オルタナティブバース

曇天

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第五十五話

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 とりあえずアイとヤマトとで話をする。

「廃鬼人《ディスコードオーガ》が天空船を手にいれたのね......」 

 アイが不安げにそういう。

「追いかけるしかないな......」

「なあ、このままやつらに仮世の王を倒させた方がいいんじゃないか」

 ヤマトが提案してきた。

「ダメだ。 あいつらの狙いはこの世界の永続、仮世の王を倒したからすぐクリアになるとは限らない。 先に倒してなにかをするつもりらしい」

「倒せば、運営に連絡がいくんじゃないのか」

「最初はそう思ってた。 でもシナリオを進めても、連絡が取れない。 アイのいうとおりこのゲーム世界の時間が現実と違うなら、仮世の王を倒しても運営と連絡がつかないかもしれない。 それをあいつらもしってるはず、なのに天樹を目指している」

「なにかしってるってことか?」

 テラリスがいうと、リンキュルがうなづく。

「多分、遺跡か文献か、どこかで仮世の王の情報を手にいれたんだろう」

「ならやはりいくしかないな」

 みんなはうなづき、おれたちは天樹へと向かう。


「ここが城で行ける最高地点か」
  
 天樹の根のそこは地上が見えないくらいの高度だった。 おれ、アイ、ヤマト、テラリス、リンキュル、エレナ、ラクセス団長で先へと進む。

「息はできるし、寒くもない......」

「城は大丈夫かな。 プレイヤーに襲われないか」

「ヤマト、その心配はない。 団員たちとクワイアに任せている。 それにあれをみろ」

 ラクセス団長が指差す方をみると、遠く別の根に小さな飛行船がある。 奥の根の方にも一隻みえた。

「二組、【聖騎士団】《ホーリーナイツ》と廃鬼人《ディスコードオーガ》か」 

「先にいかれたな。 だが船の大きさから数は少ない。 聖騎士団側のプレイヤーと挟めば何とか倒せるか」

 テラリスがそういった。

「リンキュル、仮世の王にあえばいいのか」

「......ああ、そうだ。 仮世の王は願いを阻止するという話があるが、あえば願いを叶えられるはず」

「願いを叶えるとはどういうこと?」  

「......わからない。 ただ、プレイヤーがその場所に行けばわかるはずだ」

 アイの問いかけにそう沈んだようにリンキュルは答えた。

(リンキュルは何か知っているのか...... だが今、きいても無理そうだな)

 おれたちは根をすすむ。
 
 
「くっ! かなり強いな!」

 根には協力なモンスターが無数にいた。

「ええ、レベル60オーバー、私たちが何とか50ってところだからね」

「それでも、このメンバーなら何とかすすめるな」

 ヤマトがアイにそういった。

「ああ、装備もかなり強いからだ」

「少し上がったら休憩しよう」

 テラリスとラクセス団長がいい、しばらくすすみ、広い場所にテントを張る。

「ここから更にプレイヤーとも戦うのか」

 テラリスは不安げにいう。

「まあ、向こうの数はせいぜい5人程度だ。 選りすぐりの精鋭といったところだろう」

 ヤマトがいうと、リンキュルはうなづく。

「やはり、城で待機しているものたち、戦えるもの全員も参加した方がよくないか。 いまなら呼びにかえれる。 数でなら圧倒できる」

「だめよ。 そんなことをしてら死ぬ人が続出するわ。 ここのモンスターでさえ何人も死ぬことになる」

 アイが反対した。

「どうせ...... いや、そうだな」

 リンキュルが小さくつぶやく。

「まあ、おれたちと聖騎士団《ホーリーナイツ》とでなら、廃鬼人《ディスコードオーガ》は倒せる...... おれは外をみてくるよ」

(戦力なら十分なはず...... でも)

 空がかげるのをみながら、おれは不安に襲われていた。

「どうしたのサナ......」

 アイが近づいてきた。

「いや、なんで?」

「不安そうな顔をしているから......」

「......ああ、まあ正直不安はあるよ」

 おれは正直に話した。 隠してもばれると思ったからだ。

「まさか、ゲームでここまで大変なことになるなんて。 所詮暇潰しだったのに」

「......そうだね。 サナはそれでこのゲームを......」

「まあ、そうだね。 特にやることもなかった。 本当に平々凡々の生活。 ある意味今が一番充実してるとさえおもうよ」

「そう。 なら帰りたくなくなってきたんじゃないの」

「どうだろ? アイは」

「私も、少し帰りたくないかも......」

 意外な告白におれは驚いた。

「どうして?」

「私ね...... 実は家で療養してるの」

「療養...... その話聞いてもいいの?」

「ええ...... きいてほしい」

 アイはゆっくり語りだした。

「私、中学の学校帰り交通事故に遭ってね。 体が不自由になったんだ。 それでこのゲームを始めたの。 どうしても昔みたいに動きたくて......」

「それでこのゲームに......」

「それにMT《マインドトランスファー》技術で少しよくならないかなって...... 現実に帰ったらまた同じ動かない景色にもどるけどね」
 
 そう悲しそうに笑った。

(そうか、それでMT《マインドトランスファー》技術に詳しかったのか)

「それじゃ...... 帰るのを阻止したい?」
 
「............」

 アイに問いかけるとしばらく黙ってから口を開いた。

「......確かにここは自由に動き回れる...... ただ誰かの自由を奪ってまで自分が自由になろうとは思わないよ。 不自由のつらさは私が一番よくしってるからね」

 そう少し沈黙したあと、微笑んで答えた。

「......そうか」

「うん」

 くれゆく日をみながらおれたちはそう話した。
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