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第二十話

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 俺たちは湖から地上へとあがる。

「さあ、次へと行くぞ」

「次はどこだ?」

「ふむ、次はアバスラム王国だな。 ここからだと山脈をこえねばならんな......」

「しゃあない、ってなにしてんだ」

 ディンはさっき手に入れたヴェールをまとっている。

「よく似合うだろ」

「まあ...... いやなに!?」

 ディンはそのまま俺を後ろから抱える。 

 そして空へと舞い上がった。

「うおっ!! 浮いた!」

「そうこの風のヴェールは風をあやつり、空を自在に飛べるのだ。 これなら険しい山岳地帯を移動できる」

 そのまま山脈をこえていく。 雄大な山脈を眼下にながめる。

「なかなか良い景色だな」

「そうであろう。 これほどの絶景なかなか見ることができぬ」

「あれ? なんかあそこにないか......」

 遠くに黒い点が見えた。

「ん? 確かに魔力を感じ......」

 それは勢いよくこちらに向かってきていた。 

「おいあれ!! 竜!?」

「あれはワイバーンか!」

 それはワイバーンだった。 ディンは旋回し下降するが、ワイバーンも追ってきていた。

「くそ! 完全におってきやがる! こいつあの時のやつか!」

「間違いない体が焼けておる! このままだと追い付かれる!」

 ワイバーンは雄叫びをあげ真後ろへと迫ってくる。

「魔法を!」

「グオオオオ!!」
 
 魔法を唱えようとしたとき、ワイバーンにぶつかられた。

「うわあああああ!!」

「きゃあああああ!!」

 地上へと俺たちは落ちていった。


「いててて、おいディン!!」

「ああ...... 死んではない。 お前こそ大丈夫か...... 余をかばっただろ」

「地面に魔法を放って落下の威力を軽減したから、何とかな」

「しかし、あのワイバーン何なのだ......」

 ディンは木に隠れて上空を見渡している。

「どうやらいないな。 なんで俺たちを狙う」

「わからんが魔力を持つものを狙っておるのかもしれんな...... 空を飛ぶときは気を付けよう」

「だな。 でもそれより、今はここがどこかってことだ」

 周囲をみても森の中ということしかわからない。

「わからんな...... ただ山脈は越えたから、アバスラムには入ってるはずだが...... まあアイテムの魔力を追えばよかろう」

 そう歩きだしたが、日もくれ始めた。

「このまま歩いて夜、迷うのはまずいな。 助け...... はこないか、ならとりあえずの水と食料だな」

「水は魔法でだせるぞ」

「なら食料だな」 

「それならあそこにキノコがあるぞ!」

 ディンの指差す方にキノコがある。

「き、キノコか......」

「だな...... ここで間違うと命に関わるな。 ならあれはどうだモーンの実だ」

 木に大きな赤い果実がたくさんなっている。

「食えるのか?」

「ああ、甘くはないが、調理できる。 お主たちの世界なら、芋のようなものだ」

「そうなのか、まあこの世界の食べ物は俺も食えるしな」

 モーンの実をとれるだけとった。

「できるだけもっていきたいが多すぎだろ。 俺たちのバッグにどのぐらいいれてようか、あまり多いと重くて困るし、少なくても食料が手に入るかはわからんし......」

「ふふ、まかせておれ、ちょっとバッグを開けるぞ」

 そえいうと俺のバッグを探っている。

「どうした?」

「これだ、これ」

 そういって湖で手に入れた手に乗るような箱をもっている。

「その箱がどうした?」

「よくみておるのだ」

 ディンが箱をおきふたを分離する。 そしておもむろに果実を両手に抱くと箱の上におとした。 すると果実はそのまま消えた。

「なっ、消えた!?」

「そうだ! この箱、天納の箱は異空間に繋がっていて、多くのものを収納できるアイテムなのだ」

「すげえ! これなら持ち運びも便利だな」

「ふむ! さっさと果実を入れてしまおう。 この程度ならば容易くはいる」

 果実を全部小さな箱の中へといれた。

「これどうやってだすんだ?」

「これよ」

 開けるとき分離させたふたを地面におき開ると、中から果実がでてきた。

「それが出口になってるのか」
 
「うむ、よし、ではさっそく調理を始めるか。 サキミは木を小さくきって薪をつくってくれ、あとは木をつかってテーブルなんかも、余は料理をつくる」

 手分けして作業にうつった。
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