冒険者ギルド始めました!

曇天

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第二十九話

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「ヒカリしっかり!! 大丈夫ですか! ヒカリ!!」

「うっ...... あれ、ヘスティア......」

 私が目を覚ますはヘスティアに揺さぶられていた。 後ろにオノテーとレイアもいる。

「まさか、一人でこんなものと戦うなんて......」

 そういってヘスティアは倒れたモンスターをみている。 モンスターの周りには驚いている騎士団員たちがいた。

「なんで騎士団が?」

「ここの遺跡から大量にモンスターが出てきていたから討伐にきたんです。 最近騎士団もモンスターもダンジョン討伐に積極的なのですよ......」

「ええ、おそらく、民間がしているのにと、焦っているのでしょうね。 でもここは先遣隊30名が逃げ帰ってきたのに...... たった一人でなんて」

 そういってオノテーとレイアは驚いている。

「ちょっと試したいことがあって...... あっ! ペイスたちには黙ってて! 怒られるから!!」

 そういうとあきれた表情をした。

「......まあ、いいでしょう、あなたにはイフィルムの件でも世話になってますし......」

「ギルドのこと?」

「ええ、イフィルムの店は商業ギルドに目をつけられたのです。 正確には大手の服飾店ですが...... あなたのギルドに入れるならそれは良かったです」

「なら、最初からそういってくれればいいのに」

「大貴族が特定の業者に便宜をはかるわけにはいかないのですよ。 私はギルドのオーナーでもないですし、家からも他の貴族に隙を見せるなと、強くいわれていまして......」

 申し訳なさそうにヘスティアが目を伏せた。

「貴族って面倒、さっさと縁きって貴族やめちゃえば、ヘスティアならうちのギルド大歓迎だよ」

 そういうと、こちらを驚いたような顔でみている。

「あそうですね。 それができれば一番いいのですが...... ここまで貴族としての恩恵を得ておいて、責任をとらずに逃げ出すのも卑怯でしょう」

「まじめ~ まあそこがヘスティアらしいけど...... まあなんかあったらいってよ」

「......ええ、それより大丈夫ですか」

「うん、このヘカテーのハイポーションがあるからね」

 私は鞄から瓶を取り出し、緑の液体を飲み干した。

「ぶぇえ、まっずぅ!」

 それをみてヘスティアたちは笑っている。

 
 私はヘスティアたちにモンスターの輸送を頼み、帰路に着いた。

(でも、これで予知の力をある程度使いこなせる...... あの頭痛もくるとわかっていたら耐えられないほどじゃない。 でもあと問題は終わったあと意識を保てるかね......)

 そんなことを考えながら歩いていると、店の前にペイスがたっているのが見えた。

「ヒカリ...... また何かしたのではないですか?」

 悲しげにこちらをみていう。

(ヤバッ)

「や、やだなぁ、ちょっと戦闘の練習してただけだよ」

(嘘じゃないよね)

「はぁ、もう心配はかけさせないでくださいね」

 いっても無駄だと思ったようだ。

「それより受付の三人はどうしたの?」

「ええ、かなりできるようになりました。 私たちが晩餐会に行くまでには間に合いますね」

「そう、よかった。 でもペイスお腹空いたんだけど今日のご飯なーに~」

「はい、はい、できてますから早くはいってください」

「はい~」

 私はスキップして店にはいった。


「ほぁ~」

 私はその城をみて声をあげた。 目の前には壮麗な白亜の城、私たちはアズワルドの晩餐会にきていた。

「それにしても......」

 みんなをみてみる。 イフィルムさんに繕ってもらったドレスをきて皆とても綺麗になっていた。 馬車から降りたとき、周囲の人々がこちらに目を奪われているのがわかったぐらいだ。

「みんな似合ってる! どこかの国のお姫様のようだよ」

「イフィルムさんのドレスはどれも素晴らしいですものね」

 ペイスがそういった。

「あたしはちょっとこのヒラヒラ苦手かな」

 そうスカートをカンヴァルはヒラヒラさせている。

「似合ってますよ。 カンヴァルさん。 ねっヘカテーさん」 

「うん...... きれい」

「そ、そうかい、ありがと」

 ムーサとヘカテーにいわれてカンヴァルは照れた。

「ムーサさんとヘカテーさんもお人形さんみたいですよ」

 ペイスがそういうと二人は顔をあかくしてもじもじしている。

「ふむ、ふむ、みんな似合ってるかわいいよ!」

 大満足のなか、城のなかへと進む。

 周囲にいた兵士や貴族たちも私たちが歩くと、振り返りみとれている。

「なんと、うしくしい」

「ほんと、どこかの貴族か王族かしらね」

「あのドレスも素晴らしい」

「あの赤い髪の少女、とても美しいな」

「ふむ、それに、あの長身の女性はとてもエレガントだな」

「あの二人の小さな少女の可憐なこと」

(ふむ、ふむ、そうなのよ。 この子たちはすごいのよ! もっといって、もっと...... ん?)

 そのときはたと気づいた。
 
(わ、私だけなんにもいってもらえてない!)

 ショックをうける。

「どうしましたヒカリ?」

「なんでもない......」

 ため息をつきながら前に進む。 中央の部屋では多くの人が歓談していた。

「ふあ、すごい人だね」

「先生! みなさん!」

 向こうからアルテとヘスティアが近づいてくる。

「あっ、アルテ、最近来ないけど心配してたんだよ」

 私がいうと、さみしそうにうなづいた。

「......はい、少し忙しくて、それにしてもみなさん素敵ですね。 私なんかより、よほど姫みたいですよ」

「まあね!」

「否定しましょうヒカリ......」

 ペイスがあきれている。

「ペイスさん! アルテさま! こちらに美味しそうなケーキがありますよ!」

「ある」

 ムーサとヘカテーがそういう。

「先生また......」

 そういってアルテはペイスたちとはなれてくが、その横顔は寂しそうだった。

「なんか変じゃないアルテ」

 ヘスティアに聞くとうなづく。

「アズワルドの一件で、無茶をされたましたからね。 監視がきつくなったのです。 私もですが、姫様のお体は大切ですから......」

「さすがにそうだろうね」

「ええ、アルテさまになにかあれば王位継承に関わります。 今まで黙認されてきたことが、通らなくなっているのです。 すぐ婿をとるべき、という声まであります」

「まだ、子供じゃない!」 

「だが、お世継ぎがいないと国の混乱を招きますから、特にブレイルド共和国が不穏な動きをしているんです」

「ブレイルド共和国? 確か東の大国だったっけ?」

「そうです。 近隣諸国を実質支配下においた軍事国家です。 元老院がおかれ王政を否定し、他の王国を併合しています」

「自分達だって、貴族でしょ」

「そうですが、王政制度下で不満を持つ者たちを操り、地位ある者を金や女などでろうらくし、その有り余る資金力で他国の経済を疲弊させ、経済及び武力による恫喝で屈服させています。 そうやって他国を実質傘下におさめているようです」

「そのブレイルドがバールレ王国を狙っているの?」

「ええ、元々バールレは豊かな国ではなく、モンスターの増加でかなり荒れていたのですが、それがヒカリ、あなたたちのおかげでモンスターたちも減り、農作地も戻り経済も安定してきましたからね」

「それで狙われた......」

「そうみなが噂しています。 元々我が国は、それほど軍備には力をいれていなかったですしね」

「まあ、騎士団があんなのじゃあね」

「それはいわないでください...... これでも、かなりましにはなっているんです」

「それで後継者争いで国を割りたくないから、アルテの行動に過敏になっている...... と」

「でうですね。 それはアルテさまだけではないですが......」

 ヘスティアは口を閉じる。

「じゃあ、ここにきてる暇ないんじゃないの?」

「いいえ、この国とも友好関係を強化したいのです。 まあ、女王を復権させたことでアズワルドとの関係は磐石になりました。 それはヒカリたちのおかげです」

「アルテとヘスティアもでしょ」

「ふふっ、そうですね」

 そのとき、歓声がわく、みると奥から女王グレイシアが現れた。

「みなさま。 今日は晩餐会にきていただきありがとうございます。 つきましては、わたくしから皆様に紹介したきことがあります」

 そういうと私の前に女王は近づき私の手をとった。

「先刻、わたくしを幽閉から解き放ち、この国を救ってくださったヒカリさまとお仲間の方々です」

 そういうと周囲から歓声と拍手が起こる。 

「ヒカリさま。 本当にありがとうございました」

「いやーそれほどでも、シアリーズを仲間にしたかっただけですしね」

「シアリーズ...... 本当はこの城に残ってほしかったのですが...... それでヒカリさまにお願いがあるのですが......」

 女王は少しいい淀んだ。

「なに?」

「実は...... 国内が混乱したため、野盗や山賊、無法者たちのため、兵士をモンスター討伐に向けられません。 ヒカリさまは冒険者ギルドを作られたとのこと、この国にもそのお力お貸しいただけませんか」

「モンスター討伐か、てもこの国に拠点がないから、宿を押さえたり大変なんだけど」

「ならば支部をお作りくださいませんか、この国の土地を提供しますし、建設費ももちろん支出します」

 そう女王に懇願された。

(支部か...... 確かにバールレはかなり安定してきた。 もう私たちがいなくてもモンスターの討伐は可能だしな)

「わかった! こちらに支部をたてるよ!」

「本当に! ありがとうございます!」

 グレイシア女王はそう喜んだ。 こうして私たちはアズワルドに新たな拠点を置くことになった。

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