怪訝な顔で見つめていた。

「少年...... それでかまわぬのか」

 老人は俺に聞いた。

「かまわないさ。 法は法だろ。 じゃあな」

 俺たちは兵士たちとすれ違いながら、森を抜けた。

 しばらくして、後ろから叫び声が聞こえた。

 馬がこちらに走ってくる。 バルバロだ。

「なんだ貴様なにをした!? 村にはなにもなかった! 壁も門側しかない! 中はモンスターたちが入ってきている!」

「ああ、そうだ。 別におかしかないだろう。 元々そういう土地なんだからお前らが捨てたんだろ。 元に戻してやっただけだ」

「なんだと!? だいたいなぜ家がない! 私が調べさせたときにはあったはず! どこへやった!」

「そんなことお前に関係ないだろ。 そもそも土地はお前のものかもしれないが、作ったものは俺たちのものだ。 それとも俺たちが作ったものもお前のものという法があるのか」

「ぐっ!! 貴様...... そこに住んでたお前たちは罪人なのだぞ! 法を破っておる! 捕らえて牢へとぶちこまれたいか!」

 そんな風に威圧してきた。

(こいつ腹立つな。 ぶっとばしてやろうか!)

「バルバロどの。 それは無理な話だ」

 馬車がちかづくと、ヴィンドアンという老人がいう。

「ヴィンドアン伯爵、なにをおっしゃいます!」

「貴公は先ほど、無断で住んだことを罪なしと申しておった。 貴族として一度口にだしたことを曲げるのはいかがなことか」

「ぐぐぐぅ」

 たしなめられバルバロは唇をかんだ。

「どうやら、非はこちらにありそうだの。 せっかく危険な地を開拓してくれた有能なものたちを失うことになるとは......」

 老人は悲しそうな顔をした。

「まあ、水路と畑はあるんだ。 何とかモンスターを倒して、農地だけでも守るといいよ」

「そうだな。 まことにすまなかった」

 謝る老人に礼をして俺たちは森を抜けた。
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