大魔王に託されたぼくの異世界革命

曇天

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第五十七話

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「グリゼベリエ...... そんな大魔王がなんでここに」

「グリゼベリエさま、ご復活おめでとうございます」

 そうゾンクールがかしずいた。

「ゾンクールか...... ヴァナークの先導、大義であった」

「はっ......」

「しかし、アンデッドを操ったため魔力が足りぬ。 ゾンクールよ、ちと贄となってくれ」

「えっ...... ぐああああああっ」

 グリゼベリエはゾンクールをつかむ。 ゾンクールのその体は干からびていった。

「な、なぜ...... グリゼベリエさま......」 

「なぜ? この世界の草一本に至るも我ものよ。 そなたも我がものゆえ好きに使うのは道理であろう」

「......ああ、......あ......」

 ゾンクールは砂のようにチリになった。

「足りぬが、多少は魔力が戻ったな」

「ひどい......」

「グリゼベリエ、あんたはヴァナークーービルフォーテに倒されたのではなかったのか」

「ふん、我が人間ごときに倒されるわけがなかろう。 あのいまいましいザガルディス、やつは我を倒すのに躍起になっておった。 認めたくはないが、やつとの戦いでは勝算が薄い。 ゆえにやつが死ぬまでまつことにした。 死してこやつのなかでな」

「不死の魔法をまっていたのか」

「そうよ。 ザガルディスがサシエラに復活の魔法を伝えたのはしっていた。 それでこやつをゾンクールにうまくあやらせて復活の時をまったのだ。 おかげで老いた体より、魔力の強い新しい体も手に入った」

 そうほほえみヴァナークの姿で拳をにぎる。

「あなたはなんのために、そこまでする」

「お前は、そうかサフィーローテか...... ふふっ、レジェネイは倒されたのだったな」

「なぜそれを!」

「やつに魔法球や封印の蝕刀をあたえさせたのはゾンクールだぞ。 我の計画のうちだ。 お前たち五大魔王を全て消し去るためにな」

「五大魔王をたおすのもお前の計画だというのか!」

 ハリファがそういう。

「ルテイシアの娘か。 そうだ。 五大魔王は我に次ぐ力をもつ、手を組まれては邪魔だからな」

「一体、お前はなにがしたいのだ」

「ふむ、アラクネか。 唯一感情をもった個体か......」

「......私をしっているのか」

「しっているもなにも。 我がつくったものだ。 能力不明なミューティアスをあの場所に押し込めるためにあの森にはなった。 アラクネは近くのものの魔力をくらい勝手につよくなるからな」

「そんな......」

「ただ計画はかわった。 本来ルテイシアはリューガイアに滅ぼされるはずだった。 そして兵士をへらしたリューガイアとミューティアス、ザルガルドはアラクネとヒュプリムのジャイアント兵士、ヴァナークで、そして残りの国は戦争をおこし増やしたアンデッド軍で滅ぼすつもりだったのだ」

「それがシンゴの存在で狂ったのね」

「ああ、フィアナ王女。 ザガルディスがシンゴを呼び寄せ力を与えたのは誤算だった。 計画は大幅な変更を余儀なくされた。 いまだルテイシア、サフィーローテは存在し、多くの人間や亜人、魔人の国もある。 だが最大の障害である五大魔王はもう驚異ではない。 やりようはある」

「それなら、このまま倒す!」

「くくくっ、我を倒すだと、我にはこの魔法球がある。 かつての人魔大戦よりながい年月ためた魔力、アンデッドの軍を操るのをとめ、この魔力を使えばどうなるとおもう」

 球体から霧のようにグルゼベリエになにかが吸い込まれていく。

「信じられない魔力がグルゼベリエに集まっています!」

 そうギンチヨがさけぶ。

「シンゴよ。 この世界が終わったら、そなたの世界も我が物とするぞ。 誇りに思うがよい」

 そうグリゼベリエは笑みを浮かべた。

「なっ......」

「ヴァナークにきいたであろう。 これは次元の異なる場所においたもの。 すなわち世界を飛び越えるすべがあるということだ」

(くっ! ザガルディスが危惧していた。 こいつ世界を飛び越えて支配をするつもりか)

「くくくっ、そう、その顔だ。 絶望に歪むその顔を我は望むのだ。 この世界は全て我のもの! それこそ頂点となるものの至福!」

「そんなもののために大勢を巻き込むのか!」

「そんなもの...... そうだ。 我欲こそ生きるものの望み。 ただ矮小なそなたらと我はちがう。 我は望みを全て叶えられる力と意志がある。 そなたらは望んでも手に入らぬゆえに諦めているだけ、我と同じく力があればそなたらも同じことをするであろう?」

「そんなことはしない!」

「いいや、我がおらずとも五大魔王が、他の魔人が、人間が亜人がそうするであろう。 そうすべきなのだ。 それが人の本質...... みながそう抑えもなく自由にいきるべき、それが我が望み......」

「させるか! ハリファ、アラクモ、ギンチヨやるぞ!」

 ぼくたちはこの世界を守るためグリゼベリエへとむかった。
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