オールバンク ~異世界で契約の力を得た俺は、世界をかえる選択を選ぶ~

曇天

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第二十九話『魔導王を信仰する国 』

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「まさか、【ボルフェム】さまがモンスターにされていたなんて......」

 ギルドの受付嬢に冒険者カードを渡すと言葉を失う。

「あの方は、この国の英雄...... それを止めていただきありがとうございました......」

 ギルド長は深く礼をして、俺たちに感謝をのべた。


「......さすがにかつての王にモンスターに変えられたなんて言えないですね」

 レンドはそうつぶやく。
 
「ああ、言ったとしても信じないし、宝玉のことは知られないほうがいい」 

「そうね。 なにも知らないほうが幸せなこともあるわ」

「ええ、でも取りあえず、これでモンスターが増えることはないでしょうから」

 ゼノフォスがそう言うと、しばし沈黙があった。

「正直、助かった...... 俺一人だと間違いなく死んでいたか、モンスターに変えられていただろう。 ただ......」

 俺は三人に頭を下げた。

「ならいいじゃない」

「いや、やはり今回のことも含めて危険すぎる......」

「カイトさん、俺はバカな頭で一生懸命考えてみたんです。 俺にとって本当の幸せってなんなのかって......」

「本当の幸せ......」

「ええ、俺はガキの頃から底辺でろくな生き方ができなかった。 それがカイトさんのおかげで冒険者になれた......」

「だが......」

「でも、そうじゃなかった」

「............」

「俺には選択肢はあったんだって、でもそれを選択せず、流されて裏社会に流れただけだった。 カイトさんに付いていく選択を選んだことで俺は幸せになれた。 だから俺は今回も選択したんです。 あんたに付いていくって!」

 レンドは笑みを浮かべその瞳は潤んでいた。

「レンド......」

「私も選んだのよ。 この旅には私の探している答えがある気がするの。 両親がなぜ生涯をかけて研究を続けたのかって...... 置いてくって言われても私は付いていくからね」

 そうディルセアは俺の目を強い目で見据える。

「......そうですね。 私には王家を継ぐという責務があります。 しかしそれは少し先の話...... それまでは冒険者です。 私の最後のわがままを通させていただきます」

 ゼノフォスが微笑んで答えた。

「そうか......」

(みんなの選択だ...... 俺が止めるのも違うんだろうな)

 俺はみんなの選択を受け入れた。


「次に調べるのは、バルジ教国ね」

「ああ、宝玉を返せと言っていたから、あそこから何者かに奪われたんだろう。 ヴェルザグかもしれない......」

「ただバルジ教国って......」

 そうレンドが眉をひそめると、ゼノフォスはうなづいた。

「ええ、スリアム国王だった【カーマイン】王を信仰する宗教国家です」

「カーマイン...... 信仰対象なのか」

「カイト、あんたなんにも知らないのね。 カーマインは【魔導王】の異名を持つ魔法使いよ。 ただ才能や容姿など優れた者以外を排除するその思想は他の国からは異端とされているわ」

(優性思想のようなものか......)

「あまりにも過激ですからね。 今はカーマインのその思想に共鳴する者たちが集まり宗教化して国となっています」
 
 ゼノフォスも眉間にシワを寄せる。

(あまりよい国ではなさそうだな)

 俺たちはバルジ教国のある【ブレアード大陸】へと向かうことにした。


「バルジ教国は優秀な人間しか入れないんだったら、俺たちが入れるのか?」

 ゼノフォスが用意した船で俺たちはブレアード大陸へと向かっていた。

「まあ、居住は無理ですが、入ることはできますよ」

 ゼノフォスが微笑んで答えた。

「それに私たちは冒険者だしね。 優秀といえば優秀とされるわね」

「......なんか、いけすかない国っすね......」

 レンドがふてくされたように言う。

「まあね。 だから異端宗教として、極寒のブレアード大陸に住んでいるの。 元々スリアムの領土だったしね」

「それでこんなに厚着なのか...... そんなところでよく生きていけるな」

「バルジ教国には魔法使いが大勢いまして、彼らが魔法や遺物《レリック》で国を守っているといいます」

「やはり、宝玉があるなら、遺跡か王宮か......」

「今は教団の聖堂になっているから、近づくのは無理じゃないかしら」

「それならカイトさんのオールバンクがありますしね」

 ゼノフォスが目配せした。

「ああ」

「?」

「どういうこと?」

 レンドとディルセアは不思議そうに見ている。

「着くぞ......」

 灰色の雲が空を覆い、雪に染まった山々が見える大陸が船から見えてきた。
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