異世界アパートを取り戻す! ~魔王と俺の大冒険~

曇天

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第二十一話

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「これでいいか......」

 生えている木を剣できって、小さめのテーブルと椅子をつくる。

(最初は剣を振るうのもおぼつかなかったのに、かなり扱えるようになったな。 それに筋力に体力も増えたし、魔力の操作で身体能力を高めることもできるようになった。 まあ、こっちでモンスターと戦ってりゃそうなるか......)

 ディンは楽しそうに料理をしている。

(なんか、わからんやつだな。 魔王なのに、料理も好きそうだし、なんだったら断ってんのに俺の洗濯までしてたし......)

「なんだ? 人の顔ジロジロみて余の顔になんかついておるか?」

「いや、料理するのが好きなのかなって」

「ああ、楽しいな! 料理は単純にうまいものを作ればよいだけだからな。 ネガティブな考えがいらんだろう。 魔王のときは色々いやな選択もせねばならんかったからな」

「いやな選択?」

「王として非情な選択だ。 施政、特に戦争などだ......」

 そういったディンの表情がくもる。

「なら魔王なんてやめちまえばよかったのに、どう考えても不向きだろ」

「言ってくれるな。 だがそうだな、余は政治など興味もなかったからな」

「ならなんで魔王なんかになったんだ?」

 俺が聞くと、ディンは鍋をもってテーブルへと静かに置いた。

「ふむ、余がまだ物心つくかつかないかのとき、この世界は争いに満ちておった。 人間、魔族、モンスター入り乱れて戦っておったのだ」

「何のためだ?」

「領土...... 自らの野心、それぞれ理由はいろいろだった...... まあ生物の性《さが》とでも言おうか...... そのとき余は、いやみなただ飢えていた。 食べ物だけではないがな...... だからそのとき腹一杯食べさせてやりたいと思っただけだ」

(......まえに食堂をするのが夢だとかいってたな)

「余は元々膨大な魔力をもって生まれた。 それを使い弱き者を守るうちに魔王と呼ばれた。 そして余のもとに集まる者が増え、国へとなっていったそれだけのこと......」

 そういって目を伏せる。

(嬉しそうでもないな)

「余の話はそれだけだ。 聞かれたことに答えたゆえ余も問おう。 お主はなぜあのアパートにこだわる? 他に住むこともできるはずだ。 まあ余もあのアパートには思い入れはあるがな」 

 スープを飲みながら、ディンはこちらをみて不思議そうにそう聞いてきた。

「うまい! ああ、それは、お前みたいなおっきな話じゃないよ。 というか俺と同化してたならわかるんじゃないのか」

「同化といっても、半分寝ているようなものだ。 大半のことはわからん。 潜在意識や知識などは一部共有しているが、完全に目覚めたのはこの世界にくる少しまえだ。 お主がアパートに入居者がいなくて絶望していた頃だ」

「あのときか...... いや、ただ俺と同じだったからだ」

「同じ? アパートがか」

「ああ、あそこの場所は本来、大きな駅が近くにできて発展するはずだった。 それが反対にあい計画がポシャったんだ。 つまり必要がなくなった...... 必要とされないあのアパートがなんだか、俺と同じように思えた。 ただそれだけだ」 

「必要とされない...... か」

「お前とは真逆だな」 

「そんなことはない。 余はお主を必要しておる。 魔力を回復するためにな」 

「俺も必要としてるよ。 胃袋のためにな」

 そう笑いあって、食事を終えた。

 
「さて、いくか」

 次の日、森の中を歩いた。

「アイテムの方向に行けば人がいる」

「なるほど」

 ディンの感知をたよりに進む。 日暮れまえまであるく、すると道が見えてきた。

「おっ! あそこ人工的な道だな!」

「ふむ、街道のようだ! なんとかでられたな。 今日は野宿はせんでよさそうだ」

 俺たちはそこから近くの町へとつき、宿へと泊まる。 次の日から馬車を乗り継いで進むと、三日後大きな都市へとついた。

「どうやらここは王都か......」

 向こうに荘厳な王宮が見えた。

「そのようだな。 しかもあそこからアイテムの魔力を感じる」

「おい!! それって王宮にあるのかよ!」

「ああ、間違いない」

「そりゃ無理だぞ...... 入ることすらできないだろ」

「まあ、逆に言えば時の貝殻以外ならば、管理してもらえば問題ないとも言えるな」

「そうか、悪用されなければ良いわけだしな。 どのアイテムがあるのか聞き込むか」

 手分けして聞き込みを開始した。


「でディンどうだった? どうやら昔魔族との戦いで何かを手に入れたって話だが」

 待ち合わせの食堂で落ち合う、

「ああ、私も聞いたどうやら鎖のようだな。 おそらく【冥呪の鎖】だ。 対象を封印する鎖だな」

「なら問題ないか......」 

「ああ、置いといても問題はあるまい」

「じゃあ、他のところに行こう」

「そうだな。 次は......」

 そういうとディンは集中して魔力を感知している。

「大まかにしかつかめんからな。 あっちか...... いや、これは移動している!」

「どういうことだ」

 そのとき、鎧を来た兵士がのった大勢の馬がけたたましい音をたてて、町を走り抜ける。

「賊を逃がすな!! 追え!!」

 そういって騎馬団は町を抜けていった。

「賊!?」

「ああ、どうやら余のアイテムは盗まれたようだ。 王宮にあった反応がなくなった。 余たちも行こう」

 俺たちは魔力をおった。

 
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