ブラックバイトウィザード

曇天

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第六話 ホムンクルス

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「気づいたか......
 隠蔽の魔法で隠れたのだが、やはり貴様ら魔法使いか」

「なんの用すか?」

 と一応は言ってみるも用件はわかっている。

「そのホムンクルスを寄越せ」

 おっさんは当然そういってオレを睨み付ける。

「いやあ、無理っすね。
 オレが競り落としたんで」
 
「そうか、ではついでに魔女の足と命もいただこうか」

「いやん! 
 大きな声をあげますよ!」

「かまわんよ。
 もうここはわしの結界魔法の中、
 どれだけ声をあげようが暴れようが外には漏れん。
 ふっ、まあ漏れたとて、
 この場所でお前を助ける者はいないがな」

「ラクリマは離れていて...... 
 でホムンクルスを手に入れてなにするんすか?」

 ラクリマがオレから離れる時間を稼ぐため話を続ける。 

「ぐふふっ、わしは魔法実験が趣味でな。 
 人間ではすぐ死んでしまうのだ。
 ホムンクルスなら多少のことは耐えられる。
 いいおもちゃだ」
 
 おっさんは陰湿な顔で笑う。

「じゃあすぐ殺そうか......」

「ヒミコさん待ってください!
 いきなりはやめ......」

 オレにすごい衝撃が走る。

(おっさんが遠くに離れた......
 いや、オレがとばされた!)

 オレは地面に転がった。 
 ヒミコさんはいう。

「わかったろう。
 魔法使いとはこういう連中だ」

「ぐっ、でも、いきなり殺すのは......」

「しかし殺《や》らないと殺《や》られるぞ。
 君はわかってないが、右腕をみろ」

「えっ?」

 右腕をみるとオレの右腕はなく血が大量にでていた。
 恐怖で声もでない。

「あれだ」

 ヒミコさんにいわれ前をみると、さっきのフードのやつがみえる。
 それは四本腕の男だった。
 片手にオレの腕を持っている。

「あの動きはホムンクルスだろうね」

「そんなことよりやべーす!!
 もうオレ死んだ! こんなにいっぱい血ぃでた!
 もう死んだ!」

「落ち着け、痛くもないだろう」

 ハッと我に返る。

「確かに...... 痛くない
 あれ!?
 腕がある!?」

 無くなったと思った腕が元に戻っていた。
 
「それが左手の再生の魔法だ。
 そして痛覚もコントロールした」

「これが魔法、再生!?」

「気を付けてくれ、左腕ならまずかっただろう。
 さっさと殺《や》るよ」

「......偉大な魔法使いなら、殺さずにやれますよね」

「......はあ、仕方ないな。
 手加減の方が難しいんだぞ」

 オレは立ち上がる。

「どういうことだ?
 再生だと? 魔法だとしても速すぎる。
 お前もホムンクルスか!?
 なら実験素体が増えるな。
 いけ!」

 四本腕の男がその身体に似合わずすごいスピードで迫ってくる。

「き、きた!!
 ど、どうします」
 
「落ち着いてよくみたまえ」
 
 見るとさっきまで高速で近づいてきたホムンクルスがゆっくり近づいてくる。

「あっ、なんかものすごくゆっくりになってる」

「戻ってきた足をトリガーとする魔法だよ。
 遅延《ディレイ》だ。
 タイガくん。
 このホムンクルスどうする?」

「......どう?」

「君はあの小太りの男を殺したくないのだろう。
 この場をおさめても、
 このホムンクルスはおそらくまた実験体となるし、
 更なる悪事を行わさせられるだろうね」
 
「............」

「それでいいのかい?」

「......ホムンクルスが所有者がいなくなったらどうなるんですか?」

「外部から魔力供給がなくなれば死ぬよ」

「そうっすか......
 あのおっさんを魔法を使えなくできますか......」

「ああ可能だ」

「......ヒミコさん、
 あのホムンクルスは楽に殺してあげてください......
 そしてあのおっさんを二度と、
 魔法を使えないようにしてください。
 お願いします......」

「わかった......
 けどすまないね。
 こうなった以上、どっちも選ばない選択肢はないんだ。
 悪人を生かせば、他の者にとって害悪となることもあるからね」

「はい......
 オレだって、なにかを願って、
 なにも失わないことなんて、
 都合がよいこと何てないぐらいわかってます。
 オレが人間を殺さない甘さを選んだ。
 だからホムンクルスの死の責任はオレにあります」

(ヒミコさんはこの先こういうことがあることがわかってるから、
 オレに決断を迫ったんだろうな......)
 
 次の瞬間、衝撃が通路に走ると、
 四本腕のホムンクルスは一瞬で弾け、
 大量の血が飛び散る。

「えっ、あっ、何が起こっ......」

 呆然とするおっさんの前にオレは立っていた。
 そしてヒミコさんに言われるまま、
 その頭にオレは手をおいた。
 そのまま、おっさんは白目を向いて倒れた。
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