神に召喚された“願望”、僕は異世界を修正する

曇天

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第三十一話『ビグルム、飢えに喰われた者』

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『貴様、メルディ姫を逃がしたのか......』 

『はっ、邪魔が入りまして......』

『せっかく魔力の高い生け贄だったのだがな』

『ですが、アスワルドのほうはベルストンが実権をにぎり、魔力をうまく集めております』 

『エゴイズムも浸透させたか』
 
『はっ、貴族たちはこぞってもとめております』

『そうか、それでミルソダスのほうは......』

『はい町は完成し、魔力を集めております。 もうまもなくアンノーンが生まれるでしょう。 しかし本当によろしいのですか?』 

『かまわぬ、そのためにつくった町だ。 アスワルドのときのように扇動し、暴れさせろ。 さすれば古代技術のその証拠も焼き払われるだろう』

 その会話に、周囲がざわつく。

「これはなんだ......」

「エゴイズムは商人ギルドが広げていたのか?」

「まさか、アスワルドが貴族に奪われたのは商人ギルドが......」

「ああ、ミルソダスも」

「こ、これは......」

 ビグルムは目を見開いている。

「ビグルムさま、あのギルフェドは私をさらったものですの」 
 
 そうメルディがはなす。

「これはどう言うことだビグルム。 ギルフェドは国中に指名手配しておるそなたもしっていよう。 やつに命じてメルディをさらわせたのか」

 王が詰め寄る。

「これは、ありえません。 幻影魔法かなにかでございます。 本当のことではない。 私よりそのものは信頼にたる人物なのですか」

「確かに、この映像が本物かはわからん」

「あのものは王がつれてきたものだぞ」

「しかし、誰かがわからぬものの奇妙な力は信頼できるのか」

(認めない...... か。 この場にいるものもビグルムに近いものも多い、このままだとうやむやにされる)
 
「これは、本物にございます。 他の部屋でも試してごらんにいれましょう」

「......やればよい。 しかし確たる証拠にはならん。 ただの映像にすぎぬ。 本物という証明ができるのか?」

(やはりぼくの信頼性と力の確証のなさをついてくる...... だが)

「そのかたは信頼できる方です」

 部屋にはいってきた人物に周囲の目があつまる。
 
「紹介しよう。 この方はフリージアどの。 元アスワルド王国の王女だ」

 そうラルギス王が紹介した。

「アスワルドの元王女!?」

「確か貴族に国を追われたはず」
  
「昔、外交使節としてこられたとき見た覚えがある」

「彼、トールどのはレジスタンスに協力して、貴族たちから国を取り返してくれたのです。 彼が信じられる人物なのは私が保証します」

「あなたの保証が如何な力をもつというのです元王女」

 そうビグルムは強気の姿勢は崩さない。

「そうですね。 国を失い力も失った私の言葉には力がない。 ですがアスワルドにはあなたたち商人ギルドが残した魔力装置は回収しています。 それをお調べなさってください」

 フリージアさんはそう魔力装置の一部とみられる部品をみせた。
 
「魔力装置を回収しているのか」

「そんな高度な装置を扱えるのは、商人ギルドだけだ」

「やはり...... 事実か」

「くっ......」 

「ビグルムよ。 いかに隠せても、魔力装置を扱えるのは、限られた国かそなたら商人ギルドくらいのもの。 これでも言い逃れするか」

 王がビグルムをみつめる。

「......く、くくくっ、そうですな。 確かにいくら言い逃れをしても、もはや逃げ切れますまい。 いずれ追求にボロをだす...... まさか、そんな奥の手をもっていたとは、少々侮りすぎましたかな」

「なぜこのようなことを...... そなたほどの才覚と力をもつなら、もはやなにも必要ないではないか」

「なにを偉そうに...... 生まれながら全てをもちえたそなたたちにはわかるまい...... なにももたず生まれてきたわたしのこの飢えが...... どれ程の金や権力をもとうとも埋まることがないこの飢えがな!」

「ま、まさか! 修正...... うっ!」

(まずい力を使いすぎた...... 自分には使わないと思い込んでいた)

 ビグルムがなにかをのみその体を変容させていく。 ビグルムはアンノーンのような角のはえた赤い姿になった。

「なるほど、これがエゴイズムの真なる力か......」

 そうビグルムだったものはつぶやいた。

「い、意識がある! ディルさま...... カレン」
 
「わかった!」

「いくわ!」

「兵たちとらえろ!」

 リヴァルトさんも加わった。

 なんとか修正者《コレクター》をつかい、ディルさまたちの補助を行う。

「ふっ......」

 ビグルムアンノーンは大勢の攻撃も寄せ付けない。 

「なんだ、この固さ! 前のやつとは比べ物にならん!」

「前の...... そうか、古代人のアンノーンにあったことがあるか。 これはそんなものとはちがう。 あれは古代人がつくった未完成なもの......」

「なにが未完成よ! 完成したらあんたになるっての!」

 カレンの大剣を腕一本で防ぐ。

「くくくっ、ちがう。 私などではない......」

 ビグルムアンノーンはディルさまたちの攻勢にまったく怯まず、むしろ押してさえあった。

(だめだ、 やつのステータスは異常、とても移動や小手先のことで捕縛もできない...... できるか? いややるしかない)

「修正者《コレクター》、時間《クロノ》」

「ぐあぅぅぅぅ......」

 強烈な痛みが全身を貫く。

「ぐぅぅぅ、もう少し、も、もってくれ......」

「なんだ...... これは」

 ビグルムアンノーンの体がもとの老人へとかえる。

「とらえよ!」

 王のその声を聞きながら意識がとおくなっていった。

 
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