不完全なる世界にて、契約魔王と怠惰の徒は歩む

曇天

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第三十九話『貴族になったら、ギルドが崩壊しかけた』──そして現れる、最強のスカウト希望者。

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「なんと......」

 王とラーク卿は言葉を失う。 その前にはクルゼクスがいるからだ。 おれたちは事情をはなし、王とラーク卿にきてもらった。

「それでクルゼクスどのはここに我らがすんでもよいと」

『ああ、かまわぬ...... 我がまもりたいのはリアベールの愛したこの地だ』

 王のといにクルゼクスはそう答えた。

「おお! 王よ!」

「ああ、ありがたい! なればここを復興させよう!」

 そう二人は喜んでいる。


「とりあえず、クルゼクスさんが討伐対象からはずされてよかったです!」

「まあな、それにおれも爵位をもらった」

「ええ、しかも領地としてバスブットをもらえたのですわ」

「ふむ、わが下僕だ。 領地ぐらいもっていて当たり前じゃ」

「だれが下僕だ! まあいい! 報奨もたんまりでた! 明日から国バスプットを復興するぞ! おれの領地だ! 一国一城の主だ!!」

「でもそうなるとこのギルドはどうします?」

「フフ、セリエスくん、我輩はもう貴族なのだよ。 ギルドなどどうでもよかろう」

「なんじゃと、我の城どうするんじゃ!」

「そうだぞ! 私たちはお前がやるから協力してやってんだ!」

 メイシァルとパニエも怒る。 

「だが全然冒険者が集まらん。 ほとんどおれ達だけで依頼をこなしてるんだぞ。 仕事が回らん」

「まあな。 確かに武器も防具もそんなに売れん。 信用がないし女だけだしな」

 ルードリヒもうなづく。

「そうだな。 修理も包丁やら釜、鍋、なんかの日用品だけ」

「ふむ、なれば解散か......」

「ぼくはまだまだやるべきだと思います! 多くの人たちが困ってるとき、ここは役に立ってますから!」

「まあ、確かにアイテム入手やモンスター討伐やらで依頼はあるですわ」

「しかし、ここをつくるためにした借金も多いぞ。 バスブット復興を後回しにしてまで、ギルドをやる意味があるのか?」

 おれの言葉に皆が沈黙する。

「なに存続のはなし? でももうそんなことしてる場合じゃないわよ。 お貴族さま」

 そう話しかけられた方をみるとナザリオだった。

「なんだよナザリオ、もう聞いたのかさすがに耳が早いな」  

「あんた自分の状況がわかってないようね」 

「まあ控えめにいって英雄だろ。 だって辺境伯になったんだぞ」

「はぁ、ずいぶん能天気ね。 あの場所がなにかわかってるの?」

「あの場所って王国だったところだろ」

「そう国だったのよ。 当然辺境伯ということは?」

「辺境の貴族だろ」

「ちがうぞ。 隣国との境にある辺境伯とは国の要だ。 高位の貴族でもある」

 ルードリヒがそういう。

「ええ!? そうなの?」

「はぁ、隣国があるということは、ここの国と......」

「そうか、ファルザー帝国......」

 そうパニエがいった。

「帝国? そういやそんな国あったな」

「......常に隣国への領土侵攻を考えている軍事強国だ。 いくつかの小国が飲み込まれて滅んだ」

 メイシァルもそういいながら腕をくむ。

「はははっ、気にしすぎだ。 おれにはあのクルゼクスがいる! あれと戦おうとするバカなどこの世にいるか! いたら顔がみてみたいわ!」

「鏡に映ってるですわ。 よくみろですわ」

「ああ、よくいえるの」

「まあ、生き残りましたし......」

「......だから、大丈夫だ」

「確かにロストワイバーンは脅威だが、この大陸最大の兵力をもつ帝国が本気になれば勝負はわからない。 ただ今のところそのメリットがないだけだ」

 そうナザリオがいう。

「つまりメリットがあれば攻めてくる可能性もあるのね」

 シェリガがいうとナザリオはうなづく。

「どうやら、さっそくバスプットを調べてる怪しい奴らがいるらしいしな」

「となると復興すると、攻められちゃうかもね」

 薬瓶をもってギガルトが嫌な顔で笑う。

「くぅ、戦争は嫌だぞ! せっかく領地を手に入れたのに!」

「まあ、ここの運営で金を稼いで、復興しながら人材も発掘するしかないな」

「だから、人が集まんないんだよ! こっちは指定災害モンスター何体も倒してんだぞ! なのに人がほとんど来てくれないんだ!」

「まあ少しずつは認知されてる。 だから今日もあんたに会いたいってやつを紹介にきたのさ。 ここの場所は伝えた。 もうすぐくるはずだ」

 ナザリオはそうおれをなだめるようにいった。

「おれに会いたいやつ?」

「......じゃまするぜ」

 そういってガタイのいい男たちがはいってきた。

「あんたがシュンか」

 先頭の眼帯の男がおれを見下ろしていった。 その眼光はするどく、一目で常人ではないことがみてとれた。

(いかつっ! こわっ! あと無駄にイケメン! きらい!)

「こいつがロストワイバーンをてなづけたやつか...... 子供じゃねーか」 

「ほんとだな。 女、子供しかいないのかよ」

「お頭ここはだめだ」

 ほかの男たちが嘲るようにお頭とよぶ男にいう。

(なんだずいぶんやばい奴らだな)

「......なんじゃこいつら」

「......頭が悪いようだから、ハンマーでわってやろうか」

「いいねパニエ、私にもかして」 

 ディムリア、メイシァル、パニエもその目が怒りにもえ、男達とにらみあっている。

(こっちも ......やべいのばっかだった)  

「やめろ。 おれはワイズ、モンスター狩りを生業としている。 指定災害モンスターを倒したあんたの名前をきいてやってきた」

「だがワイズのお頭、やっぱりこれはただの噂だぜ」

「こんなガキどもに指定災害モンスターなんてたおせやしねえよ」

「ああ、ナザリオにかつがれたんだ」

「失礼なことをいうんじゃないよ。 だったらあんたらが試してごらん。 この子達をさ」

「......ということなんだが、かまわないか」

 ワイズがそうおれをみすえている。

(こいつだけなんかちがうな。 イケメンだからか......)

「まあいい、じゃあやっておやりなさい。 ルードリヒ、セリエス」

「はぁ、てめえがこいよ!」 

「そんなガキと女が相手になるか!」

 そう男たちが騒ぐと、目の前の椅子がまっぷたつにわれた。 ルードリヒが剣を抜いていた。 そのはやさに男達は言葉を失った。

「......ただの女かどうか、試してみるがいい」

「ぼくもやりますよ!」

 ルードリヒとセリエスはおうじた。

「そいつらに勝てたらおれがやってやるよ」

「なめるなよ! やってやろうぜ!」

「おお!!」

 男たちはルードリヒとセリエスに鞘をつけた剣をむけた。

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