異世界アパートを取り戻す! ~魔王と俺の大冒険~

曇天

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第三十八話

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 それから二週間セレネも参加して同じ行程を繰り返した。 

 そして日もくれる頃、ディンは育った穂を手に取り、吟味している。

「ふむ、大きさ、厚み、間違いない、これがコメだ!」

「うおおおお!!!」

「完成しました!!!」

「まだだ...... 品種改良に終わりはないのだ......」

 ディンは空を見上げて嘆く。

「な、なんてこった......」 

「そんな品種改良がそれほど難しいとは......」

 俺とティンクルは地面に膝を屈した。

「当然であろう! 何世代もの膨大な時間をかけ、手間ひまをかけて作り出したものなのだぞ!」

 そうディンは苦渋の表情をした。

「しかし...... 今はこれでひとたび妥協とする!」

「と、いうことは...... ディンプルディ」

「そうだ。 これでコメをたく!!」

「うひょおおおお!!!」

 俺たちが小躍りしてると、悲しい目でセレネがみていた。

「ま、まさか法にふれる魔草を...... それほど困窮して」

「ちがう! コメをついに手に入れたんだ!」

「コメ?」

「そうだ! これさえあればなんとでもなる!」

「な、何とでも! やはり違法の草......」

 早速その黄金に実った穂を借りとり、一部を種籾《たねもみ》をとして残すと精米し始めた。


「さあ、できたぞ!」

 外においたテーブル料理が並べた。 こっちの料理も俺の世界の料理も豪華に並んでいる。

「すごい!! やばい!! さいこー!!」

「そうだろう、そうだろう。 さあたべるがよい!」

「いただきまーす!!」

 早速白米の茶碗をとる。 湯気がおこめの甘い香りを運んでくる。

(い、い、いったい何ヵ月、一年ぶりぐらいか...... た、たべるぞ)

 白米を大切に口に含む。 豊かな甘さが口にひろがり米の匂いが鼻から抜ける。

「サキミさまが泣いている!?」

 ティンクルが驚く。 俺は自覚なく、ぼうだの涙をながしていた。

「しかたなかろう...... ぐすっ、もぐもぐ」

「ねえさまも!!!」

「確かに美味しいですね! 食べたことがない! もちもちとした食感でふんわり甘い! すごい! これがコメですか!」

 セレネも感動で不器用に橋を使って食べている。

「私も......」

 ティンクルはおむすびに手を伸ばして恐る恐る口にする。

「ふぁ!! これすごい!! おいひい! おいひぃい!」

「そうだろう、そうだろう」

「このおむすびはうまい!」

 そうやって食べ進め満足な夕食は終わった。


「さあ、食べた! あとはねるか! 明日からアパートに入居者を集めたい!」

「そうだな!」

「はい!!」

 日も暮れたし、俺たちは片付けをして部屋へと戻ろうとする。

「あ、あの」

 おずおずとセレネが俺を止める。

「なに?」

「えっと、お二人はあのご夫婦なのですか......」

「なっ、なにを言うておる! ふ、夫婦など! もう! もう!」

 ディンは顔を赤くしてくねくねと動いている。

「いや違うけどなんで?」

「で、でも一緒のお部屋に......」

「ああ、なるほど、そういうこと」

「私もいますよ」

 ティンクルが答える。

「どういうご関係かよくわからなくて...... 魔王と異世界の人」

「ふむ、なんといえばいいか」

「そうだな。 んー、(魂の)同衾《どうきん》の仲かな」

 ディンがそういうと、セレネの顔がみるみる赤くなる。

「はぁ! まだ! 結婚もされてないのに! 同衾なんてご両親はなんと考えられているのですか!」

「いや、勘違いしてない?」

「両親は共におらんな。 なあ我らだけだ」

「そ、そうなのですね。 魔王と異世界人、たしかにお二人で生きてこられたのですね...... それは大変なご苦労を...... ですが、いくらなんでも二人で同じ寝所は問題があります!」

「私もいますよ」

 ティンクルがそういう。

「ディンさんとティンクルさんは、眠るときは私のお部屋にきてください!」

「えー、めんどくさいな。 そうだ! セレネお主も同じ部屋で寝ればよかろう」

「ええ!?」

「そうですね。 四人で寝ればいいんですよ」 

 ティンクルがそういう。

「よ、四人で...... そうですね。 二人きりでなければ、まあ」

(なんかセレネは思いっきり勘違いしてるな...... ただ面倒そうなのでほっとこう)

 俺たちは四人で並んで寝た。

 そのよる、寝ぼけてドラゴン形態になったティンクルに寝返りで潰された。
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