イセカイトレーダー ~取引《トレード》で異世界に建国する~

曇天

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第三十五話

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「エントレス王!!」   

 狭い家部屋のなか、セーヌはベットに横たわる老人へとかけよった。

「お...... おお、セーヌか、無事であったか」

 王は力なく答えた。

 王は国陥落のさい、モンスターとよ戦いで怪我をおい、何とか逃げ延びたらしい。 そこを元騎士だった者や元国民に支えられ、ここに住んでいるという。

「ご無事でなによりです......」

「すまぬ...... 私に力があったなら皆をこんな目に遭わせることもなかったのに......」

「そのようなことはおっしゃらないでください。 生きていらしたことがなにより」

「そちらは......」

「こちらは私がお世話になっている国の代表コウミどのです。 アンカレスのものたちも多くすんでおります」

「それはご迷惑を、ですが国なきいま、あなたに頼る他ありません。 そのものたちを何卒よきはからいをたまわらんことを......」

 エントレス王は上体をおこし両手を合わせた。

「ああ、大丈夫、横になってくれ」

「ありがとう......」

 そうほっとしたような顔で横になった。


「さて、どうするか」

「............」

 外にでた俺はセーヌに聞いた。

「エントレス王のそばにいたいんじゃないのか?」

「確かに...... しかし私はグナトリアに使える身、今はヴァルヘッドが迫っているのです」

「気にするなよ。 お前がいたいほうにいた方がいい」

「そうね。 セーヌが決めた方がいいわ」

「......すみません......」

 セーヌは一時迷ったが頭を深く下げそういうと、俺が出した治療薬をもって家にはいった。


「さて、俺たちは帰るか」

「伝えたらハクレイたちも離脱するかもね」

 アンナが寂しそうにいった。

「かもしれない。 でも人はいたい場所にいるべきだろう。 いままでよくやってくれたし、寂しいが仕方ないことだ」

「......そうね」

 俺たちがゆっくりとあるきだす。 細い路地から大通りにでようとしたとき。

「おい聞いたか......」

「ああ、ここのことか」

 巡回している兵士たちの話しが聞こえてきた。

「どうやら、ここを放棄するようだ......」 

「本当か、やはりそうか」

(放棄......) 
 
 俺はアンナと顔を見合わせた。

「まあ、近場の鉱物なんかはほりつくしたしな。 町のものは数が多いだけで貧しいから税も期待できん」  

「ああ、奥にはモンスターが多くて進めんし、放棄はやむをえんな」 

「ここにいる奴らはどうなると思う......」

「まあ、そのままだろうな。 無駄飯食いなど必要ない。 勝手にモンスターが処分してくれるだろうと将軍たちが笑っていた」

「......ひどいな。 とはいえうちもどうなるかはわからん」 

「確かにな...... あの状態ではな」 

 兵士たちは深刻な顔でそういって前を過ぎていく。

「これって......」 

「このままってわけにはいかなくなったな。 しゃあないセーヌに伝えるか」


「そんなことが許されるわけがない!」

 セーヌがいきどおる。 俺たちは戻ってさっきの話をセーヌに伝えた。

「いや、そうなることは皆わかっていた...... ここには支配するだけの価値もないのだ...... 近隣の鉱山は最初から採掘量も少ない。 ゆえに兵力もままならなかった...... 我のいたらぬばかりにな」

 エントレス王は咳き込みながら話した。

「しかし、王が民に手厚い政策をしたから、豊かになったのです......」

「しかし、そのせいで軍備がおろそかになったのだ...... 我はここで最後のときを過ごす。コウミどの、最後のたのみだ。 ここから何とかして民たちを貴公の国へと逃してやってくれ」

 王の懇願に俺は無言でうなづいた。

「ありがとう...... セーヌよ。 ここにとどまりたいと行っておったが、お主は新たなる場所で生きよ。 そこでここの民とコウミどのを守れ、これは最後の命である......」

 そう王は言って床についた。


「くっ、そんな!」

 セーヌが壁を叩く。

「まあ、価値がない土地を放棄はこの世界では仕方ないことだ。 バストゥールもモンスターの攻撃を防御しながら、この土地を守るだけのメリットがないと判断したんだろう」

「しかし...... それではあまりにも......」

 悲痛な顔をしてセーヌは言葉を失う。

「でもここの人たちは説得しても来てはくれないんじゃないかしら」

「ああ、だからとりあえず、バストゥールにこの土地の権利を完全に手放させないと行けないな」

「!!」

 こちらをみてセーヌは驚いている。

「やつぱり、やる気なの」

「まあな。 今まで手伝ってくれたセーヌたちのためだ。 クズでもそのぐらいの恩は返す」

「すみません...... コウミどの」

 セーヌは涙ながらに頭を下げた。

「とはいえだ。 簡単にいきそうにない。 壁はあるが一部地域だけだ。 繋げるにも人材がいるし、グナトリアの兵を分割するのは危険だ」

「それに、ここの価値をあげてしまえば、バストゥールは手放さないわね。 どうするの?」

「......あの人に頼むか」

 俺たちはセーヌを残して馬車にのりこんだ。

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