不完全なる世界にて、契約魔王と怠惰の徒は歩む

曇天

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第三十七話『封印の地にて、災厄の王が目を覚ます』──ロストワイバーン、襲来。

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「バスブット王国...... あそこにはロストワイバーンがいるのですが......」 

 ラーク卿は考え込む。

「ロストワイバーン?」

「ええ、バスブット王国を滅ぼしたといわれるワイバーンの王です」

「滅ぼしたのはそいつなのですか!? 国を一体で!!」

「そういわれていますね。 青い炎が一面を焼き付くしたと記載されています。そこはリアベールの生家があると知っていましたが、さすがに近づけませんよ」

「そうみたいですね...... 諦めましょう」

「ふむ、さすがにそんなモンスターはリスクが大きすぎるな」

「ですね」

「そうですね。 いままでも何人ものものが、爵位ほしさにおもむき帰りませんでしたから」

「爵位!?」

「そうです。 もう数百年そこにとどまっていますから、討伐者には所領と侯爵の位が与えられるのです」

(それって倒したら貴族の地位と領土をもらえるってことか......)

「......ラーク卿、それは人々が困っているということですか?」

「え、ええ、あの国は希少な鉱物もでて土壌も豊かだった。 ロストワイバーンがいなくなれば人々も潤うでしょうね」

「......なんかきな臭いはなしになってきおったな」

「ま、まさか、シュンさん、人々のために倒すつもりですか!」

「ふむ...... 無論、私が戦えるかはわからない。 だがリアベールの残したもの、そして人々のため、確認はしておこうとおもいますラーク卿」

「本当ですか! 確かにいままで多くの指定災害モンスターを倒してきたあなたならば...... わかりました! 許可は私がとりましょう!」

「またはじまったのう......」

 ディムリアはため息をついている。


「うけちゃった」

「うけちゃった、ではないですわ! アホですわ!? そうですわ! あなたはアホでしたですわ!」

 ミリアがぶちギレている。 おれとミリア、ディムリアとセリエスで元バスブット王国へときていた。

「まあまあミリアさん、シュンさんには深いかんがえがあるはずです!」

「あるわけがなかろう。 セリエスもいい加減現実をみよ。 人を疑うことを覚えねばな」

「まあ、戦えないなら逃げればいい。 どうせリアベールの残したものを探すつもりだったし、ちょっとのぞくだけだ」

「はぁ、本当にどうしようもないですわ」

「それでどこにあるのじゃ、セリエス」

「ええ、確か、リアベールの生家は城から離れた丘の上だそうです」

「ふむ、あそこに町と城があるから、丘ってあれか」

 町があったと思われるところから東側に小高い丘があった。


「おお! ここからなら城が見えるな。 とはいえ瓦礫しかないがな」

 ディムリアが大きな声をだした。

「おい! あまり大声をだすな! ロストワイバーンに見つかったらどうする!」

「シュンさん! あれを」 

 セリエスがいうほうに建物のあとがある。 

「ここがリアベールの生家か。 瓦礫しかないな」

「あそこに何かあるですわ! 魔力を感じるですわ!」

 ミリアにいわれ、瓦礫をどけると鉄の扉が地面にある。 それを開け階段を降りると、そこにはひとつの部屋があった。

「地下か...... ここにリアベールはなにを封じたんだ? 棚に書物があるけど、全然読めん」

「これは古代語じゃな。 なになに......」

「読めるのかよ!!」

「読めるんですか!」

「読めるのですわ!」

「なんじゃお主ら! 我のことをなんだと思っておる!! もうやめじゃ!」

 ふてくされて読むのをやめようとする。

「まあまあ、ディムリアさま! あなたしか読めないので、この無学な我らにお教えください!」

「うーむ、まあ、そこまでいうならよかろう......」

 機嫌を直したディムリアは本を読みはじめた。

「えっと、どうやら我のことを書いておるな。 なんか復活する、んー あー あれだ、これ、そう、あんな感じだ...... リアベール頑張っとる。 なっ、わかるな」  

「わかるか!」

 説明が下手なディムリアが読んだ話をかいつまんで要約すると、リアベールは自らが七つに封じた魔王について調べていた。 魔王を滅ぼすことはできなかった。 周囲の魔力を取り込み封印してもいずれ復活するだろうと。

「ふむ、つまり魔王は完全には倒せなかったのか...... それで七つに封印したと......」

「それで子孫の我々に託したのですね」

「魔力を吸収して再生するですわ。 あの宝石、ギガルトが割ろうとしたけど、なにをしても割れなかったですわ」

「おれが黒いディムリアの体内のやつを骨で割ったけどな」

「内部からなら壊せるのかもな...... もしくは理由があるとか。 ほかにはなにかないか」

「ここになにかありますわ!」

 ミリアが本棚の上から箱をもってきた。

「宝石箱か? セリエス開けていいか」

「ええ、お願いします」

「だめだ鍵がかかっているな。 その鍵はないな」

「お主の能力で鍵をけられんのか?」

「どうやってだ? おれの器官を複製して動かせるだけだぞ」

「体内の器官をそのまま複製せずともよかろう。 部位なら構わぬのであろう?」

「えっ? そんなこと考えてもなかったな。 確かに骨は完全につくれた訳じゃなかったはずだ。 ......やってみるか。 第二の器官、骨」

 おれはを鍵穴に合うように骨をつくりまわした。 

 ガチャ

「おお! あいた!」

「ふむ、やってみるものじゃな」

(いままでは単体で考えていたが、これは量でつくれるかもしれんな)

「なかには何があるのですわ」

 なかには小さな手帳があった。 

「魔鉱宝石《オリハルコンジェム》、古代の錬金術でつくられた【オリハルコン】を原料とした魔法道具。 おそらくこの物質が魔王の核となっている、とさかいておる」

「オリハルコン、伝説の鉱物ですわ」

「ふむ、確かにオリハルコンは魔力を集める力があるときいたな...... それが我にか。 ただ希少ゆえ、昔からほとんど手に入らん。 我の時代でさえ幻だ」

「ディムリアがそういうなら、そうなんだろうな。 じゃああの赤い宝石はオリハルコンか。 研究所はオリハルコンの生成していたのかも」

「じゃあ、この剣が赤いのはまさか......」

 セリエスは自分の剣をみる。

「もしかしたらその剣もオリハルコンを使っているのかもな。 それなら魔王を倒せたのも納得がいく」

 そのとき、すごい振動がおこり、天井からほこりがおちた。

「なんだ!?」

 おれたちが上に上がると、そこには巨大な竜がいた。

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