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第三十話
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「さて! 新しい拠点もできたことだし、ダンジョンに向かいますか!」
晩餐会から三ヶ月後、アズワルドの中央都市バルフロンに、ギルドがたつ。 こちらにはペイスとムーサ、ヘカテー、シアリーズそしてカンヴァルにきてもらい、バールレは鈍色の女傑たちに任せた。
「なんかモンスターが見つかったら、持ってきてくれよ」
「私が鑑定しますね」
「ポーション作る......」
カンヴァルとムーサ、ヘカテーがそういう。
「私は新人を教育しているわ」
「お願い」
シアリーズには募集で集まった冒険者見習いの教育をお願いすると、私とペイスはダンジョンへと向かった。
「二人で大丈夫ですか?」
ペイスは少し不安そうだ。
「まあ、こっちのモンスターとはあまり戦ってはないけど、そんなにバールレと変わらないみたいだから平気だよ」
(最悪、予知も使えるしね......)
「やはり、人材が必要ですね」
森をあるきながらペイスがいった。
「だね。 一応新人が集まってきてるけど、ほとんどが戦闘もしたことない素人だもんね。 でもそれより魔法をつかえる人が欲しいよね。 回復とできれば錬金術を使える人」
「確かにヘカテーさんだけでは、負担が大きいですもんね」
「うん、ヘカテーにいくら才能があっても、多くの魔力が必要なポーションの量産は難しい。 回復魔法使いもあまりいないし、ポーションだよりなのがね。 ポーションが余れば新人を実戦で使えるんだけど...... まあ今は少しでもダンジョンを潰しておこう」
「はい」
私たちはダンジョンへと向かった。
「ふぃーきつかった」
「ですね」
私とペイスがギルドのソファーに座る。
「おつかれ二人とも! おっ! みたことないモンスター! あんがと!」
そういうとカンヴァルは、いそいそと私たちが持ってきたモンスターをかかえ工房へと向かう。
「お疲れさまでした! さすがです二人でコアモンスター討伐なんて! 信じられません!」
「......さまでした」
とムーサとヘカテーが私とペイスにお茶を持ってきてくれる。
「ありがと。 二人とも」
「ありがとうございます。 ムーサさん、ヘカテーさん」
「何かものすごい数のアイテムですね」
「うん、遺跡だったの、そこにはかなり遺物があって、どれを持ってきていいか、わかんないから持ってきた」
「少しだけにすればいいのに、こんなに持ってきて...... モンスターに襲われて危なかったですよ」
ペイスがあきれている。
「でも、モンスターにとられたり食べられたらもったいないじゃん」
ムーサは一つ一つとって鑑定している。
「でどう? なんかいいのある!」
「うーん、ほとんどガラクタですね」
「えー! あんなに苦労したのにぃ!」
私はソファーに倒れ込む。
「あっ、待ってください! これ」
ムーサはひとつの小さな指輪を手に取った。
「なに? なんかいいもの」
「これは魔法のアイテム、吸魔の指輪です。 周囲から魔力を吸いとり、装備者に供給します」
「へー、魔力が増えるんだ、使えそう」
「ヒカリ!」
「ん? なにペイス?」
「ほら、ヘカテーさん!」
「あっ!」
私たちがヘカテーをみる。
「?」
お菓子を食べるヘカテーはキョトンとしている。
「できた」
「おお! すごい! ポーションがすぐできた!」
「うん、前みたいに魔力を少しずつ時間をかけておかなくても、作れるようになった......」
ヘカテーは自分のつくった目の前のポーションをみて満足げだ。
予想通り、ヘカテーは吸魔の指輪でポーションの制作が倍近く速くなたたことで、ポーションを新人に持たせて実戦にくことができた。 そのおかげで新人はめきめきと強くなっていった。
「すごいねシアリーズ! 新人たちが上級モンスターも倒せるようになったの」
「そうね。 ヘカテーのポーションのおかげで、新人くんたちを実戦につれていけるようになったから」
そういって笑う。
「ヒカリ、お客様よ」
外にいたペイスが呼んだ。
「お客?」
私が外に出ると、そこにオノテーとレイアがいる。
「オノテー、レイア? どうしたのこんなところまで」
「じ、実はヘスティアさまが大変なのです!」
オノテーは焦ってそういった。
「ヘスティアが? まあ少し落ちついて入って」
「ふぅ、すみません」
お茶をだすと、少し落ち着いたようだ。
「それでヘスティアが大変ってどういうことなの?」
「はい...... 実はヘスティアさまに婚姻のお話がでていまして」
「ええ!? そうなのまだ17ぐらいでしょ、それで結婚するの」
「......ヘスティアさまはするおつもりなのです」
そういうとレイアは眉を潜める。
「ふぅん、でもヘスティアか決めたなら私にはどうしようも......」
「問題はそのお相手なのです......」
「相手?」
「ええ、ロキュプスクどのなのです」
「ええ!? なんで!! 奥さんいるじゃん!」
「あの方の奥方は息子のスライデンどのを生んだあと亡くなっております。 つまり独り身なのです」
「なんてこった...... でもなんでかなりの年の差でしょ」
「......ええ、ですがヘスティアさまの父君、ヴァーライト卿はヘスティアさまより家の安泰が大切なのでしょう。 ロキュプスクどのは大貴族筆頭となっております。 ロキュプスクどのとの婚姻が決まれば、家の安泰は確定です」
「それで政略結婚というわけね」
シアリーズが歩いてきてそういう。
「貴族の世界はそういうものだと聞いたことがおりますが......」
ペイスは悲しそうにいうと、ヘカテーとムーサも黙った。
「ヘスティアには間違いなく不本意でしょうね」
「ええ、ですが責任感の強いお方、家のことを考えおそらくこの婚姻を受け入れるはず」
レイアがそういう。
「だろうね。 全くヘスティアは融通が聞かないんだから、さっさと家なんて出ちゃえばいいのに!」
「まあ、貴族社会はそういうものなのよね」
シアリーズはそういう。
「何とかしたいけど、本人が受けてしまえば方法が......」
私は思案していると、それをみてシアリーズは口を開いた。
「あるわよ、ひとつだけね」
「ほんと! シアリーズ!」
「ええ、ちょっときついことだけど......」
シアリーズはその方法を伝えてくれた。
「......なるほど、仕方ない! やりましょう」
私がいうと、その場の皆がうなづく。
「じゃあ、シアリーズ婚姻阻止作戦をはじめるぞー!!」
私たちはそのための準備を始めた。
「本当にやるつもりですかヒカリ......」
ヘスティアが不安そうに聞いてくる。 目の前には大きな岩山の洞窟がある。
「ええ、気にはなっていたでしょ」
「それはもちろん...... ですがアガースは魔獣です」
そう私たちは魔獣を討伐にきていた。
「大丈夫よ。 私、ヒカリ、カンヴァル、シアリーズ、ムーサ、ヘカテー、ヘスティア、オノテー、レイアできてるんだから」
「ですか、ムーサどのまではこの前のこともありますが、ヘカテーどのは危険すぎます......」
「だいじょぶ、できる」
ヘカテーは両手を握りしめやる気十分だ。
「ヘカテーは魔力が高いから索敵能力が高いの、急に襲われても対処できるし、その場でポーションなども生成できるから」
「そうですか...... ずいぶん成長しましたね。 しかし、急に魔獣討伐だなんてどうしたのです」
ヘスティアがヘカテーの頭をなでながら、いぶかしがる。
「あ、あ、うん」
「かなり新人さんが強くなったので、更に新しい冒険者を募ってるんです」
まごついてると、ペイスが助け船をだしてくれた。
「なるほど、二体もの魔獣討伐するものたちがやっているギルドならば、希望者も増えますね」
「そ、そう。 グレイシア女王様からもアズワルド領内全域のモンスター討伐の依頼を受けてるからね。 人が足りてないのよ」
「ふむ、それなら納得です」
ヘスティアは納得している。
(ふー、納得したか...... あなたのためなんていったら、頑として言うことは聞いてくれないからね)
ペイスに目配せした。
「それでアガースってどんなモンスターなの」
「一つ目の巨人です。 神よりもたらされ、かつていくつもの町を滅ぼしたが、何とか旧文明の魔法使いがこの洞窟へと呼び寄せ封印したのですが、ここで暴れているらしく、それに驚いたモンスターたちが群れになって襲ってくることがあるんです」
「それであそこにも巨大な壁があるのね」
シアリーズが振り返り巨大な石の防御壁をみている。
(神...... か)
私たちは洞窟内へと進む。 ヘスティアの話の通り中はモンスターがいない。
「本当にモンスターはいないね。 外にはかなり強いモンスターもいたのに」
「ですね。 ということは伝承は本当なのでしょうか」
「おそらく、数百年前、国から集められた勇者がここへと向かったけど、少数は帰ってきています。 帰った者たちの話ではアガースは不死だったという記述が残っています」
ヘスティアがそう答えた。
(不死のアガースか......)
「もったいないな。 この洞窟かなり鉱物がある。 鉱脈なんだろう」
カンヴァルが壁をさわりながらそういった。
「なら倒したら、かなりの鉱物がとれるのかも。 ああそうだ、ヘスティア、それでアルテはどうしてるの?」
「今は城の中で行儀作法、または勉学に励んでおられます......」
ヘスティアの表情がくもる。
「まあ、軟禁中ってことだね」
「......しかたないのです。 王族、貴族にはその地位に見合った振る舞いや行動が求められています。 得られる権利には義務がつきまとうものですから......」
そうヘスティアは口を結んだ。
(ヘスティアもそうだもんね)
しばらく先に進むと突然天井が高くなっている。
「すごい。 声が反響する」
「うん...... ものすごい広いし高い......」
ムーサとヘカテーは周囲を不安そうにキョロキョロみている。
「見てみなよ...... これ」
カンヴァルが指差すとと、そこには砕かれた石の柱のようなものがみえる。
「これってどうみても人工物...... ただの石とも違うみたいね。 ほのかに光っている」
「つまり遺跡ですね」
シアリーズとペイスがそういってうなづいた。
周囲を明かりで照らすと、石でできた建造物らしきものが周りを埋め尽くしている。
「街...... みたいだな」
ヘスティアが一つの文字を書いた金属の板を拾う。
「それ見せてください」
ムーサがその文字をみている。
「多分、看板ですね。 宿とかいているみたいです」
「読めるの!?」
「ええ、すこしだけ」
「さすがムーサさんです」
「うん、ムーサはすごいの......」
「へへ......」
ペイスとヘカテーにいわれムーサは照れている。
カンヴァルがその金属板をまじまじと見つめる。
「旧魔法文明の魔法金属、帰って調べよう」
「なにかいる......」
ヘカテーがふいにいった。
晩餐会から三ヶ月後、アズワルドの中央都市バルフロンに、ギルドがたつ。 こちらにはペイスとムーサ、ヘカテー、シアリーズそしてカンヴァルにきてもらい、バールレは鈍色の女傑たちに任せた。
「なんかモンスターが見つかったら、持ってきてくれよ」
「私が鑑定しますね」
「ポーション作る......」
カンヴァルとムーサ、ヘカテーがそういう。
「私は新人を教育しているわ」
「お願い」
シアリーズには募集で集まった冒険者見習いの教育をお願いすると、私とペイスはダンジョンへと向かった。
「二人で大丈夫ですか?」
ペイスは少し不安そうだ。
「まあ、こっちのモンスターとはあまり戦ってはないけど、そんなにバールレと変わらないみたいだから平気だよ」
(最悪、予知も使えるしね......)
「やはり、人材が必要ですね」
森をあるきながらペイスがいった。
「だね。 一応新人が集まってきてるけど、ほとんどが戦闘もしたことない素人だもんね。 でもそれより魔法をつかえる人が欲しいよね。 回復とできれば錬金術を使える人」
「確かにヘカテーさんだけでは、負担が大きいですもんね」
「うん、ヘカテーにいくら才能があっても、多くの魔力が必要なポーションの量産は難しい。 回復魔法使いもあまりいないし、ポーションだよりなのがね。 ポーションが余れば新人を実戦で使えるんだけど...... まあ今は少しでもダンジョンを潰しておこう」
「はい」
私たちはダンジョンへと向かった。
「ふぃーきつかった」
「ですね」
私とペイスがギルドのソファーに座る。
「おつかれ二人とも! おっ! みたことないモンスター! あんがと!」
そういうとカンヴァルは、いそいそと私たちが持ってきたモンスターをかかえ工房へと向かう。
「お疲れさまでした! さすがです二人でコアモンスター討伐なんて! 信じられません!」
「......さまでした」
とムーサとヘカテーが私とペイスにお茶を持ってきてくれる。
「ありがと。 二人とも」
「ありがとうございます。 ムーサさん、ヘカテーさん」
「何かものすごい数のアイテムですね」
「うん、遺跡だったの、そこにはかなり遺物があって、どれを持ってきていいか、わかんないから持ってきた」
「少しだけにすればいいのに、こんなに持ってきて...... モンスターに襲われて危なかったですよ」
ペイスがあきれている。
「でも、モンスターにとられたり食べられたらもったいないじゃん」
ムーサは一つ一つとって鑑定している。
「でどう? なんかいいのある!」
「うーん、ほとんどガラクタですね」
「えー! あんなに苦労したのにぃ!」
私はソファーに倒れ込む。
「あっ、待ってください! これ」
ムーサはひとつの小さな指輪を手に取った。
「なに? なんかいいもの」
「これは魔法のアイテム、吸魔の指輪です。 周囲から魔力を吸いとり、装備者に供給します」
「へー、魔力が増えるんだ、使えそう」
「ヒカリ!」
「ん? なにペイス?」
「ほら、ヘカテーさん!」
「あっ!」
私たちがヘカテーをみる。
「?」
お菓子を食べるヘカテーはキョトンとしている。
「できた」
「おお! すごい! ポーションがすぐできた!」
「うん、前みたいに魔力を少しずつ時間をかけておかなくても、作れるようになった......」
ヘカテーは自分のつくった目の前のポーションをみて満足げだ。
予想通り、ヘカテーは吸魔の指輪でポーションの制作が倍近く速くなたたことで、ポーションを新人に持たせて実戦にくことができた。 そのおかげで新人はめきめきと強くなっていった。
「すごいねシアリーズ! 新人たちが上級モンスターも倒せるようになったの」
「そうね。 ヘカテーのポーションのおかげで、新人くんたちを実戦につれていけるようになったから」
そういって笑う。
「ヒカリ、お客様よ」
外にいたペイスが呼んだ。
「お客?」
私が外に出ると、そこにオノテーとレイアがいる。
「オノテー、レイア? どうしたのこんなところまで」
「じ、実はヘスティアさまが大変なのです!」
オノテーは焦ってそういった。
「ヘスティアが? まあ少し落ちついて入って」
「ふぅ、すみません」
お茶をだすと、少し落ち着いたようだ。
「それでヘスティアが大変ってどういうことなの?」
「はい...... 実はヘスティアさまに婚姻のお話がでていまして」
「ええ!? そうなのまだ17ぐらいでしょ、それで結婚するの」
「......ヘスティアさまはするおつもりなのです」
そういうとレイアは眉を潜める。
「ふぅん、でもヘスティアか決めたなら私にはどうしようも......」
「問題はそのお相手なのです......」
「相手?」
「ええ、ロキュプスクどのなのです」
「ええ!? なんで!! 奥さんいるじゃん!」
「あの方の奥方は息子のスライデンどのを生んだあと亡くなっております。 つまり独り身なのです」
「なんてこった...... でもなんでかなりの年の差でしょ」
「......ええ、ですがヘスティアさまの父君、ヴァーライト卿はヘスティアさまより家の安泰が大切なのでしょう。 ロキュプスクどのは大貴族筆頭となっております。 ロキュプスクどのとの婚姻が決まれば、家の安泰は確定です」
「それで政略結婚というわけね」
シアリーズが歩いてきてそういう。
「貴族の世界はそういうものだと聞いたことがおりますが......」
ペイスは悲しそうにいうと、ヘカテーとムーサも黙った。
「ヘスティアには間違いなく不本意でしょうね」
「ええ、ですが責任感の強いお方、家のことを考えおそらくこの婚姻を受け入れるはず」
レイアがそういう。
「だろうね。 全くヘスティアは融通が聞かないんだから、さっさと家なんて出ちゃえばいいのに!」
「まあ、貴族社会はそういうものなのよね」
シアリーズはそういう。
「何とかしたいけど、本人が受けてしまえば方法が......」
私は思案していると、それをみてシアリーズは口を開いた。
「あるわよ、ひとつだけね」
「ほんと! シアリーズ!」
「ええ、ちょっときついことだけど......」
シアリーズはその方法を伝えてくれた。
「......なるほど、仕方ない! やりましょう」
私がいうと、その場の皆がうなづく。
「じゃあ、シアリーズ婚姻阻止作戦をはじめるぞー!!」
私たちはそのための準備を始めた。
「本当にやるつもりですかヒカリ......」
ヘスティアが不安そうに聞いてくる。 目の前には大きな岩山の洞窟がある。
「ええ、気にはなっていたでしょ」
「それはもちろん...... ですがアガースは魔獣です」
そう私たちは魔獣を討伐にきていた。
「大丈夫よ。 私、ヒカリ、カンヴァル、シアリーズ、ムーサ、ヘカテー、ヘスティア、オノテー、レイアできてるんだから」
「ですか、ムーサどのまではこの前のこともありますが、ヘカテーどのは危険すぎます......」
「だいじょぶ、できる」
ヘカテーは両手を握りしめやる気十分だ。
「ヘカテーは魔力が高いから索敵能力が高いの、急に襲われても対処できるし、その場でポーションなども生成できるから」
「そうですか...... ずいぶん成長しましたね。 しかし、急に魔獣討伐だなんてどうしたのです」
ヘスティアがヘカテーの頭をなでながら、いぶかしがる。
「あ、あ、うん」
「かなり新人さんが強くなったので、更に新しい冒険者を募ってるんです」
まごついてると、ペイスが助け船をだしてくれた。
「なるほど、二体もの魔獣討伐するものたちがやっているギルドならば、希望者も増えますね」
「そ、そう。 グレイシア女王様からもアズワルド領内全域のモンスター討伐の依頼を受けてるからね。 人が足りてないのよ」
「ふむ、それなら納得です」
ヘスティアは納得している。
(ふー、納得したか...... あなたのためなんていったら、頑として言うことは聞いてくれないからね)
ペイスに目配せした。
「それでアガースってどんなモンスターなの」
「一つ目の巨人です。 神よりもたらされ、かつていくつもの町を滅ぼしたが、何とか旧文明の魔法使いがこの洞窟へと呼び寄せ封印したのですが、ここで暴れているらしく、それに驚いたモンスターたちが群れになって襲ってくることがあるんです」
「それであそこにも巨大な壁があるのね」
シアリーズが振り返り巨大な石の防御壁をみている。
(神...... か)
私たちは洞窟内へと進む。 ヘスティアの話の通り中はモンスターがいない。
「本当にモンスターはいないね。 外にはかなり強いモンスターもいたのに」
「ですね。 ということは伝承は本当なのでしょうか」
「おそらく、数百年前、国から集められた勇者がここへと向かったけど、少数は帰ってきています。 帰った者たちの話ではアガースは不死だったという記述が残っています」
ヘスティアがそう答えた。
(不死のアガースか......)
「もったいないな。 この洞窟かなり鉱物がある。 鉱脈なんだろう」
カンヴァルが壁をさわりながらそういった。
「なら倒したら、かなりの鉱物がとれるのかも。 ああそうだ、ヘスティア、それでアルテはどうしてるの?」
「今は城の中で行儀作法、または勉学に励んでおられます......」
ヘスティアの表情がくもる。
「まあ、軟禁中ってことだね」
「......しかたないのです。 王族、貴族にはその地位に見合った振る舞いや行動が求められています。 得られる権利には義務がつきまとうものですから......」
そうヘスティアは口を結んだ。
(ヘスティアもそうだもんね)
しばらく先に進むと突然天井が高くなっている。
「すごい。 声が反響する」
「うん...... ものすごい広いし高い......」
ムーサとヘカテーは周囲を不安そうにキョロキョロみている。
「見てみなよ...... これ」
カンヴァルが指差すとと、そこには砕かれた石の柱のようなものがみえる。
「これってどうみても人工物...... ただの石とも違うみたいね。 ほのかに光っている」
「つまり遺跡ですね」
シアリーズとペイスがそういってうなづいた。
周囲を明かりで照らすと、石でできた建造物らしきものが周りを埋め尽くしている。
「街...... みたいだな」
ヘスティアが一つの文字を書いた金属の板を拾う。
「それ見せてください」
ムーサがその文字をみている。
「多分、看板ですね。 宿とかいているみたいです」
「読めるの!?」
「ええ、すこしだけ」
「さすがムーサさんです」
「うん、ムーサはすごいの......」
「へへ......」
ペイスとヘカテーにいわれムーサは照れている。
カンヴァルがその金属板をまじまじと見つめる。
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「なにかいる......」
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