イセカイトレーダー ~取引《トレード》で異世界に建国する~

曇天

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第二十話

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「ここです......」

 リリンはスラム奥の小さな家へと手招きした。

「こんにちわー」

「おや? ひさしぶりだねリリン」 

 中にはいると奥から小柄なおばあさんがでてきた。

「サルビナさん。 おひさしぶりです!」

「で、今日は何を探しにきたんだい。 正直いまは、いいものはないよ......」

 周囲をみると、ひものやら何かの液体のはいった瓶やら、怪しげなものが棚においてある。

「いや、人を集めたいんだ」

「人を? どういうことだい」

 俺たちは事情を話した。

「ふむ、国をつくろうとしている...... か」

「それで人を集めたいんです。 どうですかサルビナさんも、素材屋としてモンスターに詳しいでしょう。 ねえコウミさん」

「そうだな。 何かの知識があるものは誰でも欲しいしな」

「ありがたいことだけどね...... そうもいかんのさ」

 サルビナは首をすくめた。

「ここに思い入れがありますものね」

 アンナがいうと首をふる。

「そういうことじゃない...... 動けないんだよ」

 そうサルビナは顔のシワを更に深くしてつぶやいた。

「どういうことだ? 町を監視している奴らと何か関係があるのか?」

「ああ、知ってたのかい...... この町はいまドルクスっていう盗賊崩れが支配しているのさ。 奴らの手下百人程度がこの町を監視している」

「なんで?」 

「誰かと取引しているって話だが、よくはわからないね...... ただこの町から出ていく者たちに制裁を加えて、閉じ込めているのさ」

 サルビナはため息をついた。

「ここは無法者の溜まり場なのに、誰も反抗しないのか」

「やつには、マルキアって凄腕の剣士がついていてね。 反抗した奴らは全員叩きのめされて、山の鉱山へ送られちまってる。 それに武器になるようなものは全部取り上げられちまってんのさ」

 そういって木のフォークを見せた。

「じゃあ、ここにいる奴らを仲間にできないってことか」

「連れて出ようとしても、捕まるね。 入るのは可能でも出るのは難しいよ。 あんたらも目をつけられんうちに帰んな。 あたしらはもう外には出られん......」

 そうサルビナは目を伏せた。


「参ったな」

「すみません...... まさか、こんなことになってるなんて」

 リリンはあやまった。

「リリンが悪い訳じゃないわ。 だけどどうする? あまりここにいるのは得策じゃないようよ」

「うーむ、ただ人材は欲しいな。 つまりドルクスとかいうやつを倒せばここを解放できるってことだ」

「でも、百人も部下がいるんですよ。 それに凄腕の剣士も......」

 自信なさげにリリンは答える。

「サンドワームを倒せたんだ。 方法はあるはず、まあアンナがあの光の剣で切り裂けば一瞬でおわるけど」

「いやよ! 殺人なんて! 使うのも怖いのに!」  

 アンナは本気で嫌がる。

「それなら、鉱山の方だな。 捕らえられたものたちを解放すれば戦力になる」

 山の方を見る。

「そうね。 解放できれば...... ただ百人の部下はどうするの?」

「それはアンナにちょっと相談がある」

「斬るのはいやよ」

 そういやな顔をしていうアンナに話をした。


「はぁ、疲れた。 あそこか......」

 山を進み鉱山の前まできた。 二十人ほどが武器をもって監視しているなか、屈強な男たちがトロッコに鉱物をのせて洞窟の中からでてきていた。

「ですね。 でもかなりの人数ですね。 二人で倒すのは無理そうです」

「ふむ、仕方ない。 二人で魔法を覚えるか」

 俺は取引《トレード》で魔法スクロールをだした。

「ほら、リリンこれを覚えろ」 

「こんな簡単にレア魔法のスクロールを出すなんて......」

「でもあまり強力なやつじゃない。 魔力を消費しすぎると必要なときに使えなくなるからな。 残量を考えて消費が少ない魔法だ。 仲間に前もって効果と魔力消費を予測してもらってる」

 俺たちは魔法を覚える。

「よし、いくぞ!」

「はい!」

 俺は一人鉱山に降りていく。

「おい! 何だお前ら!」

「いやぁ、ちょっと商人なんですけど迷子になっちゃって、帰り道教えてくれますぅ」

「はぁ? 怪しいな! おい!!」

 全員が俺を囲む。

「やっぱ無理か、しゃあない」

 ーー甘い吐息で、みなを夢へと誘えーー  

「スリーピングブレス」

「なんだこの香り...... ふぁ」

「な、眠い......」

 その場で眠りだした。

「うっ...... 俺も......」

 ゆっくりと俺は意識を失った。
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