ブラックバイトウィザード

曇天

文字の大きさ
35 / 36

第三十五話 帰還

しおりを挟む
 ヒミコさんは話を続けた。

「しかし、なぜこの面子なのか」

「わからないんですか」

「男の僕に気づかれないように、
 ブラフも混ぜてるだろうからね」

「でも、あの男のヒミコさん、
 オークションでも落とさなかったし、
 なぜでしょう?」

「ふむ、たしかに不可解だね。
 君の記憶では、
 匣魔監獄《ごうまかんごく》の住人を殺し、
 脱獄に手を貸したのは僕だろう。
 逃がさず、その場で皆を殺して、
 身体を手に入れればよかったはず......」

「殺せない理由があった......」

「か、何かこの中に厄介な魔法を持つものがいた」

「ピエロは魂になれたし、
 織部さんは結界に隠れるから、
 もし、逃げられると見つけられなくなるからとか......」

「ふむ、可能性はあるね。
 が、なにか少し違う気がするな」

「ヒミコさんは全員簡単に倒してましたが......
 ああ、なんだっけ、あれ
 バルダオートってやつ以外......」
 
「確かに、あの霊的存在は僕でも容易くは倒せないが、
 召喚は監獄から逃げたあとだろう......
 この世界で僕と同等の力と能力があるのは僕だけだ」

「同じヒミコさんと男のヒミコさんの違い......
 思い、考え」

「それだ......」

 ヒミコさんは手を叩いた
 
「でかしたタイガくん、
 よーし、君との約束だったね。
 君が触りたかったえいちかっぷ、
 存分に触るがいい」

 そういってヒミコさんはバストを付き出してきた。

「ま、マジ、まじすか!!」

 バストを触ろうと震える手を伸ばす。

「............」

「どうされました?」

 不思議そうにラクリマが見ている。

「う、うん、止めとこうかな」

「ほう、なぜだね」

「オレは向こうのヒミコさんと約束したので!
 こっちのヒミコさんのえいちかっぷを触るのは、
 違うと思います!」

「ずいぶん紳士的じゃないか、
 よかろう。
 向こうの僕のえいちかっぷ、
 とくと堪能するがいいさ」 

「はい!!
 で、なにがわかったんすか」

 そうオレが聞くと、
 ヒミコさんは説明してくれた。

「ほほう......
 なるほどそういうことですか、
 オレの成長も計算に......
 じゃあオレはもう未来に帰っていいすよね」

「まだだよ。
 これから魔法使いたちを監獄に送ったあと、
 君にはやってもらわなければならないことがある」

「なんすか?」

「僕をバラバラにするんだよ」

「えーーー!?
 やですよ!」
 
「だが仕方無いだろう。
 僕がバラバラにならないと、
 計画が失敗する」

 それからヒミコさんは魔法使いたちを監獄へと送り、
 彼らに身体を送りつける算段をつけ、
 ラクリマの記憶を消しオークションに出した。
 
(これで、あとは)

「ああ、頼む。
 バラしたあとは、
 僕が設定した時限魔法が勝手に発動するよ」

 そしてオレはついにヒミコさんをバラバラにすると、
 意識を失った。

「いま、おかしな魔力を感じたが」

 目が覚めると、目の前に男のヒミコさんがいる。

「なっ、失敗した!
 やはり魔力が足りなかったか!!」

 小さなヒミコさんが驚いている。

「大丈夫っす。
 ヒミコさん」

「どういうことだね。
 その落ち着きよう」

 男のヒミコさんはいぶかしげに見ている。
 警戒してるようだ。

「もう無理っすよ男のヒミコさん。
 あんたの野望は叶わないっす」

「僕の正体を知ってる?
 ふむ、どういうことかな」

「あんたヒミコさんを取り込もうとしてるっすよね。
 でもそれは無理っす」
  
「ふっふっふっ、君は面白いことをいうね。
 そっちの僕が気に入るのもわかる。
 でももう詰んでるんだよ。
 戦って勝てはしないのは、わかるよね」

「そうっすね。
 戦っては勝てない」

「それがわかっていて、
 無理だと、もう全ての身体は僕のものだよ。
 あとは一つになるだけ」
 
「無理す。
 仮に身体を全て手に入れても、
 一つにはならない」

「身体が全て手に入っても一つにならない。
 そんなはずは...... 
 まさか......」  

「そうす。
 あんたが一番欲しいものはない
 そう、魂だ」
 
 そうオレがいうと、男のヒミコさんは沈黙する。

「あんたは手に入れられるはずの、
 身体を手に入れなかった。
 本当に欲しいのは身体ではなく魂の方だった」

「ほう、それで」

「アルスタインや織部さん、レイデアさんは
 魂に関する魔法を使えた。
 彼らの魔法を知らないあんたは、
 自分の魂を失う可能性、
 またはもう一つの身体の魂のことを考えた。
 だから、全ての身体が揃うのを待った」  

「ふふっ......よくそこまでわかったね。
 でもだからといって、
 君にもはやなにもなす術はないだろう」

「ああ、でも魂はここさ。
 オレが持ってる」

 オレは自分の右腕に、
 ヒミコさんの目のあった場所を指でさした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...