ブラックバイトウィザード

曇天

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最終話 人間

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「なっ、
 どういうことだ......」

「オレはさっきのヒミコさんの魔法で過去にいった」

「過去......
 そうか過去の僕に」

「そうそして全てを聞いた。
 あんたが一つに戻りたいと思ってること、
 それを阻止する方法もね」 

「右目の魔法、封印《シール》......」

「そう、この魔法は使用者しか開けられない封印の魔法。
 あんたの欲しがってた魂はオレが封印してる。
 諦めなよ。
 オレを殺しても奪えない」

「......それで君はどう思ってるのかな。
 そっちの僕。
 僕と一つになってもとに戻るのがそんなにいやなのかい」

 そう男のヒミコさんは、小さなヒミコさんに聞いた。

「ああ、残念だがお断りだ。
 なぜなら僕は僕だからね。
 君がどういうものかは知らないが、
 なにか受け入れがたい」

「......そうか、君は結局分けたときと同じ考えなのか、
 また僕を拒絶するのだね......」

 そう男のヒミコさんは悲しそうにいった。

「どうします?」
 
「ふう、仕方無いだろう。
 今回は諦めるよ。
 いつか考えが変わってくれることを願ってね」

 そういうと、男のヒミコさんはその場から、
 風のように一瞬で消えさった。

「ふう、こわかったー!!」

 オレはその場でへたりこむ。

「ふむ、よくわからんがでかしたねタイガくん」

「でも、レイデアさんが......」

 ラクリマがレイデアさんの血を悲しげに見つめている。
 
「いいえマスター、
 彼にとって生きていくのは、
 もはや苦痛以外なかったのは事実、
 これでよかったのでしょう......」

「ラクリマ......」

「そうだね生きることが幸せとは限らない。
 これが幸せではないとは言いきれないのかもね」

 そうヒミコさんはいい、
 オレはベッドで眠るエクスさんを背負うと、
 帰路に着いた。

「タイガー!!」

 ヒミコさんの家に着くといひかが飛び付いてきた。
 
「あーー!!
 何してるんてるんですか!!
 いひかさん、離れなさい!
 はーなーれーなーさーいー!」

「マスターは私のマスターなのてす」

 三人から三方に引っ張られた。

「やめてーー!
 ちぎれるーーー!
 あーーーー!」

「ふむ、いつもに戻ったね」

 ヒミコさんはそういって笑って家にはいる。

 その日の夜。
 ヒミコさんの家の二階のバルコニーで、
 オレとヒミコさんはいた。
 ヒミコさんは頭を手に入れ完全に記憶を戻したのだ。
  
 いひかとエクスさんとラクリマの三人は下の階いいて、
 誰がオレの食事を作るかでいさかいあう声が聞こえる。

「ヒミコさん、本当にこの封印解かなくていいんですか?」

「ああ、それを解けば、
 また彼が魂を奪いにやって来るかもしれない。
 身体は全て取り返したんだ。
 対策を立てるまでは、
 魂はそのままにしておくさ」
 
「そうっすか、
 でもヒミコさんは、
 どうしてそこまで一つになりたがらないすか?」

「そうだね。
 僕もよくはわからかったが、
 考えてみたんだ。
 もしかしたら、
 彼は僕の嫌いな部分を持っているんだろうと思った」 

「嫌いな部分?」

「ふむ、彼はいってただろう。
 また拒絶するのかと......
 彼には僕が拒絶するなにかを持っていた」  
 
「それはなんですか?」

「おそらく強欲さかな。
 あらゆる欲を叶えようとする。
 魔法使いとしては真っ当なんだけどね。
 なぜだかいやなんだ。
 勝手なものだろう」 

 そういってヒミコさんはバルコニーから月ををみていった。

「それって、
 ヒミコさんが人でありたいってことなんじゃないすか?」

「ん?
 どういうことかな?」

「前にヒミコさんは人間が、
 我欲で動くケダモノっていってましたけど、
 それでも、人間でいたいのかなって、
 人間じゃなくなるのが怖いのかなって」
 
 オレがいうとヒミコさんは沈黙した。
 
「なるほど......
 それは考えなかった......
 僕は人間でいたかったのか......」

 そういうと、一人頷く。

「ふむ、やはりタイガくんといると、
 新しいことを知ることができるね」
 
「そうすか」

「さあ、では報酬を払おうとしようか、
 君に渡した右目以外全ての身体を統合し、
 かつての肉体を再構築する」

「ま、まじすか!
 またあのえいちかっぷヒミコさんが、
 我が前に降臨するんすか!」  

「ふむ、君とのバイト契約は終わりを迎え、
 君との別かれとなろう」

「さびしいですが、えいちかっぷの為、
 がまんします!」

「では刮目してよくみたまえ!
 かつての僕の本当の姿を!」
 
 そういうとヒミコさんは光輝き、
 大きくなっていく。
 
「おおお!!!
 これは!!!」 

 そして光が消える。
 そこにはオレと同じぐらいの、
 年齢の少女になったヒミコさんがいた。

「うわあああああああ!!!!」

「ふむ、すまないな。
 どうやら元に戻れないようだ。
 もしかしたら、
 タイガくんと別れるのを、
 無意識で拒絶してるのかもしれないな」

 ヒミコさんはそういって、
 ちょこんと舌を出した。

「えいちかっぷううううう!!!」

 オレの魂の叫びが空にこだまする。
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