異世界アパートを取り戻す! ~魔王と俺の大冒険~

曇天

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第三十七話

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「さ、さむ、う......」 
 
「し、し...... しん...... 死ぬ......」

 地面に降りると、俺とディンは半分ほど凍っていた。

「や、やっぱりま、魔法は使えないのか」

「あ、あのワイバーン...... 魔力を狙ってきたのかもしれぬからな」

 ディンが震えながら答える。

「すみません。 低い位置を飛ぶと見つかりますし、成層圏あたりを飛んだんです。 空気は魔力で何とかできるですが、寒さはあまり防げないのでいまあたためますね」 

 そういうと、竜の姿のティンクルは口を膨らませた。

「あたため、ま、まて......」

「それはダメだ......」

 ボゴオオオオオオ!!!

 口からすさまじい炎が吹き出された。

「ぎゃあああああああ!!」 

 俺たちはブレスで燃やされた。


「はぁ、はぁ、お前はティンクルになにを教えてんだ」

「し、しかたなかろう。 ティンクルはドラゴンなんだから」

「ご、ごめんなさい。 ドラゴンはあの程度のブレスなら無傷なので......」

 ティンクルはシュンとする。

「ま、まあ、いいよ。 でここがその稲があるってところ」

「はい、ここで前に見たことがあります。 でも眠る前だったから今あるかどうか......」

「ここは暗黒大陸近くだから、魔族もおらん。 自生しているなら、まだあるはずだ」

 あたりを見渡すと、山岳地帯のようだった。 

「稲は確か、水捌けのよい土、湿気のある土地にあるはずだけどな?」

「あ、あれです! あれ」

 そこには背丈の高い穂の少ない稲があった。

「ほんとだ! でもなんかちょっと違うな」
 
「お前の世界のコメも昔はこのような寒い山岳地帯であった。 それが改良され食べているものになる」

「それって昔のコメか、品種改良とかできんのか?」

「魔力で育てればな。 かなり早くできる。 この世界ではあまり品種改良はしない、普通に食えるものを魔力でつくるからな」

「なら、品種改良を行えばかせげるかもしれん。 確かに店で食べるもんはなんかうまくない」

「うむ、この世界にはないからな。 ただ店が不味いわけではない。 余がつくるものがうまいだけだ」

 ディンは胸を張る。

「ならさっさともってって改良しようぜ!」

「うむ! しかし帰り、あれをもう一度やるのか、ここまではかなりの距離だった......」 
 
 ディンが考えている。

「しかたないです。 見つかってしまいますから」

「そうだ! サキミ願いを叶えよ! なんか魔法をおぼえるのだ!」

「いやだ! まだ願いはつかわん! もう一回しか使えんのだぞ!」 

 断固拒否する。

「やめてください! 二人とも!」

「使わんか! 凍りたいのか!!」 

「いやだ!」 

「やめて! やめて! やめボオオオオオオ!!」

 俺たちがいい争っているとすごい炎のブレスが俺たちを包んだ。
 

「すみません......」  

「ま、まあ、し、しかたない......」

「あ、ああ、少々...... はしゃぎ...... 過ぎた」

 凍えながら天納の箱に稲をつめて帰ってきた。
 
「それでどうすんだ。 稲をかなりもってきたけど」

「ちょっとまて」

 ディンは水を魔法でだすと、そこに塩をまぜ、稲をなかに入れるように指示した。

「沈むのと、浮くのがありますね」

「うむ、沈むのが胚乳が多く含まれておる。 つまりは芽の養分になるものだ」

 その沈んだものを取り種籾《たねもみ》をとる。

「このまま植えるのか」

「いいや、育つまで別の所に植えて成長させる」

 ディンはそういうと、空中に光りの玉をいくつかつくりだした。 それに種籾を植えて魔法をかけると成長し芽がでた。

「おお! すぐ芽がでた!」

 にょきにょき芽が伸び葉っぱが繁る。

「よし! 植えるために! 畑をつくる」

 広い場所に両手をつけると、土が撹拌された。

 そして光の玉の苗ががゆっくりと土にうまった。

「このままか、だいぶかかるな」

「いいや、ここで!」

 さっきの水の玉を畑にまき、光の玉が輝くと、苗が成長して黄金の穂を実らせた。

「おお!! もうできた!」

「すごいです! ねえさま!」

「いや、まだだ! まず収穫!」

 それらを収穫して、ディンは達人のようにその穂から種籾を選別する。

「えっ? まだやるの?」

「当然だ! これは初期の稲だぞ。 あまり旨くはない。 これらを交配させ更に大きく旨く品種改良するのだ!」

 そういうと、今までの行程を何度も繰り返した。 
 
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