たまたま神さま、ときたま魔王

曇天

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第三十六話

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 おれは家へと戻った。

「オークとリザードマンの領界へ技術者と物資の搬送をしています」

「両者への戦闘、魔法技術の強化のため、リオン、ガオンの二人を派遣しました」

 サクトとゼオンがそういった。

「またオークから鉱物、リザードマンから穀物や野菜など、両者から倒したモンスターをこちらに輸送しています」

 アプラからそう報告がある。

「うん。 お願い。 これで食料も確保できたね。 さて二人だが......」

 そこには大柄な少年ときれいな少女がいた。 バーンとアミネイアだ。 シェイプシフトを使えるようになったからだ。

「ええ、こちらのことを学ぶように族長より命じられました」

「私もマサトさまの力になるよう来ました」

 あのイモムシのモンスターから作った魔力結晶でリザードマンとオークの一部を進化させた。 その時、二人はリザードマンランサー、オークナイトとなった。 

(なんでモンスターはシェイプシフトすると美形になるんだ? はあ、おれが逆に目立つな......)

『もともと亜人系統のモンスターは人間がベースになっているのかもしれません。 魔力の源が酷似していますから』

(そうなの? 誰かが作ったってこと?)

『おそらくはそうだと思います』 

「神さまってことか...... そうだ。 この世界にも神さまはいるんだよね。 あのおれをここに飛ばしたおじいちゃん?」

『いいえ、あの方はこの世界とは異なる神です。  神は無数にいて、また神になっても墜ちるものもいます』

「へぇ、そうなのか。 だけど、おれはまだまだ神さまとはいえないな」

『ですが、四種族からの信頼はあつく、また二種族ふえました。 神というにはまだまだですが、いずれ神として大成する可能性は大いにあります』

「ありがと、でも別に神さまにこだわりはないな。 せっかくもらった命だし、みんなが幸せならそれでいい。 ただ黒衣の化者《ダークレイス》、あれだけは気にかかる」

「やっと帰ってきたわね」

「おかえりなさい」

「マサトさま、ご無事で何より」

 みんな向かえてくれた。

 おれたちは学園戻った。 バーンとアミネイアもともに学園にはいるという。

「ここが人間の町か...... しかし、ゴブリンたちの町ほどの驚きはないな」

「ああ、あちらの方がはるかに進んでいる」

 バーンとアミネイアは町をみてそういった。

 家に戻るとアルデアが訪ねてきた。

「おお! 帰ってきてたか!」

「アルデアも久しぶり、まあなかにはいって」

「ふむ、お邪魔する」

 
「この前の礼はまだだったな。 王の警護、お前のおかげて無事任務を果たせた。 父にかわり感謝する」

 そう頭を下げた。

「いいよ。 それでなにかわかった?」

「黒衣の化者《ダークレイス》、おそらくハストワーンに関わってる。 しかし明確な証拠もないし、仮にあったとしても戦争になる」   

「わかったとしても表にはだせないか...... ただなんのために暗殺をしようとしたのか」

(確か新しい宰相に取り入ってるって話だったな)

「戦争させるのが目的か......」

「もしそうなら、他の国がかかわってるのかもな。 ザイクロフト帝国かアルフレド王国かリズミラ法王国......」

 アルデアはなにかわかったら教えてくれといって帰っていった。

(黒衣の化者《ダークレイス》はどちらかの手先なのか...... それとも黒幕なのか。 もう少し調べないとわからないな)

「その前に、おれも強くならないと、このままじゃだめだな」

 そう思い準備することにした。

 学校帰り、郊外の森にきた。

「おれが使えるのは、【創造】《クリエイト》、精霊、魔力剣《オーラプレイド》、剣の精霊《ソードエレメント》か、精霊ちゃん強くなるにはどうしたらいい?」

『負の力を完全に制御するのはまだ無理でしょう。 【創造】《クリエイト》でより強い武具を作り出すなどはどうでしょう』

「ふむ...... ただ剣や鎧なんて常に身に付ける訳じゃないから、強なったとしても限定的だな。 ゼオンは風の魔法をブーストと併用した【魔法撃】《マジックインパクト》で、あの威力をだしたっていってた」

 ゼオンがイモムシの魔力障壁を切り裂いたことを思い出した。

『あなたは魔法は使えないので、それに代わる力が必要ですね。 【創造】《クリエイト》か精霊ですね』

「精霊って強くできるの?」

『魔力の量を加えることで可能ですが、あまり多く加えると存在を維持できずに自壊します』

「だよね。 何回かしてみたけど、無くなっちゃうんだよ」

『精霊の核となる魔力は蓄えられる量が決まっています。 その核の器をおおきくするしかありませんが、自我をもたない精霊はその核を大きく柔軟にできません』

「なるほど、それで、自我をもつ精霊や妖精は大きな魔力を使えるのか」

『そういうことです』

「さすがに勝手に自我は与えられないな」

『その場合、必ずしも信頼されず、敵意や恨みを買うこともあり得ます』

「だよね...... ならこれはできるの」

 おれは精霊ちゃんに相談してみる。

『......おそらく可能ですね。 今までのあなたならば不可能でしたが、今の魔力量ならば、かなり難しくはありますが......』

「じゃあ、試してみよう」

 おれはそれから何度も失敗しながら練習した。


 バーンとアミネイアも加えて学園生活を謳歌する。

(やっと学園生活ができた。 あっちじゃ受験すらできなかったからな)

 アルデアと他の友人たちもできて、数ヶ月何事もなく楽しい毎日だった。

(六種族の生活もかなり向上している。 いまのところ、黒衣の化者《ダークレイス》の動きもない。 だからこそ不気味だな)

 おれは順調すぎて、すこし不安になっていた。

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