17 / 66
第十七話
しおりを挟む
「なるほど、その子はお前が拾ったのか」
「はい! 私はティンクル! 卵のときに拾われて、ねえさまに育ててもらったのです」
ティンクルはちょこんと正座し、元気よく答えた。
「うむ、ドラゴンは長命とはいえ、あの戦乱で生きているとはおもわなんだが、一本角でモフモフの青いドラゴンは珍しい、もしかしてと思ってな」
「はい、それに私はねえさまがいなくなってすぐ、国から逃げて人里離れた山で冬眠していたのです。 ですが最近、ふと目が覚めたのです。 おそらくねえさまの魔力を感じとったからでしょう」
ディンに寄り添って笑顔でそういう。
「ふむ、元気そうでなにより」
「ねえさまは復活されてなにを? ついに国を取り戻すのですか!」
「いや、世界が平和ならば余は特になにもせん。 つい今の世界がどうなったかをみにきただけだ」
「そうですか...... では、私はねえさまについていきます!」
「なに!? 俺のアパートか!」
「だめですか......」
うるんだ瞳でみてくる。
「うっ......」
「かまうまい。 どうせ余たちの部屋に住むのだ」
「かまうわ! 女の子だぞ!」
「余も女の子だそ」
不満そうにディンそうこたえる。
(確かによく考えたら、俺、ディンとずっとくらしてたな...... こんなかわいいし料理もうまい。 なのになにも起きないなんて...... 魔王だからか、いやちがうな残念だからだな)
「なぜ余をあわれみの目でみてくる......」
ディンはいぶかしげにいった。
「ああ、もういいよ。 一人ぐらいなら一緒だ」
「ありがとうございます! サキミさま」
そうティンクルは喜んでいる。
「さて、他は暗黒大陸のモンスターはいなさそうだな。 疲れたから、魔王に会うのは今度でよかろう」
「そうか、なら帰るか! アパートで不労所得の人生だ!」
「ならば私がお連れしましょう」
そういうと、ドラゴンになったティンクルの背にのり俺たちはアパートに戻った。
「さ、さむぅ」
「さ、寒い」
「すみません。 あまり低いと見つかっちゃうので」
「ああ、あれ? ここだよな」
空高く飛んでいるティンクルの背中から眼下の森をみる。
「うむ、確か...... あそこに人がおる。 ティンクル奥の方に降りてくれ」
「はーい」
森の奥におり、人がいた方へむかう。 なにもないはらっぱにネメイオがいた。
「なにしてんだ、こんなとこで?」
「ひぃ!! なんだサキミさんか...... 驚かせないでください! どこからでてきたんですか。 道は逆でしょう。 なんで森の方なんですか?」
「ああ、まあな...... それで、こんななにもない所でなにしてんだ?」
「あっ...... ええ」
そういうとネメイオの表情がくもる。
「あの、残念ですがなくなりました......」
「えっ? 誰が!!」
「い、いえ、人ではなく...... あの建造物です」
「ふー。あせった。 まあ、あんま知り合いはいないけど...... えっ? 建造物?」
「おい......」
ディンが肩を叩いた。
「なんだよ。 いま話し......」
ディンの指差す方に...... 何か石やら木やら鉄の残骸がつまれている。 そのなかに俺の布団がある......
「えっ? なにこれ...... えっ」
「はい、なくなったのはあなたの賃貸物件です......」
「えええええええーーーー!? 俺のアパートぉぉお!! なんで!! なんでなく...... なくなるのおおお!!?」
ネメイオの肩をゆする。
「落ち着けサキミ!」
「じ、実はつい先日、モンスターの襲来がありまして、町もかなりの被害を受けたのですが、ここはこのありさまでして......」
「いやあああああああああ!!!!」
「落ち着け! そんなに口をあけたら顎がちぎれる! お主は保険にはいってたであろう!」
狂いそうな俺をディンがなだめる。
「ああっ! そうだ! 保険入ってた! でるよね! 保険金!」
「い、いえ、残念ながら保険は火災と地震のみで、モンスターの襲撃には対応しておりません......」
「「いやあああああああああ!!!!」」
「落ち着いてください! サキミさま! ねえさま!」
発狂する俺たちをティンクルはなだめる。
「な、なんで!?」
「モンスター保険に入らないと保険金はおりません」
「いやあああああああああ!!!!」
「落ち着けサキミ! ネメイオそんな説明したか! そちらの落ち度ではないか!」
「ですので、最低限の出資でよろしいですか? と聞いたのですが、かまわないと...... あと契約していた方々もキャンセルとなりました」
「「いやあああああああああ!!!!」」
「お二人とも気を確かに!!」
「サキミさま! ねえさま!!」
「「あはをばばばば」」
俺たちは泡を吹いてたおれた。
「はい! 私はティンクル! 卵のときに拾われて、ねえさまに育ててもらったのです」
ティンクルはちょこんと正座し、元気よく答えた。
「うむ、ドラゴンは長命とはいえ、あの戦乱で生きているとはおもわなんだが、一本角でモフモフの青いドラゴンは珍しい、もしかしてと思ってな」
「はい、それに私はねえさまがいなくなってすぐ、国から逃げて人里離れた山で冬眠していたのです。 ですが最近、ふと目が覚めたのです。 おそらくねえさまの魔力を感じとったからでしょう」
ディンに寄り添って笑顔でそういう。
「ふむ、元気そうでなにより」
「ねえさまは復活されてなにを? ついに国を取り戻すのですか!」
「いや、世界が平和ならば余は特になにもせん。 つい今の世界がどうなったかをみにきただけだ」
「そうですか...... では、私はねえさまについていきます!」
「なに!? 俺のアパートか!」
「だめですか......」
うるんだ瞳でみてくる。
「うっ......」
「かまうまい。 どうせ余たちの部屋に住むのだ」
「かまうわ! 女の子だぞ!」
「余も女の子だそ」
不満そうにディンそうこたえる。
(確かによく考えたら、俺、ディンとずっとくらしてたな...... こんなかわいいし料理もうまい。 なのになにも起きないなんて...... 魔王だからか、いやちがうな残念だからだな)
「なぜ余をあわれみの目でみてくる......」
ディンはいぶかしげにいった。
「ああ、もういいよ。 一人ぐらいなら一緒だ」
「ありがとうございます! サキミさま」
そうティンクルは喜んでいる。
「さて、他は暗黒大陸のモンスターはいなさそうだな。 疲れたから、魔王に会うのは今度でよかろう」
「そうか、なら帰るか! アパートで不労所得の人生だ!」
「ならば私がお連れしましょう」
そういうと、ドラゴンになったティンクルの背にのり俺たちはアパートに戻った。
「さ、さむぅ」
「さ、寒い」
「すみません。 あまり低いと見つかっちゃうので」
「ああ、あれ? ここだよな」
空高く飛んでいるティンクルの背中から眼下の森をみる。
「うむ、確か...... あそこに人がおる。 ティンクル奥の方に降りてくれ」
「はーい」
森の奥におり、人がいた方へむかう。 なにもないはらっぱにネメイオがいた。
「なにしてんだ、こんなとこで?」
「ひぃ!! なんだサキミさんか...... 驚かせないでください! どこからでてきたんですか。 道は逆でしょう。 なんで森の方なんですか?」
「ああ、まあな...... それで、こんななにもない所でなにしてんだ?」
「あっ...... ええ」
そういうとネメイオの表情がくもる。
「あの、残念ですがなくなりました......」
「えっ? 誰が!!」
「い、いえ、人ではなく...... あの建造物です」
「ふー。あせった。 まあ、あんま知り合いはいないけど...... えっ? 建造物?」
「おい......」
ディンが肩を叩いた。
「なんだよ。 いま話し......」
ディンの指差す方に...... 何か石やら木やら鉄の残骸がつまれている。 そのなかに俺の布団がある......
「えっ? なにこれ...... えっ」
「はい、なくなったのはあなたの賃貸物件です......」
「えええええええーーーー!? 俺のアパートぉぉお!! なんで!! なんでなく...... なくなるのおおお!!?」
ネメイオの肩をゆする。
「落ち着けサキミ!」
「じ、実はつい先日、モンスターの襲来がありまして、町もかなりの被害を受けたのですが、ここはこのありさまでして......」
「いやあああああああああ!!!!」
「落ち着け! そんなに口をあけたら顎がちぎれる! お主は保険にはいってたであろう!」
狂いそうな俺をディンがなだめる。
「ああっ! そうだ! 保険入ってた! でるよね! 保険金!」
「い、いえ、残念ながら保険は火災と地震のみで、モンスターの襲撃には対応しておりません......」
「「いやあああああああああ!!!!」」
「落ち着いてください! サキミさま! ねえさま!」
発狂する俺たちをティンクルはなだめる。
「な、なんで!?」
「モンスター保険に入らないと保険金はおりません」
「いやあああああああああ!!!!」
「落ち着けサキミ! ネメイオそんな説明したか! そちらの落ち度ではないか!」
「ですので、最低限の出資でよろしいですか? と聞いたのですが、かまわないと...... あと契約していた方々もキャンセルとなりました」
「「いやあああああああああ!!!!」」
「お二人とも気を確かに!!」
「サキミさま! ねえさま!!」
「「あはをばばばば」」
俺たちは泡を吹いてたおれた。
0
あなたにおすすめの小説
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる